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ショウメイ

noteではデザインとビールについて書こうと思っていたのだが、関係のないことばかり書いている気がする。


今の職場での僕の肩書きは「ブランディングディレクター/ブルワー」となっている。ディレクターといっても部下がいるわけではないので全部やる。チラシの文言の文字詰めまでやる。余談だが昨年のブルワーズカップで出会ったボランティアスタッフの女の子が〜その子はお父さんがフォントデザイナーで本人も美大でグラフィックデザインを学んだそうだが〜ウチのチラシをブルワーの僕が自分で作っていると話すと「文字詰めが只者じゃないと思っていました!」と感激してくれたのだが、長い間デザインの仕事をしてきて「字詰め」を単独で褒められたのは初めてだった。字詰め、大事です。(そういえばWEBの表示での組み版も随分きれいになったものだ。)

チラシやメニューに載せる写真も自分で撮ることがある。長いこと撮影現場にはいたけれど、ディレクターとして指示を出す側だったので自分で撮影するというのは全くの素人なのだ。もちろんアートディレクターでも写真を撮るのが好きで上手な人はたくさんいるのだが、僕は全然ダメだった。たまに撮影現場でカメラマンがアングルを決めた横でシャッターを切って「いい写真が撮れた」って顔をしてるカメラ好きなクライアントや時にはデザイナーがいるけれど、僕はそれが大嫌いだったから、撮影現場にカメラを持っていくことはまずなかったし(メイキングを作る必要がある時は仕方ないけれど)、技術的なことはプロフェッショナルに任せて、自分はディレクションに専念するのが筋だと考えていた。

でも、「いやー、もうちょっと写真撮っておけばよかった」というのが今の実感だ。もうほんとに露出とか被写界深度とかそんなところからやり直している。料理写真はこれまた専門的なので、プロのフードカメラマンにお願いした時のセッティングをメモしておいて、安いストロボセットを買って試行錯誤しているのだけれども本当に難しい。そしてプロの撮影機材の高価なことにあらためて驚いている。今までギャラの交渉で機材費を下げてもらったスタジオの皆さんに心から謝罪したい。ごめんなさい。

撮影の他にもイベントでは企画から始まってテントを組んでジェネレーターを回して照明と音響をセットしつつビールやフードを提供するし、ビデオ撮影や動画編集もするしパッケージデザインもすれば社内のグループウェアの導入計画もやっている。あとホップ畑の世話とかドアの修理とか。いろんなことが守備範囲だ。

英語ではvocationとかcallingいう言葉があるそうだ。「召命」「天職」「使命」みたいな意味で「神から与えられた仕事」というニュアンスのようだ。仕事は自分で選ぶもの、という考え方が現代では一般的だが、そうではなく「神が、社会が、その人に仕事を与えるのだ」という考え方も古来からある。それがあるのならそれを全うするのもいいのかな...。と思うこともある。世の中で成功する人はどちらのケースもあるから悩ましい。広告の世界では自分のやりたいことだけを、時にはエゴイスティックにやって成功する人を何人も見てきた。一方でたまたま自分にお鉢が回ってきた仕事を誠実に懸命にやっているうちに大成功したという人もいる。僕はどうなんだろうか。少なくともエゴイストにはなれそうにないんだけどね。

で、こうした雑務を引き受けながら、ビールづくりの時間と機会を捻出するのに四苦八苦しているけれど、そこで自分の存在意義を証明していかなくてはならない。他のことで評価されてもやっぱりそれは違うのだ。器用貧乏という言葉があるが今の僕はまさにそれ。器用大富豪とか言わないものね。


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