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【声劇】スサノオの贖罪

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08

♂:♀=2:1
約20 分~30分

上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。

【声劇 スサノオの贖罪】

スサノオ=♂
イザナギ/カグツチ=♂
イザナミ/童鬼/クシナダ=♀
 
***
 
スサノオ:「母に会いたいとわめいた神が、後に英雄と称えられたのは有名な話。これは、彼が英雄となったその後の物語」
 
***
 
スサノオ:「クシナダ。もう、寝るのか?」
 
クシナダ:「はい、昨夜が遅かったので、今日は早めに休もうかと……」
 
スサノオ:「そうか……」
 
クシナダ:「どうかなさいましたか?」
 
スサノオ:「いや……」
 
クシナダ:「もう。私を救ってくださった時はあんなに胸を張っていらしたのに。一体どうしてしまったのですか?」
 
スサノオ:「……何も無ぇよ。気にすんな」
 
クシナダ:「そうですか……。何かあったら、相談してくださいね。貴方がしてくれたように、私も貴方を助けますから」
 
スサノオ:「…………」
 
クシナダ:「……それじゃあ、灯りを消しますね。おやすみなさい」
 
スサノオ:「……あぁ」
 
***
 
スサノオM:「欠けた剣、隣で眠る妻。ヤマタノオロチを討伐して、七日が過ぎた」
 
スサノオ:「俺は、天界と現世うつしよを追放された身……。クシナダ、俺は……本当に、お前の隣にいていいのか?クシナダ、俺は、追放の令を破ってでも、お前と……——」
 
***
 
イザナギ:「……ノオ、スサノオ!」
 
スサノオ:「……ッ!親父」
 
イザナギ:「全く、いつまで寝ているのだ。今日は、皆で出雲いずもへ行くのだぞ」
 
スサノオ:「皆……?出雲いずも?親父、それは一体……」
 
イザナギ:「アマテラスもツクヨミも既に待っている。お前も早く、顔を洗ってこい」
 
スサノオ:「姉貴と、兄貴も、俺を待っている……?ここは……親父の宮殿?」
 
イザナギ:「どうした、スサノオ。悪い夢でも見たのか?」
 
スサノオ:「夢……あぁ、あれは全部、夢だったのか」
 
イザナギ:「ん、おぉ!イザナミ!準備が出来たか。もう少ししたら、スサノオも準備が整う。先に二人の元へ行ってくれ」
 
スサノオ:「イザナミ様……母上。俺は……俺は……」
 
イザナギ:「……あぁ、まだそんなことを言うのか。スサノオ。お前はまた、駄々をこね、泣き喚き、草木を枯らすのだな。三貴神の木偶の坊が。お前など、産まれてこなければ良かったのだ。そうお前など……——黄泉へ渡ってしまえばいい!!!!」
 
***
 
スサノオ:「……ハッ。はぁ、はぁ……。夢……。いつの間にか、眠ってしまっていたみたいだな。……少し、夜風でも浴びて落ち着くか」
 
***
 
スサノオ:「……親父、俺は許されないのか?ヤマタノオロチを倒したことは、今までの罪の贖罪にはならねぇのか?俺は……俺は、産まれて来ちゃ……——」
 
イザナギ:「あぁ、そうだ」
 
スサノオ:「ッ……!親父!?どうしてここに……」
 
イザナギ:「アマテラスから報告があった。スサノオ、お前が納めたあの剣は、天界を荒した罪滅ぼしのつもりか?」
 
スサノオ:「…………」
 
イザナギ:「まぁいい。随分と上等な剣だ。アマテラスの慈悲もある。追放の令を破ってここにいることは許してやろう」
 
スサノオ:「親父……」
 
イザナギ:「それで、スサノオ。お前はいつまでこの現世うつしよにいるつもりなんだ?」
 
スサノオ:「…………」
 
イザナギ:「まさか、ここに居続けるつもりじゃないだろうな?」
 
スサノオ:「……俺には、家族が出来た。アンタより、姉貴より、大切な家族だ」
 
イザナギ:「だが、追放の令は変わらない。今すぐに黄泉へくだれば、家族には手を出さないでおいてやる」
 
スサノオ:「クシナダは、俺を変えてくれた人だ!……俺は、クシナダと共にこの場所で幸せになりたい」
 
イザナギ:「ぬかせ!この愚息ぐそくが!お前の魂はアマテラスと対照……!穢れそのものであるお前が、そう簡単に変われるものか!」
 
スサノオ:「……ダメか?親父……!俺の人生は、ようやく始まったんだよ。こんなところで終わらなきゃダメなのかよ!」
 
イザナギ:「スサノオ、お前の幸せは、この現世うつしよにいる限り許されないことだ。女を一人助けたくらいで、罪が祓われると思うな」
 
スサノオ:「ッ、自分は、その女一人を守れなかったくせにかよ!」
 
イザナギ:「ッ……!」
 
(スサノオ、腕を斬られる)
 
スサノオ:「ぐあッ!……くッ、傷口から、鱗が……!」
 
イザナギ:「くだれ、スサノオ。英雄を捨て、神を捨て、その肉体をも捨てて、黄泉へと降るのだ。ここに居れば、お前の体は鱗に侵食され、数日の内に大蛇と化すだろう」
 
スサノオ:「親父……ッ!」
 
イザナギ:「お前が黄泉へ行くことを望んでいたのだろう?……さぁ、夜明けだ、スサノオ。大蛇と化すか、黄泉へとくだるか。どちらかを選ぶのだ。お前にはもう、逃げ道はない」
 
(イザナギ、去る)
 
スサノオ:「くッ……、俺が天界を荒らしたのは、アンタが治めろと言った海が、天界の光によって荒らされていたからだ……!俺が声で沈めていたとも知らずに、のうのうと現れやがって……。俺が黄泉に行きたがったのは……。ッ……俺の幸せを、奪いやがって!クソ……!」
 
クシナダ:「ふぁ……。スサノオ様。ここにいらしたのですか。起きたら隣にいなかったから、少し心配しました。お散歩ですか?」
 
スサノオ:「…………クシナダ。俺は……間違っていたのか」
 
クシナダ:「え?」
 
スサノオ:「俺は、どこで間違えたんだ?」
 
クシナダ:「朝から、何の話ですか?私は、スサノオ様が間違えているところなんて、見たことがありませんけど」
 
スサノオ:「ッ……すまない、忘れてくれ。…………クシナダ」
 
クシナダ:「はい」
 
スサノオ:「……愛している」
 
クシナダ:「き、急になんですか!もう……」
 
スサノオ:「……ッ」
 
(スサノオ、去る)
 
クシナダ:「え?スサノオ様?スサノオ様、どこへ行くんです!スサノオ様!」
 
***
 
スサノオM:「俺は、駄目だ。駄目な奴だ。俺は、産まれるべきじゃなかったんだ。姉貴にも、親父にも疎まれて、家族を持つことすら叶わない。蛇に呑まれていく身体で、愛するクシナダを守れるわけがない。……でも、それでも、俺は望んじまった。クシナダと二人で、幸せに暮らす未来を、望んじまったんだ!すまない、クシナダ……。俺は、俺は……!——黄泉へくだる」
 
***
 
スサノオ:「……暗い。だが、噂ほどの瘴気しょうきは感じない。くだる坂を間違えたか?……あぁ、武器も持たずに来ちまったな。まぁ、何とかなるだろ」
 
童鬼:「大変たいへんっ!妖だ!」
 
スサノオ:「あ?」
 
童鬼:「地上の妖っ!」
 
スサノオ:「ちげえよ、嬢ちゃん。俺は……——。いや、そうかもな。俺も妖かもしれねぇ」
 
童鬼:「やっぱり妖なんだ!地上の妖が、体を持ったまま黄泉に来ちまった!」
 
スサノオ:「はぁ?」
 
童鬼:「大変だっ!女王しゃまに危害を加えるかもしれないっ!肉体を奪うぞー!おーっ!」
 
スサノオ:「待て、どうしてそうな……」
 
童鬼:「うぉおおっ!」
 
スサノオ:「待てって!俺の腕がこうなったのには理由が……っ、おい、聞け!」
 
童鬼:「あいたっ。うぅっ……うわぁぁぁああん!女王しゃまぁぁぁっ!このおじさん、このおじさんが、アタイをぶった!!!アタイをぶったよぉおおおおお!」
 
スサノオ:「お、おじさん!?お、おじさ……おじさん……ッ、だぁっ、泣くな!分かった、お兄さん何もしねえから!ほら、見ろ!お兄さん、何にも持ってないだろ!」
 
童鬼:「うぅっ……ひっく……。腕が、気持ち悪い」
 
スサノオ:「うっ……悪かったな。でも、この腕は俺のせいじゃ……」
 
童鬼:「妖、アタイが、退治しなきゃ……アタイが、女王しゃまを、守らなきゃ……」
 
スサノオ:「おい、どうし……ッ!?」
 
童鬼:「もっと……もーっと、おおきく、おーおきくなって……ア、タ、イ、がぁ……こ、い、つ、をぉぉぉおおおお……!」
 
(童鬼、徐々に体が大きくなる)
 
スサノオ:「おいおい……勘弁してくれよ?デカブツに絡まれんのは、もうこりごりだぜ?」
 
童鬼:「ア、タ、イ、がぁ、こ、い、つ、をぉ、潰すぅぅぅぅぅっ!!!」
 
スサノオ:「おいおいおい、ちょっと待てって!!!おい、嬢ちゃん!ちょっと落ち着……」
 
童鬼:「えぇーーーいっ!!!」
 
スサノオ:「あぁもう!落ち着けって!!!!」
 
(慌てて出した手から蛇が出る)
 
童鬼:「うわぁぁッ!!へび、蛇だぁっ!こわいよぅ、女王しゃまぁぁーっ!!!」
 
(童鬼、逃げ出す)
 
スサノオ:「お、おい!ちょ、ちょっと待て……!……なんだったんだ?アイツ。それに、今、俺の腕から蛇が……」
 
カグツチ:「…………」
 
スサノオ:「俺は、本当に妖になっちまったのか」
 
カグツチ:「…………」
 
スサノオ:「おい、誰だ。さっきから後ろをコソコソと。そんな物騒なモン構えて無ぇで、堂々と姿を現したらどうだ?」
 
カグツチ:「……僕に気づくとは、只者じゃないな。お前、何者だ」
 
スサノオ:「おぉっと、相手に名前を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀じゃねぇのか?」
 
カグツチ:「……僕は、ヒノカグツチノミコト。イザナミ様に仕えし火の神だ。黄泉の空気に異変を感じたのでここに参上した」
 
スサノオ:「お前が、ヒノカグツチ……。イザナミ様に仕えし者、だと?」
 
カグツチ:「さぁ、僕は名乗ったぞ。名乗れ、お前は何者だ。何をしに、この黄泉へ来た?」
 
スサノオ:「俺は、イザナミ様に会いに来た者だ。なぁ、カグツチさんよォ、やっぱ、肉体を持った者が黄泉へ入ると、分かるもんか?それとも、この化け物みてぇな腕が原因か?」
 
カグツチ:「ッ、名も明かさない者に、答える義理は無い!」
 
スサノオ:「あぁ、そうだったな。せっかく名乗って貰ったんだ。俺も名乗らなきゃなァ?……なぁ、カグツチ、お前は生まれて来て後悔したことはねぇか?母を殺し、父に疎まれ、兄弟の顔すら分からない……」
 
カグツチ:「……?どういうことだ」
 
スサノオ:「カグツチ、俺は生まれて来て後悔してるよ。何をやっても、理解してもらえねえんだ。姉貴には天界を追放され、親父には現世うつしよを追放され、ついには、俺は『穢れそのもの』だとよ」
 
カグツチ:「…………お前は」
 
スサノオ:「それもこれも、お前がイザナミ様を殺したからだ、カグツチ。お前のせいで、俺が生まれた。お前のせいで、俺はこんなにも嫌われ、愛する人すら置きざりにして、こんなところに来ちまった」
 
カグツチ:「まさか、お前は、俺の……」
 
スサノオ:「あァ、俺の名前だったな。教えてやるよ、カグツチ。
苦と死を繋ぐは大蛇の咆哮ほうこう海原うなばらつかさどりしけがれの神。天を貫き、大蛇を殺し、英雄の果てにけがれへ還る。……果てなき地獄が、俺を招いた。天孫、三貴神が一人……スサノオ」
 
カグツチ:「スサノオ、僕の弟……」
 
スサノオ:「カグツチ、お前を兄貴とは呼ばねえぜ。この腕だって、親父にやられたんだ。アンタのせいで、俺は神から妖に引きずり落とされた。カグツチ……俺を苦しめたお前に、今までの借りを返してやる」
 
カグツチ:「スサノオ、お前、まさか……」
 
スサノオ:「大蛇をほふりし天羽々斬あまのはばきりよ。我が腕に秘められし邪の力にて、今、命を刈り取る剣と為れ!」
 
(落雷)
 
カグツチ:「……ッ、腕が、剣に……!?」
 
スサノオ:「お前がイザナミ様に仕えているなんて、俺は絶対に認めねぇ!俺はここで、俺を産まれさせた元凶への復讐を果たす。覚悟しろ、カグツチ!」
 
カグツチ:「ダメだ、スサノオ!その力を使っては……!ぐぁあッ!」
 
スサノオ:「邪に堕ちる、か?構わねぇよ。元より俺は、穢れた存在なんだからなァ!!!」
 
(カグツチ、スサノオの剣を受け止める)
 
カグツチ:「くっ……やめろ!その力で僕を殺せば、お前は完全に神の称号を無くしてしまう。そうなれば、スサノオ。お前はもう現世うつしよへ帰ることが出来なくなるんだぞ!」
 
スサノオ:「どっちにせよ、同じことだろ!俺は追放されたんだ。神の名を捨てたところで、追放の令は変わんねぇよ!」
 
カグツチ:「くッ……!スサノオ、僕も、母を殺したくて殺したわけじゃない。僕だって、母を、家族を守りたかった!」
 
スサノオ:「お前が何を思ったって、起こったことは変わらねぇだろ!」
 
カグツチ:「あぁそうだ。でも、これから起こることは変えられる。未来は、お前の手で変えることが出来る!だから、諦めるな!スサノオ!」
 
スサノオ:「ッ……!俺が、こんな未来を望んだと思うか?こんな、惨めな未来を!」
 
カグツチ:「ッ……!」
 
スサノオ:「俺は、何度だって変えようとしてきた。海を治めるため、光を正すため、クシナダを救うため、何度も何度も何度も!俺は、未来を変えようとしてきた!……でも、変わんねぇんだ。どれだけ強い力で捻じ曲げようとしても、俺の未来は、変わらねえんだ!……カグツチ、確かに、お前を殺したって、未来は変わらねぇ。こんなところに来た時点で、俺の未来はもう終わってんだ。だから……死んでくれ、カグツチ。俺の、過去の弔いのために!」
 
カグツチ:「ぐッ……くッ。僕を殺しても、未来は変わらない?いいや、違う!スサノオ、僕を殺したら、お前は完全に、妖へと身を堕とすことになる。そうなってしまったら、現世うつしよに残してきた家族はもうお前を愛せなくなるんだぞ!」
 
スサノオ:「ッ……!」
 
カグツチ:「彼女が生きているうちはいいだろう。だが、もし、お前を想って黄泉へ来たとしたら、お前は妖になった無様な姿を晒すのか?蛇に呑まれた姿で、家族に……愛を、乞うつもりか?」
 
スサノオ:「ッ……。じゃあ……じゃあ、どうしたらいいんだよ!!!お前には分かんねぇだろ、カグツチ!愛するもの何もかもが、自分の手のひらから零れ落ちていく、この気持ちが!」
 
カグツチ:「いいや、分かるさ!—— 僕は……母を殺したんだ。それでも、母に会い、母を救い、母に許してもらった。スサノオ、例え黄泉に堕ちても、お前はやり直すことが出来るんだ。今日、この瞬間、この場所から、新たな人生を歩むことができるんだよ!」
 
スサノオ:「俺は……俺は信じない。俺は穢れの神、触れるもの全てを壊す、邪の神だ!ここで、もう、全部終わりにさせてくれよッ!!!!」
 
カグツチ:「ッ……!ぐあぁっ……!」
 
スサノオ:「ゼェ、ゼェ……グッ……。鱗が……首のところまで……」
 
カグツチ:「スサノオ……。ここはもう、父上の国じゃない。ここは黄泉、母上の作った愛の国だ。……スサノオ、共に生きよう。母上と、僕と、共に。この場所で、お前の人生をやり直そう」
 
スサノオ:「俺は……俺は……ッ。ウォァァァアア!!!!」
 
カグツチ:「ッ、スサノオ!」
 
(スサノオ、姿が変わる)
 
スサノオ:「幸せに、なりたくないんだ。もう、何も失いたくねぇ。だから、頼む……。終わりにさせてくれ……ッ!」
 
カグツチ:「スサノオ……ッ」
 
スサノオ:「カグツチ、もう、後戻りは出来ねぇ……。俺を、殺してくれ……」
 
カグツチ:「……スサノオ、僕は、今からお前に全力で斬り掛かる。だからお前も、僕に全力で斬り掛かれ」
 
スサノオ:「ッ……!?何の為に……」
 
カグツチ:「もし、お前が僕より強かったら、僕はお前の望み通り死ぬ。その後は好きにすればいい。そして、もし、お前が死んだら、僕はお前を十分に弔ってやる。……もし、お互いに生き残るようであれば、スサノオ。……僕と共に来い。一緒に、イザナミ様に仕えよう。」
 
スサノオ:「…………」
 
カグツチ:「この一撃で、全てを終わらせよう。スサノオ……剣を、構えろ!!!」
 
スサノオ:「……分かった」
 
カグツチ:「行くぞ!我が身に宿りし烈火の炎よ、怨炎おんえんに囚われしかの魂を、希望の光にて浄化したまえ!」
 
スサノオ:「蛇に呑まれしけがれの剣よ!今、邪の力の全てを使いて、雷電の如く、かの敵を討ち殺せ!……雷轟牙乱らいごうがらん!!!!」
 
カグツチ:「燎火浄流斬りょうかじょうりゅうざん!!!!!」
 
(次のセリフ、同時に)
 
スサノオ:「うぉおおおおッッ!!!!!!」
 
カグツチ:「はぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」
 
(スサノオの剣が折れ、スサノオの肩に斬撃が当たる)
 
スサノオ:「ッ……!!!!ぐッ……!!!!」
 
カグツチ:「はぁ……はぁ……」
 
スサノオ:「……ッ、鱗が、消えた……?カグツチの斬撃は当たったはず。なのに……何故、傷一つ、ついていないんだ?」
 
カグツチ:「もとより、僕はお前を殺すつもりがなかった。お前の穢れを祓い、救ってやるつもりだった」
 
スサノオ:「カグツチ……俺は……ッ」
 
童鬼:「うぉぉ〜い!カグツチしゃまぁぁぁ!」
 
スサノオ:「ッ、あのガキ……」
 
カグツチ:「おやおや、イザナミ様を連れてきてくれたようだ」
 
童鬼:「女王しゃまを連れてきました!!!!アタイ、えらいっ?ねぇねぇ、えらいっ?」
 
カグツチ:「あぁ、よくやってくれた。ありがとうな」
 
童鬼:「えっへへ〜?それほどでもぉ〜っ……あるぅ?」
 
カグツチ:「あぁ、下がっていいぞ」
 
童鬼:「ふぁ〜いっ!」
 
スサノオ:「……イザナミ様。母上」
 
イザナミ:「貴方が、スサノオ?……ふふ、あの人にそっくり。だからこそ、貴方の悪性を否定しきれない。……カグツチ、スサノオは貴方に負けたようね。私は、彼をどうするべき?もし、黄泉に悪影響を及ぼすようなら……心苦しいけれど、浄化するしか……」
 
カグツチ:「イザナミ様……彼は――」
 
スサノオ:「—— 俺は、カグツチの斬撃に耐えきれず、剣を折った。ここで殺されるなら、それは本望だ」
 
カグツチ:「いえ、イザナミ様。その必要はありません。確かに、先の戦いで彼の剣は折れました。しかし、彼の剣は初めから欠けていた。これは、一人の女性を守るために戦った証です。もし、彼の剣が欠けていなければ、僕は、彼に負けていたでしょう」
 
スサノオ:「カグツチ……」
 
イザナミ:「そう……。スサノオ、貴方の噂は黄泉まで届いていたわ。だからこそ、貴方の行動が善によるものか悪によるものか、私には判断が出来なかった」
 
スサノオ:「イザナミ様……」
 
イザナミ:「スサノオ、今まで、よく頑張ったわね」
 
スサノオ:「……母上」
 
イザナミ:「これからは、私と、カグツチと、この黄泉で暮らしましょう」
 
スサノオ:「ッ……!」
 
カグツチ:「互いに生きていれば、皆で共に生きると約束しただろう。スサノオ、ここで、この場所で、共に生きていこう」
 
スサノオ:「カグツチ……!」
 
カグツチ:「ハハ、兄貴と呼んでくれよ」
 
スサノオ:「ッ、兄貴……」
 
カグツチ:「あぁ、スサノオ。これからは、僕たちがお前の家族だ」
 
スサノオ:「ッ……。三貴神が一人、スサノオノミコト。これからは、母上と兄貴の臣下となり、永遠の幸せを約束します!」
 
イザナミ:「えぇ、よろしくね。スサノオ」
 
スサノオ:「はい……」
 
童鬼:「ねぇねぇ、アタイはアタイはぁーっ?」
 
スサノオ:「ッ!……あぁ、お前も、俺たちの家族だ」
 
童鬼:「えへへぇ~っ!おじさん、家族っ!」
 
スサノオ:「お兄さんな!!!」
 
一同:「(笑いあう)」
 
スサノオ:「あぁ、ここが……俺の幸せだ」
 
 

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