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1日10分の免疫学(66)自己免疫疾患②

分子内エピトープ拡大について

本「尋常性天疱瘡とその軽症型である落葉性天疱瘡がある。これらは皮膚の水泡が特徴の自己免疫疾患で、後者はブラジルの一部の地方の風土病である」
大林「…天疱瘡…てんぽうそう?」
本「この病気の原因はデスモグレインに特異的なIgGで、抗体反応特定パターンで変化する
大林「ん?抗体反応が変化とは?」
本「当初、ある抗原分子の一部分のエピトープに対する免疫応答が、その後に同一分子内他の交差反応性のないエピトープにも進展することを分子内エピトープ拡大intramolecular epitope spreadingと呼ぶ」
大林「エピトープ……えぇと、たしか」
Wiki「エピトープ (epitope) は、抗体が認識する抗原の一部分のこと。 抗体は病原微生物や高分子物質などと結合する際、その全体を認識するわけではなく、抗原の比較的小さな一部分のみを認識して結合する」

大林「思い出した」

本「落葉状天疱瘡の抗体反応は、B細胞エピトープの分子拡大により起こる」
大林「えぇと、その分子内エピトープ拡大が起こることで抗デスモグレイン抗体が作られるわけね」

本「分子内エピトープ拡大は、自己免疫疾患におけるT細胞でも起こる
大林「へぇえ」
本「多くは、自己ペプチド充分にMHC分子に提示されていないために、免疫系が寛容になっていないから起こる。これらは感染や炎症の時にのみ現れることから潜在性エピトープcryptic epitopeと呼ばれる」
大林「うーん…よくわからん。自己ペプチドの提示による試験が不十分だった…ということ?自己ペプチドに反応するT細胞をきちんと排除できず、これにより、自己に対して寛容な免疫系が整ってないということ?」

本は答えない!でもたぶんそういうことだろうと思う。

分子間エピトープ拡大について

本「全身性自己免疫疾患では分子間エピトープ拡大が生じる」
大林「おぅおぅ、どんどん話が難しくなってきたな?!」
本「全身性エリテマトーデス(SLE)は、様々な自己抗原に特異的なIgGによる自己免疫疾患である。自己抗原として、細胞表面、細胞質、核酸、核タンパク質粒子などの核成分が含まれる」
大林「うわ、抗体のターゲット(抗原)がめちゃめちゃ多い……それじゃほとんどの細胞が抗原として認識されるでしょ、本当に全身への攻撃じゃん。さすが全身性エリテマトーデス」
本「SLEでは、分子内エピトープ拡大も、分子間エピトープ拡大も起こる」
大林「分子内の次は分子間かぁ」

本「分子間エピトープ拡大intermolecular epitope spreadingでは、自己抗原になる細胞成分の数が増加していく
大林「つまり抗体の標的が増えていく…攻撃範囲が広くなっていく…すごい怖いんですけど」
本「自己抗体によって死につつある細胞が放出する粒子もまた標的になりうる」

静注用免疫グロブリン製剤による治療

本「抗体を作れない先天性免疫不全症の患者に静注用免疫グロブリン製剤intravenous immunoglobulin:IVIGで治療するって話は覚えてる?」
大林「うん」
本「IVIGは自己免疫疾患の治療にも使える」
大林「え?なんで?抗体を追加して何が起こるのさ?」
本「IVIGにより、すべてのFcγ受容体のIgG結合部位を満たすとどうなる?」
大林「えぇと……Fcって、抗体のY字部分の下半分のことだよね。下半分は細胞上のFc受容体と結合して、上半分は抗原と結合する。なるほど、自己抗原に特異的な自己抗体がFcに結合する前に他の抗体が結合してしまえばいいってことか!」

本「あと、IVIGによる循環血中のIgGの異常高値で、通常免疫グロブリンの産生を抑制することができる」
大林「へぇ~循環血中の抗体が多いと追加生産が抑制されるのか」

本「また、IVIGには6万人以上の血液ドナーからの膨大な種類の抗体が含まれており、その中に自己免疫抑制に働く抗体も含まれ得る」
大林「そんなラッキーなことあるの?!」
本「他の免疫グロブリンの抗原結合部位に結合する抗体は、抗イディオタイプ抗体anti-idiotypic antibodyと呼ばれる」
大林「へぇ、そんな抗体があるのか」

SLEはリウマチ性疾患の1つである

本「SLEはリウマチ性疾患の1つである」
大林「リウマチといえば近所のご老体が、歳をとったらあちこち痛くなる、強ばるって言ってたあれですな……まさか自己免疫だったとは。基礎免疫学の本を読み始めるまで知らなかった。加齢で体が故障するのかなって思ってた」
本「関節リウマチrheumatoid arthritisはリウマチ性疾患の中で最も頻度が高い
大林「これも女性の罹患率が高い?」
本「男性の三倍。20-40歳で発症し、慢性および発作性の関節の炎症が起こる」
大林「あれ、思ったより発症年齢が若い!?」

本「関節リウマチの患者の約8割で、ヒトIgGのfc領域に対するIgM,IgG,IgAが作られていて、これらはリウマチ因子rheumatoid factorと名付けられている」
大林「fc領域……抗体のY字の下半分にIgM,IgG,IgAが結合するのか……抗体が抗体にくっつく……あ、これがさっき言ってた抗イディオタイプ抗体anti-idiotypic antibody?」
WEB「抗イディオタイプ抗体とは、抗体分子の抗原認識領域(CDR; Complementarity determining Region, 相補性決定領域)を認識する抗体のこと」
大林「わかるけどわかりにくいなぁ……同じ単語がくるくるしてる」

本「関節炎を起こしている滑膜には白血球が浸潤している」


大林「白血球……具体的には?」
本「好中球、マクロファージ、CD4T細胞、CD8T細胞、B細胞、リンパ芽球、リウマチ因子をつくる形質細胞

◆復習メモ
B細胞は、樹状細胞による抗原提示と活性化の後、同一の抗原に特異的なCD4T細胞によって活性化とクラススイッチを補助helpされることで、抗体産生細胞である形質細胞へと変化します。


大林「うわぁ…炎症起こして、活性化し合って、関節が攻撃されまくりだ……」
本「関節リウマチ慢性、有痛性、衰弱性の病気である」
大林「治らない、悪化する、ってイメージが確かにある」
本「治療にはリツキシマブも用いられる」

大林「おっ、聞いたことあるぞリツキシマブ!どうなるんです?」
本「リツキシマブは抗CD20単クローン抗体であり、この抗体がB細胞に結合するとNK細胞の標的となり、B細胞が98%減少し、5割の患者で症状の著明な改善、3割でもある程度の効果が認められる」
大林「おぉ…すごい…B細胞がNK細胞に殺傷される地獄だけど。分子標的薬ってつまりは、分子レベルで標的を定めてる薬って理解でいいのかな?」
中外製薬「病気の原因となっているタンパク質などの特定の分子にだけ作用するように設計された治療薬のことです」

大林「ふむふむ。抗CD20単クローン抗体って名称は、細胞表面タンパク質のCD20に対するモノクローナル抗体ってことだよね。このモノクローナル抗体っていうのが何度も免疫学で登場してるけど、まだイマイチわからん……」
Wiki「モノクローナル抗体とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体、あるいは抗体分子である。通常の抗体(ポリクローナル抗体)は抗原で免疫した動物の血清から調製するため、いろいろな抗体分子種の混合物となるが、モノクローナル抗体は抗体分子種が均一である。抗原は複数のエピトープ(抗原決定基)を持つことが多く、ポリクローナル抗体は各々のエピトープに対する抗体の混合物となるため、厳密には抗原特異性が互いに異なる抗体分子が含まれている。これに対し、モノクローナル抗体では用いる抗原のエピトープが単一であるため、抗原特異性も単一である。」

大林「今まで何度か読んできたWikiのページがわかるようになってる!エピトープと自己免疫疾患について少し学習したことで、モノクローナル抗体のイメージが具体的になった!なるほど!ピンポイント攻撃するのに、モノクローナル抗体の方が安定してるってことか」

今回はここまで!


細胞の世界をファンタジー漫画で描いています↓


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