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使えない筋肉はない

みなさん、こんにちは。
現場でトレーニングを指導していると、クライアントさんから相談を受けることがあります。
「使えない筋肉はいらない」「マッチョの筋肉は使えないんでしょ」
トレーナーをやっていれば、皆さん一度は耳にしたり、質問されたり、相談されたりした経験あると思います。
つい最近も芸能人の方が「男なら見せる筋肉じゃなくて、使える筋肉もっとけ」みたいなことを言って騒ぎになったようですね。
まぁ、そんな話でも話題になるだけ筋肉が日常に定着してきたのはいいことだと思います。が、トレーナーとしてはクライアントとのやり取りで、この辺の説明ができないと困ると思うので、「使えない筋肉」今回はこれをテーマに掘り下げていきたいと思います。
本当にマッチョの筋肉は使えないのか?では、使える筋肉とは?

気になる部分にスポットを当てていきたいと思います。

それではいってみましょう。

使えない筋肉はあるのか?

まずはこの「使えない筋肉」というものがあるのかどうかですよね。
結論から言いますと、

「使えない筋肉はない」

と言えると思います。
厳密にいえば、
「それぞれの動きに特化したトレーニングを行わなければ、すべて使えない筋肉となる可能性がある」
という言い方の方が正しいかと思います。
筋肉をどんどん肥大させていき、大きくしていっても、競技に合わせたトレーニングや調整などを行わないとそれが活かされることはないということです。

そもそも、なぜ「使えない筋肉」なんて話が広まったのか。
色々探してみましたが、これが起源だと言えそうなものは見つかりませんでしたが、思い当たるものがあります。
それは、様々なスポーツから代表選手を集めて色々な競技で競い合うTVショーです。
日本だと年末とかお正月にやっている番組などですね。
あのような番組で、大柄な選手(もちろん筋肉で)が小柄な選手に負けたり、細身の選手の方が記録がよかったりするものがあったと思います。
そうすると観ている人には「筋肉いっぱいあってもダメ」というネガティブな印象が植え付けられてしまいます。

見た目が「でかい!」「強そう!」というインパクトがあったのに、あっさり負けてしまうと、内容などよりもギャップで負けたことが強調されますよね。
その結果、筋肉があっても勝てない=使えない筋肉だった
みたいな図式が生まれるのかな…と思っています。

ここでポイントになるのは、
種目によっては負けた選手の得意分野ではなかった
ということが考慮されていないことです。

競技特性を考える

スポーツにはそれぞれの競技の核となる動きや考え方などがあります。それを競技特性と呼びます。
この競技特性に対して適切なアプローチが出来ているかで、その競技に身体を順応させることが出来るかが決まります。
例を出しましょう。

ウェイトリフティング部の選手と陸上部の選手が100m走ったらどっちが勝ちますか?

基本的には陸上部ですよね。だって走る練習しているかどうかの差があるから。
これは疑問はないと思います。この勝負に対して「ウェイトリフティング部の彼の筋肉は使えない筋肉」と言う人はあまりいないと思います。
では…

ボディビルダーが野球のバッターをやったら打球はボテボテのゴロしか打てませんでした。

これに対して人によっては「使えない筋肉」と言い出します。

でも、冷静に考えたらこれは筋肉の問題じゃないですよね。
バッティング練習していないんだから、打てないのが普通です。
ホームランを打つための一番の要素は筋肉量ではありません。ホームランを打つ(打球を飛ばす)ための適切なスイングが出来るかどうかです。
筋肉がなんでも解決してくれると思ったら大間違いです。

野球もサッカーもバスケットボールも格闘技も、すべてのスポーツにはそれぞれの身体の使い方があります。
それぞれの種目の選手はその使い方を身体に覚えさせるために何千回、何万回と反復練習をしています。反復練習によって競技に必要な技術の獲得ができます。
このそれぞれの競技特性を無視して「使える、使えない論」を展開することはまったく無意味なのです。

なので、さきほどのTVショーのような番組で、例えば「柔道の選手」が出場した場合に短距離走のような種目で勝負に負けても当然の結果だと捉えるべきなのです。

トレーニングとスポーツの身体の使い方の違い

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「使える筋肉」「使えない筋肉」という判断はたいていスポーツの場面で判断されます。
筋トレ大好きなマッチョが筋肉はあるのに「足が遅い」とか「テニスが苦手」とか…。

逆に、アスリートがジムに来てトレーニングを行うときに扱っているウェイトが軽くても
「あの選手の筋肉は使えない筋肉だな」とは言われないと思います。

これが、マッチョが否定されやすい原因の一端なわけです。
では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
その一因は、トレーニングとスポーツでは身体の使い方が違う。という点があると思います。

スポーツ競技というのは、基本的に全身を使います。全身を使って、最大限にパワーを発揮して行う中で勝敗を決めていきます。
そのためには、反動や勢い、相手の力などをうまく利用する必要があります。
スポーツの試合中に特定の筋肉に頼った身体の使い方をしていたら、すぐにその部位がオールアウトしてしまい、動作が繰り返せなくなってしまいます。
なので、できるだけ、負担を分散し自分の筋肉が出すエネルギーは抑えながら最大限にパワーを発揮できる方法で動いていくことが目標になります。
「運動神経がいい」なんて言い方をする場合はこの反動の使い方や勢いの使い方が上手という意味になりますね。
つまり、特定の筋肉の発達よりも全身の出力のバランスが重要とされます。

トレーニング(ウェイトトレーニング)はこれとは対極の考え方になります。
トレーニングの主となる目的は特定の部位の発達です。
その為に、ターゲットにした特定の筋肉を効率よく追い込むための使い方が最も重要になります。

反動や勢いを使えば、重いウェイトでトレーニングできますが、結局特定の部位を追い込む(オールアウトさせる)には時間がかかりすぎて非効率となります。
なので、反動などは起こさないように特定の部位だけを繰り返し使うことが求められます。

トレーニングの癖がつくと…

以上のようにウェイトトレーニングに特化した身体の場合は、日ごろから反動や勢いを消して筋肉を使う訓練をしているので、スポーツの試合や練習においても反動を使わないようにしてしまう癖が抜けない方がいます。
これが周りから見た「使えない筋肉」の原因になります。

アスリートでもこれを理解して、トレーニングと競技の練習をうまく組み合わせたり、期間を分けて計画的にトレーニング出来ている場合は、筋肉量もあって、競技の成績もいい選手となります。

まとめ

ここまでの話の通り、今回のまとめは

使えない筋肉はない。
使えるかどうかは競技の技術を獲得できているかによる。


となります。
なので、皆さんもクライアントさんや患者さんに説明する際には身体の使い方の違いを話して、相手が何を求めているかのカウンセリングをしっかりと行っていきましょう。


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