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良性発作性頭位めまい症と鍼灸治療

良性発作性頭位めまい症とは、内耳の耳石器という部分にある炭酸カルシウムの塊(耳石)が、普段生活している日常でする動きの中の何かの原因(加齢や頭のケガ、耳の奥にある内耳の血流の悪さなど)で剥がれ落ちてしまい、三半規管の中に入り込んでしまうことによって、めまいが起きる症状のことです。

三半規管とは耳の奥にあります。
半規管と呼ばれる三つの車輪のような器官がつながった組織で、この三半規管の中はリンパ液で満たされています。

頭が動くと、頭の動きに応じてリンパ液も三半規管の中を流れます。
この動きを感知することで、人間は歩いたり走ったりすることができるのです。
三半規管は身体全体のバランスを取っている器官になります。

その三半規管に耳石という炭酸カルシウムが入り込んでしまうと、リンパ液の流れに乱れが起きてしまいます。

その結果、感覚器と実際の身体の動きが合わなくなるのです。
この脳神経伝達のメカニズムのずれによって、めまいが生じると考えられています。
そのずれによって起きるめまいが良性発作性頭位めまい症の症状です。

内耳の障害によって起きるめまいの症状があるとメニエール病が疑われることがあります。

しかし、内耳の障害が原因となって発生するめまいのうち、良性発作性頭位めまい症が6割以上で、メニエール病によるめまいは2割以下といわれています。

良性頭位めまい症の症状

良性発作性頭位めまい症の症状は、回転性のめまいです。
これはグルグルと目を回した時のような、目の回り方のめまいです。

良性発作性頭位めまい症は、炭酸カルシウムに耳石が入り込んだ半規管でリンパ液の流れが異常を起こし、めまいが起きる病気です。

この病気は、特定の方向に頭を動かしたときにだけ症状が見られるということが最大の特徴です。
その際、患者自身の自分の意思と関係なく眼球が動く現象である眼振が起こるということも特徴です。

眼振は目を回した状態に近い状態になるため、乗り物酔いにも似た嘔吐感があることもあります。
耳鳴りや聞こえづらいなどの症状はなく、めまいだけ生じます。

良性発作性頭位めまい症の症状によるめまいを重ねるうちに段々慣れていきます。
慣れによって症状が軽くなっていくという特徴もあります。

しかし、耳石が三半規管に入り込んでしまっている状態が続く限りは症状が改善することはないと言われています。

良性発作性頭位めまい症を改善する方法は、頭を決まった順番で決まった方向に傾けることです。(エプリー法)
この動作によって三半規管に入り込んだ耳石を体の外へ排出します。

この改善方法では、三半規管の中に入り込んだ耳石を移動させ、耳石を三半規管から出すように導きます。

めまいの発作は、入り込んでいた耳石を三半規管から取り除くことで改善します。耳石が三半規管から取り除かれればめまいの発作はなくなるのです。

良性発作性頭位めまい症の鍼灸治療

良性発作性頭位めまい症に対しての鍼灸治療は、耳の奥にある内耳という場所の細胞の代謝を正常化するためにリンパ液、血流の促進を目指します。

主には、後頭下筋群と呼ばれる後頭部の筋肉や耳に関連の深い側頭部の筋肉の硬さを緩和する治療をしていきます。

前頭筋と後頭筋を連絡する帽状腱膜の硬さや顎関節の硬さもめまいに関連しています。

前頭頂部付近を押してみて圧痛があったり、頭皮がむくんでブヨブヨした感じなどが確認できる場合は注意です。

顎関節が硬い方は、全身が緊張傾向にある方がほとんどです。
顎関節は頭部における唯一の関節です。
頭部のコンディションに及ぼす影響は大きいのです。
顎関節を緩めるには、顔の筋肉である表情筋を緩めることが必要不可欠です。
表情筋は、非常に細かい筋肉が複雑に走行しているため、鍼を使った治療が効果的です。

また、鍼灸学的な観点では、肝臓に関連する経絡がめまいに深く関係するため、足の親指から上腹部にかけて走行する肝経(肝臓の経脈)からもめまいを治療することも可能です。

鍼灸治療は、局所に限定して治療を行うのではなく、身体全身を評価して治療を行うので、対症療法ではなく体質から根本的に改善していくことができます。


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