あなたは誰? あれは液晶。 あなたは誰? あれはパソコン。 あなたは誰? 沢山の人が画面に写っていて パソコンに向かって話してる。 あなたは誰? あれは先生。少し聞こえづらい声。 あなたは誰? どこから来たの? 画面に写る君たちは誰? ねぇ教えてよ。 あなたは一体、何者なの? 画面だけじゃ何もわからないよ。 あなたと直接話がしたいの。 あなたは誰、あなたは誰、あなたは誰、、。
ある日階段ですれ違った。 彼女は背中で思い切り中指を立てていた。 僕はその態度に驚かなかった。 もし向こうが正面を向いて僕に近づいてきて握手を求めてきたら、僕はどうしていただろう。 この世界は一人で生きるには広過ぎるし、大多数の中で生きるには窮屈過ぎる。 少し手が汗ばんだのを感じた。 空の雲が青いうちに僕は心の家に帰りたい。 やがて暗くなって眩い夕日が身体中に突き刺さる前に。
墓のように眠っていた。 自由に飛びたいのに君は僕を掴んで離さない。 机の上の5円玉の穴を覗いても この世界は全く変わらなかった。 ・ ・ ・ 君の不幸を願って添えた彼岸花の赤い花びらが 嘲笑うかなように崖の下に舞い降りた。 ・ ・ 僕の中の悪魔が黒板に爪を立てて 鼓膜を引き裂こうとする。 何も聞こえない。何も見えない。 この先の人生、行き先が ずっと遠くまで分からない。 ・ ・ 外界に繋がりを持とうとする良心の光が 少し差し込んで僕の腕を引っ張る。 でも、1人でいたいという突
過去は巡り巡る。 今日大学で君の顔を見かけた。 久しぶりに見た君の顔は何だか僕の隣にいた時より少し晴れやかな気がした。 ・ 「久しぶり、元気?」 ・ たったそれだけ。 それだけでも声をかけたい。 でもできない。 逡巡の邂逅と僅かに感じた背後の君からの視線が 僕の足を踏み留まらせていた。 ・ ・ 届きそうで届かない、遠い距離。 そんな場所に僕は腰を下ろした。 いつか、声をかけるために。 ・ ・ でもダメだった。 僕のサンドイッチの昼食は彼女にとっては長すぎたようだ。 何もなかっ
「毎回見る度に系統変わってるね、大丈夫?」 ・ ・ 彼女の大丈夫?は何に気を遣っていたんだろう。というか大丈夫って何を心配しているのだろう。 でもその「大丈夫?」という言葉は僕の全てを見透かしているようにも見えた。 慣れない手つきで運転する僕を彼女は不安げに見つめていた。 ・ 「え?大丈夫ですよ」 ・ 本当は大丈夫じゃ無かった。 隙あらば事故しかねない精神で僕は運転していた。 女の大丈夫は大丈夫じゃないとよく聞くが 男だって実はそうなんだ。 皆自分の本音を隠して生きている。
よくヤンチャな大学生を避けて 嫌う人たちがいる。 あの人たちのいる世界は危ないと言ったり、 根も歯もない噂を立てたり。 見た事のない人たちの世界に人々は興味を覚えるが、実際にそこに飛び込む勇気はない。 そんな世界を僕も知らないけれど、 別に知らなくていいんだと思う。 そこにいたら疲れて 自分を見失いそうな気がするから。 実際そんな人達を僕は何人も知っている。 だからそんな世界に 飛び込む勇気も無くていいし、 飛び込む必要もない。 別に今から飛び込もうとする人たちを 否定するつ
彼女のインスタのプロフィールが変わっていた。 「重い前髪」という紹介が消えていた。 きっと自分自身の見た目を気にしなくなったのだろう。 さほど重いとも思っていなかったが。 ・ ・ ・ 忙しい夏を経験し、 その失敗を周囲から咎められ、 途方に暮れていた自分を彼女は何も知らずに優しさで包み込んでくれたのに。 ・ それでさえも周囲の目は 僕が彼女と恋愛をする事を許さなかった。 すれ違う友人は僕たちを容赦無く冷やかした。 ・ ・ 「友達多いね」 ・ ・ 大学に友達が少ない彼女は少し不
「なんだ、元カノ10人くらいいるかと思った笑」 ・ ・ そんなわけないだろ。 でもそう思ってくれて正直少し嬉しかった。 しかし、この場合の「10人いるかと思った」は いた方がよかったのか、いない方がよかったのか。 結果的にどちらが良かったのだろう。 感情が右往左往しながら僕はレモンサワーを口に運ぶ。 ・ よく「相手のペースに合わせて飲め」というが、この日だけは飲まないとやってられなかった。 ・ ・ 「じゃあそういう君は何人いるのさ」 ・ ・ 少しだけ探偵になった気分で 鋭い視
外の晴れやかな天気とは裏腹に 季節外れの曇り空が私の心に広がっていた。 簡単にほどけてしまう靴紐でさえも、 私の心に雷を落とした。 避雷針が一つもない この街に誰が訪れてくれるだろうか。 生まれつき持っている細く鋭い目は 私の空模様を投写することを容易にした。 ・ ・ 「目つき悪くない??」 ・ ・ うるさい。 だったらこの霧を君が晴らしてくれ。 ・ ・ 「この前扇風機盗まれちゃってさ〜」 ・ ・ とりあえずの使い回しの話題で 何とか会話に明るみを持たせようとした。 ・ ・
「マッチはいかがですか?」 ・ ・ 寒い冬に一人で僕は惑っていた。 その時夕日に照らされて 偶数の影を伸ばす後ろ姿の君達を見たんだ。 嗚呼。君は行ってしまうんだね。 ・ ・ ・ 昔、遠巻きに君を見ていた。 最初は頑張って名前を呼んだ。 日本語を絞り出すのに こんなに苦労した事はなかった。 文法的に自身の知識が欠落していた覚えはなかった。 ・ ・ やがて僕たちは2人で 肩で風を切って歩くようになった。 今になって考えてみると 勝手に僕がラティアスラティオスの関係に 祭り上げてい
ある日の電車の中で。 ぼくは君とカフェに5時間もいた頃を 思い出していた。 「好きな音楽教えて!」 そう言いながらきみは イヤホンの片方を僕の耳につけた。 洋楽好きな君と一緒に洋楽を聴いていたよ。 僕はきみにJoyce Wriceの Falling In Loveを勧めたよ。 少し顔を赤くしながら片耳で ギリギリ聞こえる声で君はこう言ったんだ。 「いい曲だね、、、」 テーブルを挟むと僕らの距離は 少し遠過ぎたみたいだ。 いつしか僕たちは隣同士で座って話していたよ。
僕はスマホを左手で使う。 君がいないこの街でも。 僕はずっとこの左サイドを守ってきた。 この街にはこの左サイドを 侵食しようとする人たちが沢山いた。 ・ 「左なの、、?」 ・ そう直接疑問をぶつけてくる人もいた。 うるせえ。 あんたなんかにここを譲ってたまるか。 そう思うがあまり、 思わず相手を睨みつけた時もあった。 ・ ・ 大切な記憶に爪を立てて引き裂いて割って入ろうとする相手に魅力など一つも感じられず、 僕は高校の時の意固地なまま、 譲るべき場所を譲らないでいる。 ・ ・
時々生きる事が嫌になるよ。 何で苦しい思いをしてまで 生きていなきゃいけないの。 どうして、どうして、どうして、、、。 ・ ・ ずるいよ。君は違う電車の切符を買って 何にもなかったみたいにしてさ。 君の最寄りはいつだって僕だったのに、 君は知らない顔をして次の電車を待ってる。 僕は違うホームから遠目に 君の様子を見るしかないんだよ。 ・ でもそんな僕だって 君とは違う電車を違うホームで待ってる。 そして、突風がホームに舞い降りた時、 君とのかけがえのない過去はなくなり、 また
時々窓を開けるために 扉を閉めなければいけない時がある。 ・ ・ 新しい世界を見る時は、全てを遮断し、 前だけを見ていなければいけない時がある。 ・ 周囲は雑音を騒ぎ立てるだけで 雑音は自分の人生にとって 何の意味ももたらさない。 ・ 光だけを求めて生きていきたいのに 闇へ引きずり込もうとするのは全て他人。 ・ じゃあ他人なんて要らないじゃないか。 だけど、窓を開ける為には 手助けが必要な時もある。 ・ だから他人が存在してるわけではないけれど、 いざという時に頼りたい、 そ
踊り子たちよ。 君たちの手招きには応じないよ。 だって君たちは僕を闇の世界へ引き込むから。 ・ ・ 踊り子たちよ。 君たちの手招きには応じないよ。 君たちのせいで食事に喉が通らないとか 好きな音楽も聴けないなんてばかばかしいだろ? ・ ・ 嗚呼踊り子たちよ。 君たちの手招きには応じないよ。 周りの人間たちは 君たちの手招きに応じるように仕向けるけど、 それって自意識過剰かもしれないだろ? それって全員無視しても問題ないだろ? それって全部俺が決めて良いことだろ? ・ ・ じゃ
甘さ控えめのコーヒーが少し甘い。 つまらなそうな顔を相変わらず 鏡の中でしていた。 ・ 右手をポケットに突っ込み、 飲んでいるカップの左手越しに その表情を確認する。 第二関節が邪魔で見えにくい。 意味が無いのに握力を少し強める。 案の定意味がない。 ・ ひとしきり飲み終わると、 足元のエコバッグと財布を持って 外へ出かける。 おっと、忘れてた、鍵鍵鍵、、、。 あった。 さっきまで突っ込んでた右ポケットに。 最近このパターンが多い。 ・ 階段を降りてコンクリートを歩く。 クロ