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「まちカドまぞく」の面白さを引き出す、やる気のない魔法少女の存在感

放送中のテレビアニメ「まちカドまぞく」がめちゃくちゃ面白い。

ごく平凡な女子高生、吉田優子が、ある朝突然、頭にツノが、お尻からしっぽが生え、魔族の力が覚醒し、ご先祖様から宿敵の魔法少女を倒しその生き血を捧げるよう命じられ、悪戦苦闘するという、かなりぶっ飛んだ日常系ギャグアニメである。

文字だけで説明を読むとシリアスめいたものを思い起こしがちだが、それとは全く正反対の、「まんがタイムきらら」掲載作品ならではのゆるゆるな内容なので、どうか安心して欲しい。

魔族属性が覚醒した優子は、シャドウミストレス優子というちょっと痛々しい真名を名乗り、かつて先祖がかけられ代々受け継がれてきた様々な呪いを解くため、魔法少女探しを開始する。呪いの中には、一家3人で月4万円縛りの生活を強いられるという生々しいものも含まれている。

今の代となっては言われもないにもほどがある呪縛から一刻も早く抜け出すべく活動を開始したシャドウミストレス優子、シャミ子だったが、もともとチビでどんくさいところがあり、うっかりダンプカーに轢かれそうになる。そこへ突然、一人の背が高い少女が登場。文字通り目にも留まらぬ早業でダンプカーを片手で止め、シャミ子は危うく難を逃れる。だが、その少女の姿はこともあろうに、ピンク色のアニメキャラのような、どこをどう見てもそうとしか見えない魔法少女だった。この出会いから、シャミ子と魔法少女・桃(もも)、二人の赤い糸で結ばれた、否、宿命の日々的な何かが始まった、という、そんな感じのストーリーだ。

何をやっても、桃に勝てる気がしないシャミ子の健気な奮闘ぶりが、毎回視聴者の爆笑、否、感動、否、哀れみを誘い、終わるたびに次が気になって仕方がない作品となっている。これまでにも傑作が目白押しだったきらら系アニメにあっても、設定はかなり凝っており、ギャグも節々でさえ渡り、新鮮さを覚えずにいられない、まれに見る傑作と言っていいだろう。

その魅力をうまく引き出しているのが、やたら怪力でやる気なさげな魔法少女、桃の存在だ。

魔法少女が出てくるアニメと言えば、昭和の頃は男の子向けの変身ヒーローものと並ぶ、女の子たちの憧れの的だった。80年代になると少し状況が変わり、魔法少女アニメに飛びついたのは、思春期真っ只中の少年たちだった。その流れが巡り巡って、いわゆる“萌え”などの言葉に代表される美少女アニメへとシフトしていった。

いずれにしても、ひと昔前のアニメの中の魔法少女は、輝くヒロインそのものに違いなかった。

ところが、2000年代も10年を経過したあたりから、魔法少女を巡る状況に暗雲が垂れこめてきた。代表格は言うまでもなく「魔法少女まどかマギカ」だ。この作品を期に、魔法少女はちょっと怖い、もっと言えばキワモノ扱いで描かれる傾向が強くなった。

これは、大げさに言えば、世間がフィクションにリアリティを追求しすぎるあまりに、現実離れしたキャピキャピの魔法少女たちが魔女裁判的なものに引っかかってしまったためと取れなくもない。

そんな魔法少女不遇の時代に、その描写を逆手に取って鬱キャラとして描き、1周回ってギャグ要員に添加させているのが「まちカドまぞく」の桃というキャラだ。

こういう、新鮮なキャラ設定は、凝り固まりがちな定番設定の幅を広げる効果を与える。最新話ではさらになにか意味ありげなオレンジ色の魔法少女が登場。最終回までわずかだが、続編も大いに期待したい一本だ。


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