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1日10分の免疫学(41)免疫記憶④

本「ワクチンについて紹介します」
大林「ワクチンの始まりと言えば、天然痘にかかった人から採取した膿を接種すること(人痘接種)で天然痘予防していたけど、弱毒化とか技術のなかった時代だったから危険だったんだよね」
本「人痘接種では100人に1人死亡していた。それでも天然痘にかかったら4人に1人は死ぬので、予防接種は広まっていた。そんな中で登場したのが牛痘接種。牛痘ウイルスは、ヒトには非常に軽い感染症しか引き起こさないが、天然痘ウイルスと共通抗原を持つため、効果的に牛痘と天然痘を予防することができる」
大林「共通抗原!つまり、牛痘ウイルスと天然痘ウイルスは、その表面にお揃いの抗原があるってことか。牛痘ウイルスの接種で、それに対応する抗体をヒトが獲得すれば、天然痘ウイルスにもその抗体は有効!なるほど~!」

本「牛痘ウイルスワクシニアとも呼ばれ、今や人為的に防御免疫を誘導する『ワクチン』の由来となっている」

本「不運にも、ヒトにとっての病原性ウィルス類縁の無害なウイルスは自然界にはほとんど存在しない」
大林「残念……ワクシニアと同じパターンで全部解決するわけではないってことか」
本「なので、大体は複製能を失わせる処理をしたウイルス粒子でワクチンを作る」
大林「複製できなければ細胞に入り込まれても大丈夫だもんね。死活化ウイルスワクチンkilled virus vaccineとか、不活化ウイルスワクチンinactivated virus vaccineとか呼ばれてるやつ」
本「製造過程で大量の病原性ウイルスを増やさねばならないのが欠点」
大林「あー実験動物とかに感染させて増やすの?……大変そう。じゃあ、弱毒化ウイルスワクチンは?」
本「ワクチンの接種偶発的に病気を引き起こすことがある」
大林「それ、ワクチン接種したら逆に危ない~!ってワクチン反対の人たちが言うやつ?詳しく知りたい!」
本「適切に不活化されていない病原性ウイルスが含まれていたり、ワクチンの製造中にウイルスゲノムに突然変異が起きたり……」
大林「あぁ……生きてるウイルス使うから、そりゃいつ突然変異起きるかわからないし、どうしようもないよね……ウイルスを生きてるというのも生命の定義的に不正確だけど」

本「ウイルスの1つの成分もしくはサブユニットが用いられるワクチンをサブユニットワクチンと呼ぶ」
大林「へぇ、初めて聞いた名称だな」
本「HBV(B型肝炎ウイルス)のサブユニットワクチンは、その抗原をコードする遺伝子をパン酵母のゲノムに挿入し大量培養され精製された」
大林「なるほど、ウイルスを増やすのではなく抗原を増やすのか。免疫応答は抗原がターゲットだから※。そして、抗原を増やす方法として、抗原をコードする遺伝子を他のものに組み換えると……すごいな!」

※(言い換えれば、免疫応答がターゲットにするもの抗原と呼ぶ。そういう意味では、ほとんどすべてのものが抗原になり得る……食べ物や、金属、ゴムなど様々)

本「初期のワクチン開発のための科学戦略は3段階。1、病原微生物を分離同定すること。2、免疫原性を保存しつつ病原体の毒性を不活化する。3、不活化病原体を実験動物に投与する」

同定:分類体系のうちどこに属するかを突き止める行為。
免疫原性:抗原が抗体の産生や細胞性免疫を誘導する性質。


大林「今は違うの?」
本「今は組換えDNA技術、ゲノム配列決定、巨大分子の構造決定などもある」
大林「そういえば、創薬関係でちらっと見たな。すごい技術革新だよね」

本「従来のワクチン開発方法は、病原体生理に関する既存の知識に基づくもので、病原体の生理及び病原体によるヒト免疫機構の利用に関する新しい知識に基づく現代の方法は逆ワクチン学reverse vaccinologyと呼ばれる」
大林「わかるようでわからん……アプローチ方法が逆からって感じかなとは思うけど」

今回はここまで!

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