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1日15分の免疫学(114)自己免疫と移植⑦

T細胞と自己免疫について

本「T細胞は2つの経路で自己免疫に関与する。1つはB細胞を補助Helpして抗体を産生させる、もう1つは標的組織に浸潤して直接的な組織破壊をする」
大林「つまりはCD4T細胞CD8T細胞かな?」
◆復習メモ
T細胞自己非自己を認識できる免疫細胞。胸腺Thymusで成熟するためT細胞と呼ばれる。T細胞受容体(TCR:T cell receptor)をもつ。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞Treg:Regulatory T cellに分かれる):B細胞などを補助helpして活性化し、免疫応答を誘導する。適応免疫の司令塔。
CD8陽性T細胞細胞傷害性T細胞=キラーT細胞):標的細胞に接触して直接傷害する(細胞死に誘導する)。
CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。

多発性硬化症について

本「多発性硬化症は、中枢神経系ミエリン抗原に対する破壊的な免疫応答によって起きるT細胞依存的な神経疾患」
大阪医科大学「髄鞘(ミエリン鞘)とは神経細胞の軸索のまわりを幾重にも包み込む、脂質に富んだ膜構造のこと。 中枢神経系ではオリゴデンドロサイト、末梢神経系ではシュワン細胞がつくっています」

大林「多発性硬化症……名前からして、何かが硬くなりそう」
本「中枢神経の白質に硬い病変(プラーク)が形成される」
大林「ほぉ」
本「通常は神経軸索を被覆しているミエリン軸消滅して、その周囲の血管にリンパ球やマクロファージが浸潤して炎症を起こす」
大林「神経で起きる炎症って怖いな」
本「筋力低下、不随意運動、視力障害、四肢麻痺などの様々な神経症状を発症する」
大林「うわぉ…」

本「通常、リンパ球は血液脳関門を超えることはない」
大林「だよね、脳内での守り手はミクログリアだし」
本「血液脳関門が破綻すると、α4β1インテグリンを発現するミエリン抗原特異的なCD4T細胞が、活性化した血管内皮細胞接着因子VCAMに結合して血管外へ遊走する」
大林「ああー!ヘルパーT細胞が血管を出て組織に入り込んでしまう!」
本「そしてそこで、同じく浸潤してきたマクロファージあるいは中枢神経系に局在するマクロファージ様貪食細胞ミクログリア上のMHCクラスⅡに提示された特異的自己抗原に再び遭遇する」
◆復習メモ
T細胞はMHC分子抗原ペプチド複合体を認識するので、MHC分子が発現していない対象(例:赤血球)には反応しない。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘルパーT細胞や制御性T細胞に分化する)、MHCクラスⅡ分子を認識する。
CD8を発現するT細胞はCD8T細胞とも呼ばれ(細胞傷害性T細胞に分化する)、MHCクラスⅠ分子を認識する。

大林「ああああ!出会ってしまった!相互作用で活性化しちゃう!お互いに!燃え上がってしまう!」
本「そう、炎症により血管透過性亢進する」
大林「血管の隙間が拡がることで他のエフェクターがたくさんきちゃう!」
本「エフェクターT細胞のサイトカインやケモカインによって骨髄系細胞が動員され、活性化されて炎症反応が進み、T細胞、B細胞、自然免疫系細胞がさらに動員され、自己反応性B細胞はT細胞のヘルプを得てミエリン抗原に対する自己抗体をつくる」
大林「あーあーあー!」
本「一連の反応により、脱髄が起こり、神経機能障害される」
大林「脱髄って何?」
日本赤十字「脱髄というのは脳や脊髄、視神経といった神経系の神経線維を包む髄鞘の部分に対する炎症のこと

本「ほとんどの多発性硬化症の患者は、急性発作(再発)と数ヶ月または数年続く症状の軽減(緩解)を繰り返す」
大林「再発と緩解の繰り返しか。自己免疫疾患で時々ある特徴だよね。どうしてそうなるの?免疫が正常化しようとしてまた破綻するの?」
本「どのように緩解するのか、何が引き金で再発するのかは不明」
大林「そうなのか…」

本「最終的にほとんどの多発性硬化症患者は数十年かけてニ次進行型多発性硬化症に進む」
大林「それは……更なる悪化なんでしょうね」
本「緩解ステージがなくなり、神経機能の継続した低下が起きる。適応免疫を標的とする治療の効果はなくなる」
大林「なんで?」
本「不明。ただ、再発と緩解を繰り返すことで中枢神経系の再生能力がなくなり慢性神経変性に至るのではないかと。また、長期間の疾患で免疫細胞と活性化ミクログリアが血液脳関門の内側に留まり神経損傷を続けているのかもしれない」
大林「おぉ……」

関節リウマチについて

本「関節リウマチrheumatoid arthritisは、滑膜の炎症を特徴とする慢性疾患」
大林「関節が動きにくくなるんだよね…ということは滑膜というのは、関節の滑りをよくする膜かな?」
WEB「滑膜とは、関節包を覆っている薄い膜状の組織。 滑膜は滑液を作り出し、滑液は関節包の中で 潤滑油の役目を果たす」


本「炎症した滑膜が軟骨を侵食して骨びらん性変化し、慢性の痛みと関節機能の低下と障害につながる」
大林「関節リウマチの原因は、リウマチ因子だっけ?」
本「抗IgG自己抗体がリュウマチ因子と考えられていたが、リュウマチ患者でも陰性だったり健常人でも陽性だったりした」
大林「そうなんだ、じゃあ、別の機構が絡んでる?」
本「関節リウマチが特別なMHCクラスⅡ分子のHLA-DR遺伝子と関連している」
大林「つまりはT細胞絡みかぁ」
本「少なくとも関節リウマチ初期段階では、自己反応性Th17細胞が活性化し、そのサイトカインで好中球、単球、マクロファージを動員する。それらが内皮細胞や滑膜線維芽細胞とともに活性化して炎症性サイトカインを作り、最終的に組織破壊原因と考えられるマトリクスメタロプロテアーゼをつくるようになる」
大林「出た~!マトリックスメタロプロテアーゼ!」

人体の物語「Being」のおまけ漫画


本「関節リウマチがどのように発症するかわかっていないが、モデルマウスからT細胞とB細胞の両方が必要であると示されている」
大林「やっぱり適応免疫だねぇ」

本「関節リウマチの自己抗体の研究で、自己免疫疾患で自己蛋白質どのように異物として認識されるのかについてより一般的な1つの機序が同定された」
大林「どんなの?」
本「炎症に伴い、アルギニン残基シトルリン残基変換されることで自己蛋白質の構造が変化して、免疫系が非自己と認識してしまう」
大林「えぇと……ちょっと待って」

残基:蛋白質・核酸・多糖類などの重合体を構成している単量体。 多数のアミノ酸がペプチド結合したたんぱく質の分子上で、もとのアミノ酸にあたる部分をアミノ酸残基という。
アルギニン:アミノ酸の一種
シトルリン:アミノ酸の一種
シトルリン化:塩基性アミノ酸であるアルギニンが中性アミノ酸である シトルリンに酵素的に修飾されること

本「抗シトルリン化蛋白質抗体(ACPA:anti-citrullinated protein/peptide antibody)を検出すれば、関節リウマチを特異的に診断できる。ちなみに関節リウマチ発症の最重要環境由来の危険因子とされている喫煙が、HLAリスク対立遺伝子をもつ患者でACPAと関連していることがわかった」
大林「喫煙って関節リウマチの環境因子だったのか、知らなかった」

本「関節リウマチでの寛容破綻機構は、自己免疫につながる遺伝因子環境因子相互作用における重要な結説点」
大林「相互作用かぁ」
本「他の自己免疫疾患でも、末梢で自己蛋白質翻訳後修飾(酸化、糖鎖付加)を受けることによってT細胞B細胞活性化されることがわかった」
大林「つまり自己蛋白質が変化することで、リンパ球に刺激を与える構造になっちゃった、ということか」

本「自己免疫疾患は、遺伝的要因と環境要因がともに免疫寛容機構を破綻させて引き起こす疾患」
大林「複数の要因が絡み合ってるわけだ…」
本「一部の人々は自己免疫疾患を発症する遺伝的素因を持っている」
大林「遺伝されちゃうのね」
本「NODマウスでは、糖尿病を発症する強い傾向を示し、発症は雌マウスの方が速い」
大林「ノッドマウス?」
本「ヌードマウスだよ」
大林「おぉ、知ってる!人為的に免疫機能をなくした実験用マウスだよね!毛が生えてないやつ!」

本「いくつかの疾患では大きな性差がある」
大林「自己免疫疾患で女性の方が多いって言うよね、ループスは女性に多いって本で読んだ」
本「そうだね、全身性エリテマトーデスと多発性硬化症は女性に多い」
大林「なんで?染色体絡み?女性はXXだから?」
本「まだはっきりとはわかっていないよ」

本「1型糖尿病などのいくつかの自己免疫疾患は家族内に発症することから、遺伝的感受性の役割が示唆される」
大林「一卵性双生児は同じ疾患発症する確率が高いっていうよね」

今回はここまで!
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