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【声劇】失った指輪〜怪異前世譚〜(4人用)

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08
♂:♀=2:2
約30分~40分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。

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都市伝説に出てくる怪異にも、きっと生きていた時があります。
どの様な悲しみの中、命を落とし怪異となったのか?
そういうシナリオです。
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悠斗♂:一流会社に勤め、将来を期待されたエリート。 麗子の婚約者。
麗子♀:悠斗の婚約者。 容姿端麗で、バレエでこれからが期待されている。
WP♀: ウエディングプランナー。 その他も兼任。
軍人♂:基地の中にいる軍人。女性を道具としか思っていない。
同僚♂:悠斗の会社の同僚。 エリートだろうと気軽に話しかける気の良いサラリーマン。
お義母さん♀:麗子の母親。
医者♀:麗子を救うためには切断しかできなかったが、仕方なかった。
お義父さん♂:麗子のお父さん。
看護師A♀: 麗子の入院している病院の看護師。 噂が大好物。
看護師B♂:麗子の入院している病院の看護師。
警察♂: 犯人が分かっているのに捕まえられない日本の法律に絶望している。
楓♂:怖い話が好きだけれども、まさか……
逸希♀: 巻き込まれる被害者。

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【配役兼任表】

♂悠斗・楓

♀麗子

♀WP・お義母さん・医者・看護師A・逸希

♂同僚・軍人・お義父さん・警察看護師B

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悠斗:「仕事、5時に少しだけ抜けられそうだから、式の打ち合わせには間に合う」

麗子:「うん、分かった。
悠斗さん、忙しいのにごめんなさい」

悠斗:「ははっ、二人の事なんだから、当然だろ?
じゃあ仕事に戻る。また後で」

麗子:「はい、頑張ってね」

悠斗:「ありがとう。──あっ麗子」

麗子:「え、何?」

悠斗:「……愛してるよ」

麗子:「あ……もう! ふふっ、私も愛してる (電話を切る)
ふぅ〜……あと3時間か。
支度しなくちゃ」

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WP:「笹木様……いかが、致しましょうか?」

麗子:「あ……すみません。もうすぐ来ると思うんです、けど……」

悠斗:「麗子! (走ってくる)」

麗子:「悠斗さん」

悠斗:「すまない。会議が長引いてしまって」

WP:「ご新郎様」

悠斗:「はい。お待たせしてしまい、申し訳ありません」

WP:「いえ──
では、本日はウエディングドレスと、タキシードスーツの衣装選びをして頂きますので、どうぞこちらへ」

麗子:「はい」

悠斗:「お願いします」

WP:「まずはご新婦様、麗子様のウエディングドレスの方を見て頂きます」

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同僚:「どうだったんだ?」

悠斗:「ん? あぁ、プロジェクトは予定通り進んでいるよ。社長にもさっき、その様に報告を──」

同僚:「──じゃ無ぇよ!! 美人妻のウエディングドレス姿だよ!!」

悠斗:「あぁなんだそっちか。
あぁ、とても良かったよ」

同僚:「っくぁぁ〜!!
『とても、良かったよ (キリ) 』
くっそぉ〜スカシやがって、この幸せ者め! あんな美人な奥さん捕まえて『とても、良かったよ (キリ) 』
当たり前だろうがぁ! 元が超美人なんだから、良いに決まってるだろうがよぉ!ちっくしょう!!」

悠斗:「ははっ! まぁ色々なドレスを試着して決めたんだけど、どれも似合うから──」

同僚:「ノロケやがって! このっこのっ!!」

悠斗:「ははっ! 痛い痛い!」

同僚:「よくもまぁ、あんなモデルみたいな子と一緒になれたもんだよ。
これが出世コースを進むエリート君と、一般社員との違いか?」

悠斗:「関係無いよ。
学生時代の友人の紹介で出会って、お互いにたまたま気があっただけさ」

同僚:「よく言うよ。普通、学生時代の友達からバレリーナを紹介されるか? そんな友達自体いないっての!!
彼女が舞台? で、踊ってる姿とのギャップにやられたんだろ?
あんな綺麗な子が目の前に現れたら、誰でも恋に落ちちまう」

悠斗:「ははっ、お前の言う通りだ。
でも、最初はそうだったけど、それだけで結婚まではいかないよ。僕は麗子の中身に惚れたんだ」

同僚:「分かった!! よしっ一発殴らせろ」

悠斗:「なんでだよ!」

同僚:「こんなの、人生の吊り合いが取れねぇ!
一発、一発だけ、な? お前の顔に全力で一発だけだから」

悠斗:「やめろって! はははっ!!」

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WP:「披露宴の当日は、こちらの扉からご入場して頂きます」

麗子:「はい」

WP:「扉が開きましたら、新郎新婦様はここで一礼して頂きまして、そこからは私が先導して参りますので、各テーブルのキャンドルに火を灯して、高砂席(たかさごせき)に参ります」

麗子:「……」

WP:「……いかが致しました?」

麗子:「あ、すみません。なんかまだ現実味が無くて」

WP:「大丈夫ですよ。
当日は、ご家族様、ご友人様、おふたりにご関係のある方々が、こちらのお席に着席されまして、お二人の門出をお祝いして下さいます」

麗子:「……」

WP:「照明を落とした会場に、幸せへと続くキャンドルの明かりを灯して参りまして……高砂席たかさごせきのキャンドルに、最後の明かりが灯った時、会場にいらっしゃる全ての方々の笑顔が、新郎新婦様のこれからな幸せをお約束して下さいます」

麗子:「はい……」

WP:「でも──」

麗子:「っ? ……でも?」

WP:「あ、失礼しました。
いや『羨ましいなぁ』と、思っちゃいまして」

麗子:「……はぁ」

WP:「あまりお客様に言う事では無いんですけど……私、まだ結婚していなくて」

麗子:「え、そうなんですか? てっきり指輪をしているから」

WP:「あぁ、これは会社の決まりなんです。
『既婚者にプランニングしてもらった方が、安心感があるだろう』って」

麗子:「なるほど」

WP:「こんなに綺麗なご新婦様と、そしてお優しそうなご新郎様のご結婚式に携わる事が出来て……私も結婚したいなぁ〜って、勝手に憧れちゃって──
ははっ! すいません」

麗子:「いえ、そんなw」

悠斗:「──あぁ、いた」(駆け寄る)

麗子:「あ、悠斗さん」

悠斗:「遅くなってすみません。
えっと……」

WP:「ご新郎様、お待ちしておりました。
今ご新婦様に、披露宴当日の流れをご説明させて頂いていた所です」

悠斗:「そうですか。ありがとうございます」

WP:「(小声) さっきの話は、内緒でお願いします」

麗子:「はいw」

悠斗:「ん……どうした?」

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悠斗:「おっと、雨か……」

麗子:「悠斗さん、これから──」

悠斗:「──すまない。
今日中にまとめないといけない仕事がまだ残っているから、また会社に戻らないといけないんだ」

麗子:「え……あ、そうなの?」

悠斗:「あぁ、一緒に夕食を食べたかったけど……」

麗子:「でも、お仕事なら仕方ないよ」

悠斗:「ん〜……本当にすまない! また今度──そうだなぁ、今度の日曜日。一緒に美味しい物を食べに行こう!」

麗子:「うん! でも、お仕事で疲れているだろうから、無理はしないでね」

悠斗:「麗子と一緒なら、仕事の疲れなんて吹き飛ぶよ」

麗子:「もう! ふふっ」

悠斗:「じゃあ、僕は会社に戻るから」

麗子:「うん、頑張ってね」

悠斗:「ありがとう。麗子も、雨が強くなり始めているから『寄り道せずに』まっすぐ家に帰るんだよ」

麗子:「うん、分かってる」

悠斗:「──あっ!」

麗子:「え、何?」

悠斗:「愛してる (キス)」

麗子:「ん……私も、愛してる」

悠斗:「じゃあ行って来る」

麗子:「うん、行ってらっしゃい」

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(帰り道)

麗子:「『ではみなさま、扉の方にご注目下さい。
鹿島悠斗、麗子──新郎新婦のご入場です!』
パパパパ〜ン♪
綺麗なドレスを着て、扉で一礼して、悠斗さんの腕に手を添えて……ふふっ
キャンドルに火を灯して、バレエの友達、先生……同級生の友達……お母さん、お父さん、みんなの顔が浮かんで──
『では、メインキャンドルの──点灯です!』
はぁ〜! みんな、喜んでくれるかな? ふふふ──うっぐ!? (口を塞がれる)」

軍人:「haha!! Pretty girl!!ハハッ!! プリティガール!!
Hey!! Take someone before is found!!ヘイ!! テイク サムワン ビフォー イズ ファウンド!!
【訳: ハッハッ!! 良い女だ!! おい、見つかる前に連れて行くぞ!!】」

麗子:「ん〜っ!! んっん!! (暴れる)」

軍人:「Shut up!!!シャラップ!!! (殴る)
【訳:黙れ!!】」

麗子:「──うっぐ!? ん〜!!!!」

軍人:「Get the car ready quickly!!ゲット ザ カー レディ クイックリー!!
【訳:早く車を回せ!!】」

麗子:「んっ!! ん〜っ!!! ん〜〜っ!!!!!!」

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悠斗:「(電話に出る) はい鹿島です──」

お義母さん:「──もしもし、悠斗さん!
麗子が、まだ帰っていないんですけど、何か知りませんか!」

悠斗:「えっ、麗子が?
いえ、式場で打ち合わせが終わってから、僕は会社に戻ったので──」

お義母さん:「こんな時間まで帰って来ない事なんて、今まで無かったのに……麗子の行きそうな所って、どこか──あぁ、麗子にもしもの事があったら……」

悠斗:「お義母さん、落ち着いて下さい! 僕が探しに行きます!」

お義母さん:「っ!! わ、私も──」

悠斗:「いえ、お義母さんは家にいてください。少し寄り道をしているだけかもしれませんし!」

お義母さん:「あ……えぇ、そうね……」

悠斗:「僕に任せて下さい」

お義母さん:「え、えぇ……よ、よろしくお願い、します」

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(一週間後 病院)

悠斗:「麗子!! 麗子は──」

医者:「落ち着いてください。
一命は取り留めましたが、その……今はまだ」

悠斗:「なんですか!! 僕は麗子の婚約者です!! 麗子に会わせて下さい!!!」

医者:「ですから、麗子さんの精神が安定しておらず、例え親族であろうと、その前にお話を──」

悠斗:「麗子に!!」

警察:「──鹿島さん……私は (手帳を見せて) 」

悠斗:「警察──麗子に何があったんですか!」

警察:「説明致します。
ここでは何なので……こちらへ」

悠斗:「っ……」

(間)

警察:「先日、基地近くの河川敷で『女性が倒れている』という連絡を受け、保護致しました。
所有物、衣類が全て剥ぎ取られており、身元が不明だった為、すぐにご連絡する事が出来ず……
署に戻って失踪届を確認致しました所、笹木麗子さんだという事が分かり──」

悠斗:「衣類が……それって──」

警察:「車で拉致され……麗子さん、必死に抵抗されたのでしょう……外傷が激しく──」

悠斗:「犯人は誰なんです!!! 誰が麗子を──っ!? 基地……まさか」

警察:「はい……」

悠斗:「そんな……そんな!!
分かっているなら早く捕まえて下さいよ!! 警察は何をやっているんですか!! 」

警察:「今、署をあげて全力で捜査を──」

悠斗:「──必要無いでしょ!! アイツらがやったって事は分かっているんです!! さっさと捕まえて死刑に!!!」

警察:「──私共も悔しいんですよ!!」

悠斗:「──っ!?」

警察:「日米地位協定……確実に起訴まで持っていけない事には、基地の中の奴らを、引きずり出す事が出来ない。
そこにいるのに……そこにいる事が分かっているのに手が出せないんです!!」

悠斗:「……くっ……くそっ!!! くそぉ!! くそぉ!!!! なんで……なんで!!!!!」

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医者:「よろしいでしょうか?」

悠斗:「……」

医者:「……麗子さんは今、かなりのショック状態にあります。
私共と致しましても、麗子さんの命を最優先にと考えまして、それで──」

悠斗:「麗子に、会わせて下さい」

医者:「……」

悠斗:「お願い、します」

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医者:「笹木さん、入りますよ」(扉を開ける)

悠斗:「麗子? ……麗子、なのか?」

麗子:「……」

医者:「何度も何度も殴打されたのでしょう……お顔も、激しく損傷しておりまして……今は包帯で……」

悠斗:「麗子、僕だ……分かるか?」

麗子:「……」

医者:「手術を終えて、目を覚まされてから、ずっとこの調子です」

悠斗:「麗子!! 返事をしてくれ!! 麗子!! (肩を掴む) っ!?
腕が──」

麗子:「──っ!? ひっ……い、いや──あぁぁ!!!! いやぁぁぁあ!!!!!!」

軍人M:「Ouch! Scratched my face!!アウチ! スクラッチドゥ マイフェイス!!
I told you to hold it tight!! Guttem!!アイ トールドユー トゥ ホールド イッタイ!! ガッテム!!(肩を銃撃)
Now you're going to be quiet!!ナウ ユア ゴーイング トゥ ビークワイエット!!
【訳:痛って! コイツ、俺の顔を引っ掻きやがった!! しっかりと抑えとけって言ってんだろ!!
ちっ!! クソ女が!! (肩を銃撃)
これで楽になる!!】」

麗子:「あぁぁ!!!! いや──いやぁぁあ!!!! (自分の腕を噛む)」

悠斗:「麗子!! 麗子、僕だ!! 麗子!!!」

医者:「は、離れて下さい!! 落ち着いて!!」

悠斗:「あ……あぁっ……」

麗子:「ふ〜っ! ふ〜っ!!」

医者:「今は、誰の言葉も届いていません。
それと…… (布団をめくる)」

悠斗:「っ!? 足、も……」

医者:「……」

軍人M:「Stronger willed than I thought!!ストロンガー ウィルド ザン アイ ソート!!
"It's no use going wild!"『イッツ ノーユーズ ゴーイング ワイルド!』
if we are resisted, we will have less time to enjoy ourselves!!イフ ウィアー レシスティッド、ウィ ウィル ハブ レスタイム トゥ エンジョイ アウアサービス!!
Yeah!!イェア!! (足に銃撃)
haha!! You can't get away with this.ハッハッ!! ユーキャント ゲットアウェイ ウィズ ディス
【訳:思っていたよりも気の強い女だ!! 『暴れるだけ無駄だ』って言っても、逃げられたら俺達の楽しむ時間が減っちまう!! オラ (足を銃撃)!!
ハッハッ!! これで逃げられねぇ】」

麗子:「うぅ〜っ!! うぅ〜っっ!!!!!!」

悠斗:「麗子……そんな……」

医者:「雨の降り続く中、ぬかるんだ河川敷の泥が傷口に入り……その菌が左腕と右足の筋膜を壊死えしさせていました。このまま放置しておくと、笹木さんの生死に関わると判断し……」

麗子:「──うわぁぁぁ!!!! あぁ!! ひっひぃあ!!!!!!」

悠斗:「──麗子!!」

医者:「今日はもう、お帰りください」

悠斗:「あ、あぁ……そんな……まさか、こんな事に……」

麗子:「あああ!!!! ふぅ〜っ!! ふぅ〜っ!! うぁぁぁあ!!!!」

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お義父さん:「悠斗君……」

悠斗:「……お義父さん……」

お義父さん:「すまない……こんな事になって──」

悠斗:「──いえ! 僕があの日、家までしっかりと送り届けて入れば、こんな……こんな事には……
僕が……僕がっ! 僕がっ!!! あぁ〜……」

お義父さん:「……悠斗君……すまないが、もう麗子に会うのは、やめてくれないか?」

悠斗:「……え? ど、どうして──何故ですか!?」

お義父さん:「麗子はバレエでも、これからを期待されていた。
それなのに腕を……そして足を失い……顔の包帯の奥にも──
日常の生活にも、戻れるかどうか……
しかし、君にはまだ未来がある。
これからの長い人生、麗子は君の……君の足枷あしかせに──」

悠斗:「──僕は麗子さんを足枷あしかせになんて思ったりしません!!
こんな事になったのは、僕が!! ──」

お義父さん:「──分かっている!!!!」

悠斗:「っ!?」

お義父さん:「私も……分かっているんだ。
しかしどうしても私の中で整理がつかないんだよ……
『君が麗子を家まで送ってくれていたら』
『娘を幸せにすると言っていたのに』
分かっているんだ……君を責めるのは、お門違かどちがいだと分かっている。分かっているのに!! どうしても君を許せない私がいる!!!!」

悠斗:「お義父さん……」

お義父さん:「だから……せめて『君のこれからの事を想っての事』だと……言い訳にさせてくれ……悠斗君」

悠斗:「……僕は……くっ!!」

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看護師A:「聞きました?」

看護師B:「ん、何を?」

看護師A:「ここの病室の人」

看護師B:「あぁ〜、一ヶ月前に暴漢被害にあって、精神を壊したっていう事件だろ? 可哀想にな……それで結婚相手にも逃げられてって──」

看護師A:「──そぉのっ婚約者!」

看護師B:「ん? 」

看護師A:「式場で働いてる友達から聞いたんだけど──その婚約者の人が、今度、別の人と結婚するんだってさ」

看護師B:「えっ!? まだ一ヶ月しか経ってないのに! 早くない?」

看護師A:「それがそれが! 会社の社長の娘さんと、縁談があったらしいのよぉ!」

看護師B:「えぇ〜……にしても一ヶ月で? なんか…… (通り過ぎる)」

麗子:「……」

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麗子:「……あ、あぅ……あ……」

軍人M:「Become quite quiet.ビカム クワイト クイート。
Hey! Are you alive?ヘイ! アーユーアライブ?
It's boring if you don't shout.イッツ ボーリング イフ ユー ドント シャウト
【訳:すっかり大人しくなっちまったじゃないか。お〜い、生きてるかぁ?
もっと声を上げてくれないと、張合いが無いだろ】」

麗子:「あぁ……あうっうぅ……」

軍人M:「Hey! Open her mouth!ヘイ! オープン ハー マウス!
Make someone's voice easier!!メイク サムワンズ ボイス イージアー!
【訳:おいっ、口を開けろ! 声を出しやすくしてやるから。(ナイフで口を裂く)】」

麗子:「あぐぁぁ……あ、あぁぁっ」

軍人M:「Now it's easier to hold in mouth and scream!! haha!!ナウ イッツ イージアー トゥ ホールド イン マウス アンド スクリーム!! ハッハッ!!
Shout out! 『Help me, my one's!』haha!!シャウト アウト! 『ヘルプミー、マイ ワンス!』ハッハッ!!
【訳:これでくわえやすくなったし、叫びやすくなっただろ!! はっはっ!! ほら叫べよっ『助けて!! あなたぁ』って!! ハッハッ!!】」

麗子:「……あぅ……う……ぅ? ぅ……ぅあ? あぁ?」

軍人M:「Shout out! 『Help me, my one's!』haha!!シャウト アウト! 『ヘルプミー、マイ ワンス!』ハッハッ!!
【叫べよ!! 『私の婚約者様!!』って、ハッハッ!!】」

麗子:「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!
あ……あぁ……あぁぁぁぁっ!!!! うぁぁあ!!!!」

軍人M:「Stronger willed than I thought!!ストロンガー ウィルド ザン アイ ソート!!
【訳:思っていたよりも気の強い女だ!!】」

麗子:「がぁぁぁ!!!! あっあぁっあぁぁぁ!!!!!! ぐぅぅっあぁあ!!!! (顔を掻きむしる)」

看護師AM:「その婚約者の人が、別の人と結婚するんだってさ」

看護師BM:「えっ!? まだ一ヶ月しか経ってないのに! 早くない?」

看護師AM:「それがそれが、会社の社長の娘さんと、縁談があったらしいのよぉ!」

悠斗M:「あ、あぁ……そんな……『まさか、こんな事に……』」

麗子:「あっあぅあぁぁぁぁ!!!! あぐぁぁぁぁああ!!!!!!」

悠斗M:「『寄り道せずに』まっすぐ家に帰るんだよ」

麗子:「ぅあ──あぁっ!!! うぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!! あぁぁぁぁあっ!!!!!!!
(何かが切れる)
あ……
…………
………………
……あれ? ……私は、ココで……何を?
あっ……行かなくちゃ……式場に……
悠斗さんと、結婚するんですもの……ふふっ、悠斗さんと一緒に……ふふふっ
……? あ、あれ? 私の、私の左腕……ドコ?
ははっ……ダメね、左手が無かったら、指輪が、はめられないのに……
どこに置いてきちゃったんだろう……? 探しに、行か、ないと……
(ベッドから出る) (倒れる)
あっ……あれ? 右足も、無い?
左腕と右足が無いと、せっかくのウエディングドレス姿を、悠斗さんと、皆様にお見せ出来、ないじゃない……私ったら、おっちょこちょいなんだから……ふふふっ」

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看護師A:「(扉を開ける) ……? 笹木さん?
っ!? 笹木さん!! そんな──どこに!?
(扉を出る) 大変です!! 笹木さんが病室にいません」

看護師B:「なんだって!?
あんな状態でどこに──俺はこっちを探しますので、あっちをお願いします!!」

麗子:「新郎新婦の、ご入場でぇす……
ぱぱぱぱ〜ん♪
扉の前で……一礼して……ははっ。
……悠斗さんの、会社の方々も、来られるん、ですもん……
悠斗さんの奥さんとして、しっかりしないと……
私の左、腕……ドコ?
私の右、足……ドコ?」

看護師B:「笹木さぁん!! 笹木さぁ!!
あ、そっちはどうでした?」

看護師A:「いえ、いません!」

看護師B:「くっ……どこに行ったんでしょう? あの足じゃ、あまり遠くへは行けないはずです!」

麗子:「あぁそっか……高い所から探したら、すぐ、見付かる。
そうよね……高い所……高い、所……
悠斗さん、少しだけ、待っていて、ね? 左腕と……右足が見付かったら、すぐに、向かうから……すぐに……」

看護師A:「私は屋上を確認しに行きます!」

看護師B:「じゃあ俺は通用口を!!」

麗子:「あっ……星が、綺麗。
二人で灯して行ったキャンドルの火みたいだね。
ゆらゆら……ゆらゆら揺れて……後ろの席まで……良く、見える。
私の左腕……ドコ?
私の……右足──」

看護師A:「(扉が開く) ──笹木さん!!」

麗子:「……? 私は……」

看護師A:「さ、笹木さん? そんな所にいたら危ないですから、こちらに」

麗子:「……今日は、私達二人の為に来てくれて……ありがとう、ござい、ます……」

看護師A:「え? な、何を──」

麗子:「もし良かったら……あなたも一緒に、探して、くれませんか?」

看護師A:「探す? 何か無くされたんですね! 分かりました、一緒に探しますから、とりあえずこちらに──」

麗子:「──あっ!」

看護師A:「はい!?」

麗子:「その左手……私の左手に似てる」

看護師A:「……は?」

麗子:「その左手……譲って、くれません、か? このままじゃあ……指輪が、はめれないん、です」

看護師A:「え、いや、それは……私も使っているので……その」

麗子:「あぁ……そう、ですか……そうですよね……どうしよう……」

看護師A:「その事も含めて、一緒にゆっくりお話をしましょ?
と、とりあえずこちらに来てください。落ちたら危ないですから、ね? 笹木さん」

麗子:「さ、さ……き?
ふふっ……私は……ふふふっ……カシマ── (落ちる)」

看護師A:「っ!? 笹木さん!!!!!」

(ドン)

*********************

楓:「──って話、知ってる?」

逸希:「何それ! 怖っわ!!」

楓:「だろ? それでそれで!!」

逸希:「なに? まだ続きがあんの?」

楓:「……この話を聞くと、突然後ろから声をかけられて、質問されるんだってさ、その質問には──」

麗子:「──あの、すみません」

逸希:「ひゃあっ!?」

楓:「あ……あぁ……」

麗子:「その左腕と右足を、譲ってくれませんか?」

逸希:「き、ききき来たっ!! か、かかカエデ!! な、ななななんて応えたら──」

麗子:「腕と足を──よこせぇぇぇぇぇええええ!!!!!!!!!!」

逸希・楓:「う、うぎゃぁぁぁあああ!!!!!!!!」

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