見出し画像

1日15分の免疫学(64)自然免疫と適応免疫⑤

本「一型応答は、マクロファージの中で生存できるタイプの病原体を根絶するのに重要な役割を担っている」
大林「Th1細胞が感染したマクロファージを活性化するもんね」
本「Th1応答は、ウイルス感染細胞を認識して破壊する細胞傷害性CD8T細胞を補助helpする。また、一型応答の過程で分化したTfh細胞IgGの産生を誘導する」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる
>>Th2:液性免疫にかかわる
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞:T follicular helper:B細胞の形質細胞への分化を促す。>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する
CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

大林「マクロファージは活性化されなくても病原体を破壊できるんだよね」
本「そう。でも一部の病原体がマクロファージの中で身を隠し、抗体や細胞傷害性T細胞から逃れる」
大林「じゃあどうなるの?」
本「マクロファージのMHCクラスⅡ分子が、細胞内の病原体のペプチドを提示するから、特異的なTh1細胞が認識して、マクロファージの活性化をする」
大林「なるほど」

本「Th1細胞は、膜蛋白質可溶性のサイトカインを合成してマクロファージの抗菌活性促進して、病原体の除去や、増殖・拡散を制御する。このような活性化は『古典的な』マクロファージの活性化と呼ばれ、これにより古典的活性化(M1)マクロファージclassically-activated(M1) macrophageがつくられる」
大林「そんな名前がついてたのか」
本「古典的なマクロファージの活性化には主に2つのシグナルが必要」
大林「どんなシグナル?」
本「一つはIFN-γ、もう一つはIFN-γにマクロファージが反抗するようにさせるCD40L
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

>②インターフェロン(Interferon;IFN)感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

大林「CD40L?CDの40番の……リガンドLigand?」
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
※リガンドLigand:細胞膜表面に存在する受容体膜蛋白質に対して特異的に結合する細胞外分子。とりあえず「リガンド=特定のものに特異的に結合する」ことを覚えておくと免疫学は読みやすくなる。

本「Th1細胞は、CD40Lの代わりにマクロファージを活性化できるリンホトキシンも分泌できる」
大林「え、リンホトキシンlymphotoxinって細胞傷害につかう毒では…まぁヘルパーT細胞が細胞傷害性T細胞に変化しうるならそりゃ分泌できるか……」
Weblio「リンホトキシンlymphotoxin…T細胞が分泌する腫瘍壊死因子のひとつ」

本「活性化マクロファージは、CD40TNFレセプターの発現を高めTNF-αの分泌が促進される。自己分泌刺激IFN-γの相乗効果で、一酸化窒素とスーパーオキシドを産生するM1マクロファージが誘導され、CD40Lとの相互作用でB7分子の発現を高め、IFN-γによりMHCクラスⅡ分子の発現を高めて、休止期のCD4T細胞をさらに活性化する」
大林「ほぉ、なんかすごいな」
本「TNFレセプターのシグナルは、マクロファージの生存に必要と考えられている」
大林「必須な存在じゃん」
本「CD8T細胞IFN-γを産生して特異的な抗原をMHCクラスⅠで提示するマクロファージを活性化する」
大林「突然の推し登場」

本「Th1細胞は、マクロファージの変化も誘導する」
大林「え、殺菌力上昇だけじゃないんだ?」
本「細胞内寄生先に対する応答増幅する…MHCクラスⅡ分子、B7分子、CD40、TNFレセプターの発現の増加など」
大林「なるほど、それでTh1細胞との相互作用の効率が上がる!」

本「M1マクロファージは、IL-12を分泌してILC1細胞Th1細胞IFN-γ産生量を増やす」
大林「IL-12って他にも作用なかつむた?」
本「ナイーブCD4T細胞のTh1エフェクター細胞への分化や、CD8T細胞の細胞傷害性エフェクター細胞への分化を促進する」
大林「まぁ!推しの分化も?!」


本「Th1細胞は、感染部位への貪食細胞のさらなる動員もする」
大林「好中球はマクロファージが呼ぶよね…」
本「Th1細胞は、造血系の増殖因子IL-3とGM-CSFをつくることで、骨髄で新たに単球をつくらせる
大林「つくるとこから?!」
Web「IL-3は,T細胞だけに対する刺激因子ではなく,あらゆる系統の造血系細胞に作用する。IL-3は骨髄多能性造血幹細胞造血前駆細胞に働き,好中球,好酸球,好塩基球,肥満細胞,単球/マクロファージ,巨核球,赤芽球といった各系統の血液細胞への分化,増殖を刺激する6).また,IL-3が作用することによりアポトーシスが抑制され,細胞の生存を維持する働きもある」
※引用元:動脈硬化 25(1・2):35-38, 1997 Information Up-to-Date
サイトカインの分子生物学18

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/25/1-2/25_1-2_35/_pdf

本「あと、感染部位でTNF-αリンホトキシンをつくることで、内皮細胞の表面が変化単球がそこに接着できるようにする。CCL2などのケモカインをつくり、単球を炎症組織に遊走させる」
大林「そしてM1マクロファージもサイトカインやケモカインをつくって単球を呼ぶ……どんどん集まる」

本「ある種の小胞内細菌は細胞質に抜け出して活性化マクロファージの殺菌作用を免れる」
大林「でも細胞内にいるからそのペプチドをMHCクラスⅠに載せて提示する……ので我が推しCD8T細胞が認識できる!」
本「そう、このような細胞によってCTL(CD8T細胞)は感染マクロファージ殺し、放出された病原体は細胞外で抗体を介して排除される」
大林「あ、やっぱり感染細胞を殺傷したら中の病原体が漏れちゃうんだ……アポトーシスは中に病原体を封じたままって教科書に書いてたけど、完璧じゃないってことかな」
本「Th1細胞がIL-2をつくってCTLの分化を助けることで、Th1細胞とCTLは協調して機能すると考えられる」
大林「なかよし…」

本「慢性的に感染したマクロファージは細胞内寄生細菌を殺すことができなくなる」
大林「そこでCD8T細胞の登場ですね!」
本「Th1細胞がつくる膜結合型蛋白質のFasリガンドLT-βにより、マクロファージは殺される」
大林「なんて??????!Th1細胞がマクロファージを殺せるの???」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?