サウナ市長はアカンけど市議会議長はもっと酷かった
8月22日に告示される大阪府池田市の市長選挙に、たきざわ智子市議(40)が立候補する意思を固め、10日付で議員辞職したことは既に書いた通りです。既に辞職したサウナ市長こと前市長と市議会がのっぴきならない関係に陥り、反前市長でまとまっているように見える市議会も元市長の倉田薫氏の影響力を巡って元市長派と反元市長派に真っ二つに分かれるなど混乱が続く中で、「混乱した市政を落ち着かせたい。池田を魅力あるまちにしたい。」との一心で立ち上がった、たきざわ智子前市議には心から敬意を表する次第です。
1.市議会議長による姑息な所業の第一
市長選挙については、正々堂々と戦うのみですが、一つ、おかしな事態が発生していることに気付きました。市役所内に周知された市議会議長名での文書に、「令和3年8月11日付をもって池田市議会議員 瀧澤智子氏 より議員辞職願が提出され、」とあるのです。たきざわ氏が辞職届を提出したのは10日のはずですが、なぜか11日の提出となっているのです。
たきざわ氏に確認すると、翌11日に市議会議長に辞職のご挨拶にうかがった際、議長から辞職届を突き返され、届けの日付を直さないと受理しないとプレッシャーをかけられたそうです。たきざわ氏は、自らの辞職の後の空席を補う補欠選挙を実施するための選管への通知の期限が11日(=市長選挙の告示日22日の前日21日の10日前)であることを認識していたため、当日中に受理されなければならないと考え、日付の修正に応じたそうです。
しかし、たきざわ氏が10日付で議員辞職の意思表示をしたこと、手交された議会事務局長も当該届出を受理する包括的権限を有すること、従って、10日付での議員辞職届の提出は有効と解されることは、最高裁の判例でも明確になっています。総務省にも確認しましたが、当該法令解釈に間違いはありません。
すると、11日に行われたことは何だったのか。私見ですが、10日付で提出された議員辞職届という公文書を改ざんするよう市議会議長が届出の提出者に教唆したとすれば、それは当に、公文書偽造罪の教唆犯あるいは間接正犯に該当するのではないか、というのが私の見立てです。
そもそも市議会議長に正当な理由なく議員辞職を拒否する権限はありません。最高裁の判例でも、「地方自治法126条が議員が辞職するには議会又は議長の許可を要するものとしたのは、議員が自己の恣意に基いて濫りに辞職することを抑止するため」であり、「如何なる場合においても議会又は議長が議員の辞職を阻止し得る趣旨の規定とは解することができない」、そして「如何なる公の機関といえどもその裁量の範囲にはその権限を与えた法律の精神に基く条理上の限界があり、著しく裁量の範囲を逸脱してその権限を不當に行使することは許されないのであつてそういう行為はもはや有効な行為と見ることはできない」と判示している通りです。
2.市議会議長による姑息な所業の第二
もう一つ、おかしな表現が見つかりました。先ほど紹介した市役所内に周知された市議会議長名での文書に、「令和3年8月11日の終了をもっての辞職を許可しました」とありますが、こんな不思議な議員辞職許可文を私は見たことがありません。
もちろん、民法141条に「(日、週、月又は年によって期間を定めたときは、)期間は、その末日の終了をもって満了する」とあるように、雇用等の契約について、当日の終了をもって有効とすることは何ら不思議なことではありませんが、議会事務局が議長名で「11日の終了をもっての辞職」を許可したと明示した理由は、許可を先延ばしする理由は見当たらないが、11日中に許可をすれば、即日、選挙管理委員会に通知することとなる、つまり、11日中に選管に通知されれば、22日告示の市長選挙と同じ日程で、二週間以上前に出馬会見を開いたにもかかわらず未だに市議会議員を辞職していない渡辺ちよし氏(67)の分も含めた二議席について、市議会議員補欠選挙が行われることとなるから、なのです。
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以上をお読みいただいた方にはご理解いただけたと思いますが、大阪府池田市の市議会議長と議会事務局とが共謀し10日付で提出された議員辞職届の日付を11日付の提出とするよう公文書の改ざんを教唆等した意図は、当に、辞職の許可と選管への通知を遅らせ、市議会議員補欠選挙の同日実施を阻止するという、民主主義にもとる企図があったと指摘せざるを得ないのです。
公職選挙法111条1項3号には、議長が選管に通知するのは「その欠員を生じた日から五日以内」と規定されているので、何らかの理由があれば議長の裁量で補欠選挙を阻止することは可能だったと思うのですが、議長は自らに説明責任が生じるのを嫌ったのでしょう、そもそも辞職届が11日に提出されたと偽装し(姑息な所業の第一)、即日処理したけれども11日中に選管に通知できなかった、という体裁を取り繕った上で(姑息な所業の第二)、12日朝に選管に通知したのです。
市議会議長と議会事務局による一連の姑息な所業により明らかになったのは、10日付けで提出された議員辞職届を粛々と処理すれば、11日中には容易に選管に通知でき、市長選挙に合わせて市議会議員二議席分の補欠選挙を実施できたということ、そうした手続きを遅らせる合理的な理由はなかったという事実、なのです。
もちろん、コロナ禍の下ですから、選挙をしないで済むなら、それに越したことはありませんが、民主主義を支える選挙は「不要不急」ではありません。むしろ、市長選挙への出馬を決めたからには、それ以降の議員報酬を返上するとともに、自らが抜けた後を埋めるための補欠選挙を市長選挙とダブルで実施するのが筋であると、たきざわ氏は考え、出馬を決めた10日に直ちに辞職届を提出したのです。至極まっとうな判断ではないでしょうか。
ところが市議会議長は、11日の9時30分から辞職届という公文書の改ざん(姑息な所業の第一)を実行した上で、その直後の11時に各会派代表者会議(維新会派は不参加)を招集し、対処方針を相談したというのです。競争相手となる新人議員を議会に招き入れたくない現職市議たち、市長選挙を有利に戦いたい自民党や青風会、そして共産党の意見を聞いた上で、補欠選挙を実施しない方針を決断し、11日の終了を待って議員辞職の許可(姑息な所業の第二)を行ったのです。
大阪府池田市の市議会において12日までに起こった一連の事案について、私自身、13日に議会事務局長と面会しヒアリングする等事実関係の把握に努め、本日14日に、こうして私の認識を急ぎ書き下したのは、本件が、民主主義の基盤である選挙に関わる悪質な事件であると考えるからです。刑事告発の可否については弁護士(注)を交えて慎重に判断しますが、ご関心の向き(特に池田市民の皆さま)には、本稿を紹介いただければ幸いです。
注)弁護士からは、公文書偽造罪というより毀棄罪だろうし、そもそも10日付で議員辞職の届出が成立しているのは明らかだから、虚偽公文書作成罪に当たるのではないか、等の指摘をいただいています。