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平原の淑女 7月30日〜365日の香水

落馬
10年前、その年は午年だったので干支にちなんだ香水としてレディステットソン(Lady Stetson)を選んだ。
四輪馬車をイメージしたエルメスのカレーシュも候補だったけれど、馬車での移動よりも荒馬を乗りこなす意気込みがこの時の私には必要だったから。
ステットソンはカウボーイハットで有名なブランドだった。
さらにその年の秋ごろに、SNSで「荒馬を乗りこなすカウボーイのようにと年初に言ったけれど、落馬しました」という発信をした。

アホとは戦うな
落馬、その時に出会った教訓は「頭に来てもアホとは戦うな」だった。
事業の成長や自身の成長よりも、人を支配すること、名誉欲を満たすことが生きる目的、存在理由のようになっている「アホ」と同じ土俵にあがらないこと。
それを教えてくれた人に感謝している。

アホと戦うのはエレガントじゃない
今、私は香りのサロン活動を通して、「ときめく会話」「穏やかな風」「ちいさなアハ体験(目から鱗の刺激)」「エレガントな尊重」という場づくりを心がけている。
そして、人生を通してそういうあり方を目指している。
あの時学んだ「アホ」と「アホと戦おうとする自分」は上記の4つから著しく逸脱している。とくにエレガントさに大いに欠けると思う。
「アホ」に遭遇しても、今は自分の在り方を言語化できているから、揺らいでも崩れることはないと思っている。

愛馬ゆかず~馬のミラーリング
馬で思い出すもう一つは、京劇「覇王別妃」。
敗北を悟った武将項羽が妃である虞美人に別れを告げる場面をで、虞妃も自分だけで逃げようとはしないばかりか、項羽の愛馬も立ち去ろうとしない、という一節があった。
馬にはミラーリングといって他者の感情や気持ちを投影して反応する特性があるそうだ。
この時、最後まで一緒に遂げたいという妃に共鳴したのか、主の自分(馬)への労りに共鳴したのか、馬は一歩も動こうとせず、その両者の姿に項羽は涙したという。
速いだけでなく、ミラーリングという特性によって危険な戦場での人々のパートナーに馬がなりえたのかもしれない。

そう思えば、あの時の落馬も執拗なアホから私を切り離すために馬があえて私を振り落としてくれたのかもしれない。
実際に馬に乗っていたわけではないけれど。

悠々と泰然と~平原の大将
さて、以前紹介したステットソンのカウボーイハットには「平原の大将」という異名がついている。
競ったり他を出し抜いたりすることなく、自分のペースで悠々と平原を行く大将。もちろん、馬もその気持ちに共鳴してか優雅な歩み。その「LADY」番だから、これは平原を行く淑女ということになるだろうか。
10年を経て、レディステットソンのテーマはそんな風に変容できた。

LadyStetson/Coty/1996
評価の高い香水の一つで、男性向けの「Stetson」同様に知る人ぞ知る名品にして、リーズナブル。
アルデハイドタイプの傑作の部類に入る。
ローズやイランイランなどのフローラルとグリーン感がアルデハイドにより心地よく拡散し、途中からピーチが顔を出しラストはウッディやスパイスでドライダウンしていく。
リニューアルしていないことを願う。

香り、思い、呼吸
7月30日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。





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