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自分に合った専門家を見つけるポイント

この記事は、2021年12月14日に公式サイトに掲載されたコラムを再掲したものです。

1.「弁護士の選び方」について

弁護士の選び方を解説しているウェブサイトは非常に多いです。あるいは、主に企業法務の世界ですが、弁護士についてランキングをしたり、投票などをしたりすることもあります。この弁護士は、企業の担当者が選ぶおすすめの人である、などと紹介されたりします。

弁護士の選び方を解説しているウェブサイトは、ポジショントーク(自分に誘導する目的で作成)であったり、あるいはランキングについても企画広告であったりしますので、もちろん、これらを文字通り受け取ることはできません。

もっとも、弁護士の選び方を弁護士自身が解説している場合、ただのポジショントークという以上に、その弁護士自身が、理想とする弁護士像、ポリシーを明らかにしているということもいえます。ですから、それに共感出来るかどうかというのは弁護士選びの重要なポイントになるでしょう。

さて、私は、電話等を利用して、遠方からのご相談を頂戴することも多いです。

最近は、裁判も打ち合わせもインターネットを利用することが多くなり、遠方というだけで引き受けることができないということはめっきり減りました。ですが、それでも、家事調停(離婚や相続などについて、相手方と家庭裁判所で調停委員を介して交渉等すること)など、やはり遠方ということで受けられない事件もあります。

そのようなケースでは、相談者の地元で弁護士を探すことをおすすめするのですが、「よい弁護士の選び方を教えて欲しい」と尋ねられることがたびたびあります。

今回は、そういう場合に心がけていること、弁護士をはじめとした士業を選ぶということについて、私の考えを話したいと思います。

2.士業の仕事の特殊性

工業製品であれば、製造に問題が無ければ、その品質や性能は一定です。誰が買っても、同じ物が手元に届くというのが原則です。したがって、好みの問題はあっても、客観的な品質、性能についての評価は、みんなが一致します。

一方で、サービス、特に士業が提供するサービスは事情が異なります。

たとえば、これは、弁護士が行う破産申立てに顕著なのですが、「依頼してあとは放置しておけば全部うまくいく」ということにはいきません。依頼者にも、資料を集めてもらったり、事情を説明してもらったりする必要があります。

つまり、士業のサービスの品質というものは、その士業の能力だけではなくて、依頼者の協力次第で変わってくるということです。

いわば、士業の仕事は、依頼者との二人三脚で完成する、その品質は、両者の協力で決まる、ということです。これが、士業の仕事の特殊性です。

3.士業への依頼には「相性」が重要

士業に仕事を依頼するということは、それは非日常的なことです。個人の依頼者にとって、滅多にあることではありません。

また、依頼する中においては、非常にプライベートな事情についても話さないといけないでしょうし、法的な問題を抱えて大きな不安を感じている、神経質になっている、ということもしばしばあります。

更に、裁判等になれば、依頼した士業との付き合いは1年を超えることも珍しくありません。

1年以上、二人三脚で困難な問題に立ち向かう以上、士業の実力も大事ですが、協力関係、信頼関係が築ける相性が重要になってきます。

4. 実力も大事だけれども…

士業は専門家です。専門家にとって一番大事なのは、専門的知識、技術であって、すなわち実力であることはもちろんです。

もっとも、士業、特に法律問題については、2や3の様な事情も多々あることは事実です。

また、士業の実力は、利用者からすると、最初の相談時間程度では、なかなか理解しにくいことも少なくありません。

そして、依頼者と士業との関係で、一番の悲劇は、双方が健全な協力関係を築けないこと、トラブルになることです。

信頼関係の乏しい、協力の難しいベテラン士業に依頼するよりは、たとえ経験の乏しい士業であっても、健全な協力関係を築いていた方が、良い結果、スムーズな進行が期待できると思います。

ですから、士業をお探しの方は、是非、自分に合った専門家を、つまりは相性を大事にして選ぶことをおすすめします。

もっとも、一つ注意が必要なことがあります。士業の仕事、特に紛争を扱う弁護士や認定司法書士の場合、厳しい見通しを伝え、依頼者にとっては不都合な事実の確認もしなければなりません。

この士業は自分に対して、自分にとって苦しいこと、嫌なことを述べるから相性が良くない、その逆は相性が良い、ということで考えてしまうと、それはそれで依頼後にトラブルになる可能性があります。

私も、弁護士として、セカンドオピニオン(既に他の弁護士に依頼しているが、事件処理等に疑問があるので意見が欲しいという場合の意見)を求められることがあります。その中には、相性等の問題でトラブルになっているケースも多いのですが、それだけではなく、次の様なケースもあります。

すなわち、最初の見通しが甘すぎる、初回の相談時に相談者に喜んでもらうことばかりに注力していて、重要な、それでいて相談者に不利であり、あまり話したくない事実を聞き落としている、等のケースです。

このあたりは難しいところですが、相性に注視しながらも、「あまりに話がうますぎないか」というところは、注意した方がよいでしょう。

そういう場合は、複数の士業に相談をすることが有効です。

5. 利用者のための士業広告チェックポイント

最後に、利用者が士業広告を見る場合のコツ、チェックポイントを解説したいと思います。

あくまでも広告であるということ、頼めば良い解決ができるということを中心に記載していること、(それら良い解決に)自分のケースに当てはまらない場合もあること、これらについては、前提として意識しておきましょう。

その上で、その士業の自己紹介や、ポリシー、理念などあれば、是非、それをチェックしましょう。共感を覚えることが出来るか、それとも、何か違和感を感じるのか、これはまさに相性、感性の問題ですので、率直な気持ちで見てみましょう。

また、士業の実力はわかりにくい、ということを申し上げましたが、それでも、実績等から想定することはできます。弁護士のプロフィールもチェックしておきましょう。取扱い案件の実績はもちろん、特に専門家向けの著作や論文は、同業者からの評価でもありますので、有益な情報です。

このあたり、広告サイトですと、士業のプロフィールが詳しく掲載されていない場合もあるので、事務所のウェブサイトを見てみましょう(逆に、広告会社としては、依頼者は、士業サービスを求めてウェブサイトにたどり着きますが、最後の依頼の決断は、士業個人を見て決めます。ですから、士業個人のプロフィールへのアクセスをしやすくしておくべきだと思います。)。

案件について、士業はそのプロですが、主役は誰かというと、あくまで依頼者です。良い士業とは、自分に「合った」士業です。

是非、士業の利用を検討している皆様は、そういう自分に合った士業を見つけられるよう、広告をよく読んでくださいね。

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