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1日15分の免疫学(68)自然免疫と適応免疫⑨

CD8T細胞はCD4T細胞の補助なしで活性化しうる

本「病原体に対するCD8T細胞の最初の応答は、CD4T細胞の補助がなくても起きる」
大林「樹状細胞による活性化だけでいけるんだよね、大体は」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhなどがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる
>>Th2:液性免疫にかかわる
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞:T follicular helper):B細胞の形質細胞への分化を促す。
>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する
CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「CD8T細胞応答の多くは、CD4T細胞が樹状細胞を補助(help)して、その樹状細胞による活性化で導かれる(抗原提示細胞に対するライセシング)」

樹状細胞によるライセシングについてはこちら↓

大林「CD4T細胞が、樹状細胞にB7分子の発現誘導するやつね」
本「そう。CD4T細胞による樹状細胞の活性化には、B7分子、CD40、4-1BBLといった補助刺激分子の発現誘導が含まれ、これらの分子を介したシグナルによってCD8T細胞完全に活性化する」
大林「ふむふむ」

本「この資格付与の機構によって、抗原はCD4T細胞とCD8T細胞の両方に認識されなければならない」
大林「なるほど、誤作動(自己免疫)を防ぐ仕組みってことか。CD4T細胞とCD8T細胞の両方に認識されて初めて適応免疫応答が発動する……片方が異常…誤認しても、もう片方が正常ならストッパーになる」
本「そう。このような二重の認識システムは抗体産生におけるT細胞とB細胞にも見られる」
大林「適応免疫は強力だから誤作動防止も厳しく作られてるわけだ、うまくできてる」

本「しかし全てのCD8T応答が補助を要する訳ではない」
大林「突然、というかようやく本題に」
本「細胞内グラム陽性細菌のリステリアや、グラム陰性菌の類鼻疽菌などは、樹状細胞に資格付与を直接行っている」
大林「資格付与…ライセシングか」
本「活性化した樹状細胞はIL-12,IL-18を産生して、この二つのサイトカインによりCD8T細胞ら速やかにIFN-γを産生する」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

大林「IFN-γ?CD8T細胞もマクロファージを活性化するってこと?」

※↑訂正「ラングハンス巨細胞」です

本「結果的にね。特異的にではないけど。感染初期におけるIFN-γ産生はNK細胞とCD8T細胞によるものと考えられている」
大林「おぉ、キラーブラザーズ。CD4T細胞の存在感ん~」

本「CD4T細胞がいなくてもCD8T細胞の病原体特異的な応答は起こるけどメモリーはCD4T細胞の補助がないと減弱するよ」
大林「やはりCD4T細胞は必要!」

適応免疫応答により感染が駆逐された後は…

本「適応免疫機構によって感染が駆逐されると二つの現象が起こる」
大林「駆逐ゥ!」
本「まず、病原体が失われ、次にほとんどのT細胞が『無視による死death by neglect』を起こしてアポトーシスで除去される」
大林「言い方!!!!!せっかくT細胞が病原体を排除してくれたのにィ!なんで死んじゃうの……」
本「抗原がなくなると、抗原刺激によって産生されていたIL-2などの生存性サイトカインがなくなるのと…」
大林「あぁ~なるほどね」
本「これらのサイトカインのレセプターが失われることによる」
大林「T細胞は自ら生存を受けとるレセプター手放すの?!せつない……」
本「でもリンパ球がアポトーシスの機能を失うと自己免疫性リンパ増殖症候群autoimmune lymphoproliferative syndrome:ALPSを引き起こすよ」

大林「それは困る!」
本「そして死につつあるT細胞は、細胞表面にある膜脂質ホスファチジルセリン認識した貪食細胞が速やかに取り除く」
大林「推しが食われる~~~~!」
本「ホスファチジルセリンは通常、細胞膜の内側にのみ存在するが、アポトーシスを起こした細胞では急速に外側に移動する」
大林「おぉ……推しが死ぬ……」
本「一部は生き残るよ」
大林「メモリーですね!」

免疫記憶について

本「記憶応答は抗原に曝露された回数に応じ、二次免疫応答、三次免疫応答などと呼ばれ、これらは一次免疫応答とは質的に異なる
大林「まぁもう準備できてるもんね」
本「そう、抗体は際立って抗原への親和性が高い。メモリーT細胞もナイーブやエフェクターの応答とは質的に異なる」
大林「適応免疫の真髄ですよね~」
本「免疫記憶の機構が明らかになったのはここ30年ほどのこと」
大林「そんなに最近なの?!あ、存在はわかってたけど機構がわからなかったということか」

本「天然痘予防のためのワクシニアウイルス接種を受けると、その効果は75年経過しても特異的なCD4T細胞とCD8T細胞の強い応答が見られる。天然痘は1978年に撲滅したので、天然痘ウイルスの刺激を受けて免疫記憶が持続したのではない」
大林「あ、それ!気になってたんだよ!病原体によって免疫記憶の期間の長短ありすぎじゃない?追加接種が必要なものから、一度で十分なものまであるの何でなの???」
本「免疫記憶を維持するのにウイルス感染を繰り返し受ける必要はなく、最初に病原体に曝露された際に誘導された長寿命の抗原特異的リンパ球生き残ることで維持されている」
大林「ほぉ、で、その寿命期間の差異の理由は?」
本「ほとんどのメモリー細胞は休眠状態で少数が常に分裂している」
大林「ふむふむ」
本「このメモリー細胞の更新はIL-7,IL-15などにより維持されていると考えられていて、メモリー細胞の数は厳密に制御されている」
大林「ほうほう」

メモリーB細胞について

本「メモリーB細胞は血中を循環して脾臓やリンパ節に定着する」
大林「待って、長短の理由は?説明なしかい!」
本は答えない!!!

本「一次抗体応答では最初に急速にIgMが作られ、少し遅れてクラススイッチしてIgG応答が起こる。二次抗体応答では最初の数日間で比較的少量のIgM大量のIgGに加えてIgEとIgAもいくらか作られる」



大林「二次応答なら既にクラススイッチを経たメモリーB細胞がいるもんな」
本「メモリーB細胞は、ナイーブB細胞よりMHCクラスⅡ分子と補助刺激リガンドB7.1を高発現しているので、効率よく抗原をとりこんでTfh細胞に提示し、B7.1レセプターであるCD28を介してTfh細胞を活性化できる」
大林「なるほどB細胞競争において有利なわけだ」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります


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