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【声劇】オンネ-リネン(4人用)

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【登場人物】♂:♀=2:2

エラ(女) 14歳の女の子。オンネ-リネンの町長の娘。
ヨナ(男) 15歳の男の子。オンネ-リネンの外の町に住む。
ジーナ(女) インタビュー中は60歳。回想では40歳。
カイリー(男) 25歳。新米の記者。オンネ-リネンについて、ジーナに取材を申し込んだ。

【本編】

カイリー(N):「オンネ-リネン」は、世界一幸せな町と呼ばれている。その町から、ある日突然、町長の1人娘がいなくなった。このニュースは、またたく間に世界中を駆け巡った。そして、この町には批判が殺到した。「幸せな町で失踪者」、「オンネ-リネンの闇」…こんな見出しが各地の新聞に、ニュースに、躍(おど)った。この出来事がきっかけとなり、「オンネ-リネン」は衰退していった。

【ジーナの家】
カイリー:改めまして、カイリー・ジャスパーと言います。この度は取材に入ることを承諾(しょうだく)してくれて、ありがとうございます!

ジーナ:ジーナ・ルカーチです。よろしくお願いしますね。

カイリー:よろしくお願いします。


カイリー(N):私たちは今、経済部を中心として、ドキュメンタリー番組を作ろうとしている。題材は、今は無き幸せな町「オンネ-リネン」。

ジーナ(N):今から34年前に突如現われた「幸せな町」。住民には月に15万円の手当が与えられる。お年寄りや子どもを中心にした手厚い社会保障制度があって、いつもみんなが笑顔で暮らしていた…。


ジーナ(N):昔、私は記者として「オンネ-リネン」を取材していたわ。今はわけあってこの周辺の町に住んでいるの。

カイリー(N):「オンネ-リネン」の周りには、いくつかの町がある。そのうちの1つが、ルカーチさんの住む町だ。

カイリー:…では、はじめに…ルカーチさんは、どうして「オンネ-リネン」にいらっしゃったのですか?

ジーナ:…お手紙を受け取ったのよ。

カイリー:手紙、ですか?

ジーナ:ええ、ずーっと前、私の編集部宛てに「オンネ-リネンに来てください」って、かわいらしい字の手紙が来たの。

カイリー:へぇ…それで、足を向けられたんですね。

ジーナ:そう、手紙をもらう前から気になってはいたのよ。あの「幸せな町」ですもの。

カイリー:差出人は誰だったんですか?

ジーナ:それがね…挨拶と、「オンネ-リネンに来てください」っていう言葉だけで、名前は一切書いていなかったわ

カイリー:え…なんででしょうね


ジーナ:でも、今となっては、わかる気がするの
カイリー:…

ジーナ:失礼、お茶菓子を持ってくるわ…。

カイリー:あ、お、お気遣いなく…。

【ジーナが席を外している間、カイリーは部屋を見回す】


カイリー(N):大変失礼な話だが、あんまりきれいではな(咳払い)…おもむきのある内装だ…。天井には板が何枚も打ち付けられているし、壁にかかった写真は傾いている。スリッパは3足あった。しかし、どれも新しいものではない。床にはシミがいくつもあって、椅子は身じろぎするたびに、ギシギシと音を立てる…。


ジーナ:ありあわせで申し訳ないけれど…

カイリー:あ、い、いえ…ありがとうございます。


ジーナ:さて、本題をどうぞ?

カイリー:はい…ルカーチさん、「オンネ-リネン」は、どうしてなくなってしまったのですか?何が、あったんですか?

ジーナ:…長くなるわ、それでもいい?

カイリー:お願いします。

ジーナ:…20年前、私が40だった時ね…

【回想:20年前 取材1日目】

エラ:「オンネ-リネン」にようこそジーナさん!私はエラです。8年生です。

ジーナ:あら?あなたが案内してくれるの?

エラ:はい、大好きな町なので、私が案内します。これからよろしくお願いします!

ジーナ:こちらこそよろしくね。

エラ:はいっ!…ちなみにこちらにはいつごろまで?

ジーナ:2週間…いただこうかなって思っているの

エラ:宿はどうされるんですか?

ジーナ:うーん、まだ当てはないけれど…これから探すわ

エラ:あ!…じゃあ、私の家に来てください!

ジーナ:え?いいの?…いきなり申し訳ないわ

エラ:自慢じゃないけど、私の家広いんですよ!なんたって、お父さんが町長だもの!

ジーナ:ええっ!「オンネ-リネン」の、町長?

エラ:はいっ!

ジーナ:そしたら、えーっと…と、とりあえず許可とらなきゃ…
エラ:とってありますよ?

ジーナ:え?

エラ:お父さんにはもう話してあるの。ジーナさんが来るってお父さんに教えてもらったときに、家に泊まってもらいたいって言ったら、「いいよ」って…

ジーナ:て、展開が早いわね

エラ:住む場所が決まったほうが取材も楽でしょ!はい!決まり~

ジーナ:…

【庭園周辺を歩きながら】

エラ:…趣味は散歩することと、本を読むことです。

ジーナ:へぇ、どんな本を読むの?

エラ:えーっと、推理の話とか、冒険の話とかを読みます。

ジーナ:推理…シャーロックホームズとか?

エラ:はい!あと、冒険ものだったらコロンブスの伝記とか、ロビンソン・クルーソーとか!

ジーナ:詳しいのね

エラ:えへへっ、好きですから!

ジーナ:ふふっ…エラはいつもこの辺を散歩するの?

エラ:そうですね、この道沿いの花が一番きれいなので…

ジーナ:確かに、こんなにお花に囲まれて毎日幸せでしょう?

エラ:はい!とっても!

【回想終了】

ジーナ:っていう感じでね

カイリー:…エラさん、すごいな…肝(きも)がすわっている

ジーナ:ほんとに、今なかなかいないわよね、あんなしっかりした子

ジーナ:でもね、彼女たまに不思議な質問をしてくるの

カイリー:不思議な、質問?


【回想:取材3日目の夜】

ジーナ:ふーっ、待遇もいいし、お料理が毎日おいしくって感動だわ

エラ:ふふっ、そうでしょう!「オンネ-リネン」にいれば毎日ごちそうが食べられるんですよ

ジーナ:いいなあ、この町に生まれたらどんなに幸せだっただろうなぁ

エラ:ふふっ…


エラ:ねぇジーナさん、今のあなたは記者?それとも、1人の女の人?

ジーナ:え?…私は記者よ


エラ:…そっか…そうだよね

ジーナ:…?

【回想終了】


カイリー:…確かに、あなたは記者?って、当たり前ですよね

ジーナ:そうなの。でもそれ以来、彼女はその質問をしなくなったわ。気を悪くした訳では無いみたいだったの。

カイリー:なんの意図があったんでしょうね…

ジーナ:そうね…

ジーナ:でも、彼女とはすぐに仲良くなれたわ。すごく話題が豊富なのよ、学校での成績もいいし、よく気がつくし…初めは私の質問だけに答えていたことが多かったけど…次第に自分の気持ちを話してくれるようになったわ…


【取材7日目:夕方5時】

エラ:ジーナさん、今日はちょっと早めにご飯食べましょ

ジーナ:えぇ、どこか行きたいところでもあるの?

エラ:うん…友達に会いに…ジーナさんにも来てほしいの

ジーナ(N):エラは、何やらもじもじしている様子だった。私はエラのいう通り早めにご飯を頂き、散歩道に同行した。


エラ:…こっちです

ジーナ:?、いつもの道じゃないわね

エラ:そう…

【地下通路の入り口】

ジーナ:こ、ここは…?

エラ:入りますよ

ジーナ:え、ええ…

【地下通路 暗がりに二人の足音だけが響く】

エラ:…

ジーナ:…エラ?

【突然、エラが足を止める】

エラ:…いつか必ず見つけ出す

ジーナ:?

ヨナ:俺たちの、本当の、

エラ:幸せを

ヨナ:幸せを

ジーナ:えっ?

エラ:ヨナ!

ヨナ:エラ!

ジーナ:え?何、どういうこと…

ヨナ:エラ…その人は?(警戒している)

エラ:私が信頼している大人の人、記者のジーナさん


ヨナ:そっか…俺はヨナ。よろしくお願いします。

ジーナ:あ、うん、よろしく…

ヨナ:エラ、実はね…(ひそひそ話)

エラ:ん、わかった…何から何までありがとう

ヨナ:いいんだ

ジーナ:…?

ヨナ:ジーナさん…だっけ、出会ったばかりで申し訳ないけど…1つお願いがあるんだ。

ジーナ:…話を聞かせて?

ヨナ:「オンネ-リネン」の記事を書いてほしいんだ。

ジーナ:…はじめからそのつもりよ?

エラ:違うのジーナさん…「オンネ-リネン」の裏側の記事を書いてほしいの

ジーナ:裏側…?

ヨナ:「オンネ-リネン」の正体をあばいて、エラを町から連れ出したいんだ

ジーナ:!? エラを、連れ出す?どうして?

ヨナ:ジーナさん、あんた「オンネ-リネン」を無条件に幸せな町だって思ってるだろ?

ジーナ:…?

エラ:ぜんっぜんそんなことない。あんなとこもうこりごり…

ジーナ:え、だって…エラはこの町が好きだって

エラ:…あんなの演技に決まってるじゃない

ジーナ:っ…?

ヨナ:…エラは町長の娘だ。だから真っ先に人を出迎えて、笑顔を振りまいて…つらいときも悲しいときも、暗い顔なんて人前で見せちゃいけないんだ。

エラ:…私だけじゃない、この町の人みんな…暗い顔なんて見せたことないの!いろんな感情を押し殺して、幸せを演じないといけないの。


ジーナ:で、でも…「オンネ-リネン」を出たら幸せな生活は送れないんじゃないの?

エラ:…


ヨナ:俺もジーナさんみたいに思ったこともあったよ、でも…会うたびに疲れ果てていくエラを見てたら…

エラ:…わがままだってわかってる、みんなに迷惑かけてるってわかってるよ…でも、どうしても逃げたいんだよ!

ジーナ:…

ヨナ:俺は、エラを助けたい!…こいつにとって「オンネ-リネン」は幸せな町じゃない!…泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑えるのが、幸せなんじゃないかって思うんだ!

ジーナ:っ…

ヨナ:…お礼に関しては安心して欲しい。…聞いたことあるよ、記事が売れたらたくさんお金が入ってくるんだろ?だからジャーナリストは売れそうな話題に飛びつく。「幸せな町」の正体をあばく…売れるニュースだと思う!

ヨナ:…悪くない取引だと思うんだ、どうかな。

エラ:ジーナさんお願い!私は、ヨナの町で暮らしたい。こんな「幸せな町」なんか、とっととおさらばしたいのよ…

ジーナ:…

【回想終了】

ジーナ:びっくりでしょう?

カイリー:はい…

ジーナ:エラが弱音を吐くところなんて見たことなかった。町の顔として、ずっと、ずっと…エラは演技をしていたんだって…

カイリー:じゃあ、エラさんは、ずっと…逃げたくて

ジーナ:そう…エラが文字を書くところを見たのだけれど、速くてきれいな字なの…。日記に機密情報を書き写して、ヨナのところに持っていくんですって

カイリー:え…

ジーナ:いつも同じコースを散歩するのは、抜け道がふさがれていないか見張るためだった

カイリー:…よくそんなことを

ジーナ:けなげでしょう?…だから私ね、この子たちを助けたいって思ったのよ。とびっきり刺激的な記事を書いてね。「オンネ-リネン」の秘密をあばいて、エラを助けたいんだって…。そのときから、あの2人に手を貸すようになったわ



【回想:地下通路にて資料を読む3人】

ヨナ:「オンネ-リネン」が国家プロジェクトになったのは、今から14年前…。住人は各地からランダムに選ばれた…

エラ:…ジーナさん、これどういう意味?

ジーナ:財政破綻(ざいせいはたん)…国にお金がなくなったってことよ。

ヨナ:え?…そんなことがあったのか?

ジーナ:そう…あなたたちの国は、外国からの借金を返すことができなくて信用を失った時期があったの。

エラ:え、じゃあ…

ヨナ:たしかに母さんも言っていた

ヨナ:なんで「オンネ-リネン」のみんなは幸せなのに俺たちの町は違うんだって、気まぐれに聞いちまったことがある…

ジーナ:…

ヨナ:そのとき、母さんがうつむきながら「この国が貧しいから」って

エラ:…でもさ!国にお金がないのに、どうして「オンネ-リネン」を作ったの?町を1から作る方がよっぽどお金がかかるはずなのに!

ジーナ:…国にお金がないということは、手っ取り早くお金を稼げる産業が必要ってことになるわ、だから…


エラ:…


ヨナ:…はっ!情報…?

エラ:情報?

ジーナ:…ヨナ、続けて

ヨナ:たぶんだけど…「幸せな町」というソフトを作って世界に発信するんだ。そして真似をしたいという外国から、ソフトの使用料という形でお金を得る…

エラ:…っ!?

【回想終了】

カイリー:…私たちが調べた限りでは、「オンネ-リネン」はベーシックインカムの実験町(じっけんちょう)だったと

ジーナ:そう、町のみんなにお金を配って働かなくても生活ができるようにしたのよ

カイリー:いくつかの国や地域で実践されていましたが、ここが一番上手くいったって…

ジーナ:たしかに上手くいったの。生活に不安がないから、働きたい大人たちは安心して働けるようになった。教育にお金をかけられるようになって、子どもの学力は上がった…

ジーナ:でもね…

【回想開始:地下通路にて】
ヨナ:じゃあ…俺たちは「オンネ-リネン」がないと生きていけないんだ。

ジーナ:…それは、どういうこと?

エラ:たしかに、この国の商品は「オンネ-リネン」だけになるね。作物なんかほとんどとれないし、外国に売れるぐらいの食料は作れない。

ヨナ:だから情報を売るんだ。「幸せな町」のモデルを作って外国に売る…そしたら、町づくりのモデルにしたいっていう外国の人たちと取引ができる。

エラ:きっとそうだよ!「オンネ-リネン」は、そうやって外国のお金を集めてきたんだ!


ジーナ:…町を、売る?

ヨナ:そう

ジーナ:どうやって?

エラ:例えば、今のジーナさんみたいに外国から記者を呼ぶの。そして、その人たちの前で幸せな生活を演じるの。そしたらみんな「ここの人たちは幸せ者だな」って思うでしょ…

【回想終了】
ジーナ:ジャスパーさん、なんでベーシックインカムの政策が上手くいかないかわかる?

カイリー:…国や自治体に予算がないから、ですよね?

ジーナ:それもそう。でももう一つ理由があるの

ジーナ:例えば、この国は食料が乏しい。少ない食料を売るときお店の人ならどうする?

カイリー:…そのままの値段で売るともうけが出ないので…食料の値段を上げます。

ジーナ:その通りよ。物の値段が上がったらいくらみんなにお金を配っても意味がない。

カイリー:…みんなにお金を配るということは、みんなが平等にお金持ちになるってことですからね

ジーナ:そう、だからこの国は、限られた住人しかいない小さな町「オンネ-リネン」を作った。「オンネ-リネン」は食料とか生活に必要なものを、周辺の町から調達するようになったのよ。

カイリー:…では「オンネ-リネン」からは何を渡すんです?

ジーナ:莫大なお金。「幸せな町」のソフトの使用料として入るお金を、ほかの町に出しているの。

カイリー:じゃあ、周辺の町は「オンネ-リネン」に逆らえない…逆らったら、お金をもらえない。…でも、物資がないと「オンネ-リネン」も危ないんじゃないんですか?

ジーナ:「オンネ-リネン」に住める人は限られている。だから、内部で食料をまかなうことはできるのよ。

カイリー:…なんて構造の町なんだ


エラ(N):「オンネ-リネン」には、いいところがたくさんある。衣食住が確保されていて、お金があって、みんなが教育を受けられて…みんな仲が良くて、子どももお年寄りも大切にされる。…でも、それには

ヨナ(N):…莫大な犠牲が必要なんだ。俺の町からは、食料の半分が「オンネ-リネン」に流れている。食料だけじゃない、生活に必要なものが全部。…こっちにだって暮らしてる人間がいるのに。食べ物がない人だっているのに。


エラ(N):ある日お父さんの部屋に入ったとき、分厚い資料があったの…いやな予感がした。読みたい、どうしても読みたい…この世界の秘密が知りたい… これを読むにはどうしたらいい?どんな文字を勉強すればいい?辞書の引き方、計算の仕方…全部、知りたいの!


エラ(N):私は「オンネ-リネン」から逃げてやる!自分に正直に生きてやる!それに、人につらい思いさせてまで、自分が幸せになんてなれっこないんだから!

ヨナ(N):俺はエラを「オンネ-リネン」から連れ出したかった。…でも、俺の力だけじゃ足りない。理解がある大人が必要だった。だから、手紙を出そうと思った。ふつうの大人ではだめだ、世の中のおかしいところを指摘してくれる大人が多い職業は…


ジーナ(N):それで私に手紙をくれたってわけね…

【取材10日目 夜】
【エラの部屋に入ると、エラはベッドに寝そべり、暫くごろごろしていた】

ジーナ:どうしたの?

エラ:なんか、今日は疲れちゃって…

ジーナ:…

エラ:ジーナさん…今のあなたは記者?それとも、1人の女の人?

ジーナ:……後者よ

エラ:女の…人…


エラ:……う、うぅ(泣きだす)ジーナ:!?

エラ:うぅう…ぐすっ


ジーナ:…おいで、エラ

エラ:ひっく、…うん


【エラはジーナの胸に飛び込んだ】


ジーナ:エラ…いいよ、もう、我慢しなくていいんだよ!

エラ:うぅううぅぅっ

【回想】

ヨナ:俺は、エラを助けたい!

ヨナ:…泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑えるのが、幸せなんじゃないかって思うんだ!

【回想終了】

ジーナ:エラ…私、頑張って書くわ。あなたたちが心から笑えない、心から泣けないこの世界が間違っている。

ジーナ:絶対にあなたを助ける!町を出ましょう!

エラ:…っ、ジーナさん…ぐすっ、ありがとう…

【取材13日目】

エラ(N):数日前からお父さんには「クラスの友だちのうちに泊まりに行く」って言った。ケータイにあった友達の写真を見せて信用させた。それに「オンネ-リネン」には良い人しかいないから大丈夫でしょうって念を押した。

エラ(N):…お父さんは「行ってらっしゃい、終わったら早めに帰ってくるんだぞ」って。

エラ(N):…残念、みんな、さよなら


【取材14日目】

ジーナ:みなさん…2週間ありがとうございました

ジーナ(N):私は町長たちに見送られて、自分の国に帰ることにした。

エラ:ジーナさん、お見送りに行きます!

ジーナ:えぇ、ありがとう!

エラ(N):友達の家に行くついでに、ジーナさんを見送りに行くというシナリオ。

ジーナ(N):自分の国に帰る…という名目で、エラをヨナのところに送り届ける。

エラ(N):今日しかないんだ

【地下通路】

エラ:…いつか必ず見つけ出す

ヨナ:俺たちの、本当の、

エラ:幸せを

ヨナ:幸せを



ヨナ:よしっ!準備はいいか?

エラ:うんっ!

ジーナ:ええ!

【3人は地下通路を走って、走って…走り続けた】

エラ:はぁっ、はぁっ

ヨナ:エラ、手を…

エラ:うん!

ジーナ:もう少しよっ、頑張って!

ヨナ:ああ、出るぞ!みんな!——

【地下通路を出ると、そこは——】

ジーナ:はぁっ…こ、ここが、ヨナの町?

ヨナ:ああ…だいぶ汚ねぇけどいいところだよ

エラ:すぅーーっ(息を吸う)

ヨナ:エラ?

エラ:「オンネ-リネン」の、バカヤローーーー!!

ジーナ:エラっ!声が大きい、しー!

ヨナ:…っははは!違いねえ!ここなら好きなだけ叫べるぜ、なぁ?

エラ:泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑うのが、幸せなんだぁーーー!!

ジーナ:っ…エラ…


ヨナ:…エラ、ジーナさん、ひとまず俺の家に来てくれ。食べ物はそんなにないけどきっと暮らせるし…それに、住む場所が決まったほうが楽だろう?

ジーナ:…ふふっ、エラと同じこと言うのね

ジーナ(N):幸せな町に別れを告げ、私たちはヨナの町に移り住んだ。私は、記事を書いていろいろなところに持っていった。地域の新聞社、テレビ局、時には国境も越えて…とにかく広めよう、2人のためにって…

【回想終了】

カイリー:「オンネ-リネン」を出たあとは、どうされたんですか?

ジーナ:しばらくはヨナのお家に泊まらせてもらっていたの、でも彼のお母様が病気で亡くなってしまって…悪いことしたわ

ジーナ:それからは仕事をしながら町を転々として、ようやく落ち着いたの。生活は楽じゃないわ、見てのとおり食べ物は少ないし家はボロボロだし…でもね


カイリー:…?


ジーナ:…楽ではないことと不幸とは違うのよ



【ジーナはお茶をひと口すする】
【カイリーも真似をしてお茶を飲む】

カイリー:…あの、エラさんとヨナさんとは連絡を取っていらっしゃるんですか?

ジーナ:ふふ、今はね…

【家の鍵が開く音】

ジーナ:ん?ちょうどいいわ…

カイリー:えっ?

ヨナ:ジーナ!…と、こんにちは

エラ:あっ、はじめまして

カイリー:も、もしかして…

ジーナ:そう、一緒に暮らすことにしたの!私が家を借りて、畑で少しばかり野菜を育てて…つつましいけれどね

ヨナ:もしかして、今日取材に来てくれるっていう…ジャスパーさん?

エラ:ようこそ!私はエラ、こちらはヨナです。

ジーナ:ふふっ…相変わらず元気でしょう?

カイリー:そうですね…お話頂いたとおり、生きる力の強い方々だ

エラ:ジーナったら、どんな話したのよ(笑いながら)

ジーナ:昔の話よ、「オンネ-リネン」の…

エラ:あーいやだいやだっ!それ以上言わないで

ヨナ:ははっ!…まあまあ…あ!ジャスパーさんもご飯食べていきますか?

カイリー:え、あ、その…私はこれで、ありがとうございました!

ジーナ:ふふっ、いえいえ、いいんですよ

カイリー:…あ、すみません、最後に一つだけいいですか…?

ジーナ:ええ、

カイリー:エラさん、今は…幸せですか?

エラ:はい!間違いなく、幸せです!

ヨナ:そうだな!

ジーナ:ふふっ…そうね!

カイリー:…っ

カイリー(N):「オンネ-リネン」は、世界一幸せな町と呼ばれていた。その幸せな町から、ある日突然、町長の1人娘がいなくなった。このニュースはまたたく間に世界中を駆け巡り、町には批判が殺到した。「幸せな町で失踪者」「オンネ-リネンの闇」…こんな見出しが各地の新聞に、ニュースに、躍った。でも…皮肉にも

カイリー:「幸せな町」を出た女の子は、とても、幸せそうだった…

おわり

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