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食わず嫌いの東洋医学~異文化として理解する

あけましておめでとうございます。今年から東洋医学関係でnoteに記事を投稿しようと思っています。よろしくお願いいたします。 

さて、その東洋医学ですが、わからない、というか、わかるように説明できる人がいない。これが東洋医学を専門的に学び始めて感じたことでした。 

 東洋医学のわかりにくさには

 脈絡不明=説明されていることがちんぷんかんぷん
 治る機序が分からない=(例)痛いのは肩なのに足で治したりする
 目に見えない=数値化されていない、数値が見えない
 すぐに治らない=治るか治らないかが不明、説明がない
 (鍼灸では)痛い、熱い=これは正解でも不正解でもあります

などが挙げられるのではないでしょうか。今考えれば、それぞれ理由があるのですが、今まで使っていた言語で理解しようとしていたため、習得や理解するまでに時間がかかりました。

しかし今では、この「わからなさ」。ここに東洋医学の特徴が隠されていると思います。

①脈絡不明
多くの人が「気」「血」「水」などの東洋医学的言葉に接すると思います。さらに鍼灸治療などでは「経絡」などの言葉も使われ、陰陽五行論なども交えて話しが進みます。

わかるわけはありません。そもそもその基礎的知識が身についていないからです。これに気づく(理解できる)までに数年かかりました。

東洋医学の立ち位置、その考え方や発展の経緯、また、日本では西洋医学とはことなる医療政策のもとに発展してきた経緯などが複雑に絡み合っています。そのため、使う単語も理論も異なることから、「脈絡不明」となります。

理解するには、真剣に学ぶか、異文化として納得する必要があります。

②治る機序が分からない
東洋医学は、知識、知恵、経験の中から発展した医学です。つまり、西洋医学のような科学的な根拠を基にして発展したものではないことから、(科学が発展する前に東洋医学として発展してきたことから)、治る機序についてまだ科学的に説明がつかないものも多くなっています。

このことから「怪しい」というイメージを持つ方も非常に多い医学です。

③数値化されていない
健康診断など、現在の私たちは「見える化」されたものに対する信憑性が高くなっています。数値やグラフは非常にわかりやすく、理解もしやすいのがその理由です。

しかし残念ながら東洋医学は前述したとおり知識や経験により発展してきた部分が大きいため、「数値化が絶対」ではありませんでした。数値化しなくても発展できてしまったのもその理由かもしれません。

東洋医学では漢方治療でもそうですが手首の脈を診る「脈診」が行われることが多いです。韓国の歴史医療ドラマなどを見ると、韓医師が「ご懐妊です」というような場面を見ることがありますが、医療者が指先で脈を感じその病態を判断しています。職人技です。

問診や積み重ねられた知識や経験などを総合的に組み合わせて病態を判断できるように発展したため、「数値」に頼らなくても病気を治せる治療法が編み出されてきました。旧態依然としているとも言えますが、シンプルで機械に頼らなくても治せることが強みでもあります。

④すぐに治らない
これは正解でも不正解でもあります。
すぐに治らないケースとしては、

 A:東洋医学を選択するまでに病態が進んでしまっている(つまり東洋医学が第一選択医学ではないため、たどり着くまでに時間がかかり病状が進んだケース)

 B:生活習慣に左右される病態も多いため、治ってもまた悪くしてしまう(負荷をかけなければ治りも早いが、生活するうえで「使わない」という選択肢がないケースが多い)

 C:慢性的な症状でかかるケースも多い(若い時に痛めた古傷、負荷がかかっていたが年齢とともに症状が抑えられなくなってきた、など)
 これらは長い時間をかけてしまっているため、治るのにも時間がかかるケースが多くなっています。

一方、ぎっくり腰など急性期のもので、数回の治療で治るものもあります。

いずれの場合も、丁寧な説明が必要ですが、「治らない」と感じてしまっている方の中には納得した説明を受けることが少なかった人も多いのではないかと思います。

⑤(鍼灸治療の)痛い、熱い
これも正解でもあり不正解でもあります。
普通に考えて、「鍼を刺す」「灸をすえる」ことでこれら感覚があるのは当たり前とも言えます。
しかし、痛くない鍼もあり、熱くない灸もあります

鍼治療には、刺さない鍼を用いた治療があります。専門家は「鍉鍼(ていしん)」を用いた鍼治療と呼んでいます。
乳幼児、児童、障害者などに用いることもあれば、成人にも用いることもあります。
また日本で発展した鍼治療には、管(筒状のもの)を用いて鍼を刺すことで痛みを感じにくくする治療法もあります。

灸治療も、米粒の半分ぐらいの大きさ、糸のような細さの灸をすえることもあります。これらは、熱さを感じさせない治療方法です。
冷え性などがひどく、足裏などの感覚の鈍いところへの灸治療では、かなり多くの米粒大の灸を50回以上すえても、熱さを感じないこともあります。このケースなどでは、あえて熱さを感じるまで(感覚が戻るまで)灸をすえることがあります。

痛さや熱さを感じることは、治療においては必要なことであり、また、その病態の状況を知ることでもあります。

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東洋医学のわからなさから「食わず嫌い」になってしまうことは非常にもったいないと、東洋医学に携わる医療者として感じています。このコラムでは、そういった筆者が東洋医学に携わる中で感じてきた疑問や伝えたいことなどをできる限りかみ砕いて伝えていきたいと考えています。(了)


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