1日15分の免疫学(33)B細胞とT細胞の分化②
B細胞の分化
本「B細胞系列に分化したCLPは、プロB細胞pro-B cellを産生する」
※CLP:共通リンパ系前駆細胞common lymphoid progenitor
大林「出たよプロB細胞!プロとか言いながらそこからプレ→未熟→成熟って分化が進むでしょ!ややこしいよネーミングが!」
本「B細胞が成熟すると、骨髄ストローマ細胞と接着した状態で骨髄内を移動する」
大林「なにそれ面白い、骨髄ストローマ細胞に運ばれていくの?」
本「最も初期の分化段階の幹細胞は、大腿骨や脛骨などの長骨内部の空洞にある骨内膜endosteum下にある。分化中のB細胞は網状ストローマ細胞と接触していて、分化すると骨髄腔の中心へと移動。未熟から成熟への最終分化は末梢リンパ組織で起こる」
大林「成長しながら移動していくのか」
本「B細胞の分化順は覚えてる?」
大林「早後プロ大小プレ未成熟!」
本「そう。早期プロB細胞early pro-B cell→後期プロB細胞late pro-B cell→大型プレB細胞large pre- cell→小型プレB細胞small pre-B cell→未熟B細胞immature B cell→成熟B細胞mature B cellの順に分化する」
大林「プロからプレ、大型から小型っていう流れがちょっと覚え間違えそうだよね」
V(D)J遺伝子再編成
本「Pax5という分子を作る遺伝子が欠損するとプロB細胞は次の分化段階へ進むことができず……」
大林「死んでしまうのかい?」
本「T細胞や骨髄系細胞への分化が誘導される」
大林「まさかの進路転換!!」
本「V(D)J組換え酵素はB細胞とT細胞で働くが、B細胞でTCR遺伝子再編成は起こらず、T細胞でBCR遺伝子再編成も起きない」
大林「なんでV(D)Jって言うの?」
Wik「V(D)J遺伝子再構成(VDJいでんしさいこうせい)とは、遺伝子断片(V、D、J)のランダムな組み合わせ」
大林「へぇ……」
Wiki「免疫グロブリン重鎖部位は44個のV 遺伝子断片、27個のD遺伝子断片、6個のJ遺伝子断片から成る。軽鎖も多くのVおよびJ遺伝子断片から成るが、D遺伝子断片はふくまない。」
Wiki「T細胞受容体は免疫グロブリンと似ており、V、D、J遺伝子断片をベータ鎖に、V、J遺伝子断片をアルファ鎖にふくむ」
大林「ふーむ。つまり、B細胞でもT細胞でも『VDJ』と『VJ』のセットなのか。だからV(D)Jという表記になったってことか!」
本「早期プロB細胞で、免疫グロブリンのH鎖遺伝子のDとJが再編成されると、後期プロB細胞へ分化する」
大林「一回目の再編成で早期から後期に分化するわけね」
本「後期プロB細胞では、VとDJが再編成され、成功するとμ重鎖が作られ、プレB細胞へと分化する」
大林「μ重鎖?」
Web「クラスの同一性は、重鎖のFc領域のクラス特異的配列によって決定され、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの各クラスのH鎖はそれぞれギリシャ文字でα、δ、ε、γ、μ鎖と表記されます。」
参照ページ「抗体基礎知識」
大林「あっそれ前にやった!」
◆復習メモ
抗体:免疫グロブリンImmunoglobulin、略称 Ig(アイジー)。
IgM、IgG、IgD、IgE、IgAの5種類のクラス(アイソタイプ)に分類される。サブクラスもある。例えばIgGは4種類(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のサブクラスがあり、更にIgG2はIgG2a、IgG2b……
各クラスの名前の由来は、重鎖の種類から。
IgG は γ 鎖(ガンマ)、IgM は μ 鎖(ミュー)、IgA は α 鎖(アルファ)、IgE は ε 鎖(イプシロン)、IgD は δ 鎖(デルタ)。
大林「そうか!そういえば初期にB細胞の表面に膜型の免疫グロブリンが生えてるんだよね!それはIgM!なるほどμ鎖……IgMがつくれたら次の成長段階に進むわけか」」
本「μ重鎖をつくらないプロB細胞は、プレB細胞レセプターを介した生存シグナルを受けとることができない」
大林「成長物語と言うか、生きるか死ぬかって感じだな」
本「ちなみに後期段階では遺伝子再編成の失敗割合が高くなる」
大林「ヒィ!なんで?!どれくらい死んでしまうの?」
本「少なくとも45%は失われる」
大林「プレB細胞になれるのが55%か…」
本「機能的な蛋白質を発現できない偽遺伝子もあるので実際はもっと少ない」
大林「ひぃい」
本「この段階でBCRレパートリーの多様性は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼterminal deoxynucleotidyl transferase:TdTにより増幅される」
大林「呪文かなにかですか?」
本「TdTはプロB細胞で発現して、再編成する遺伝子断片の結合部に非鋳型塩基を付加する」
大林「はぁ、全然わからんな…この辺はそっとしておいて分子学勉強してから読み直そ」
V(D)J組換えの不確定性
本「V(D)J組換えの不確定性は両刃の刃である」
大林「レパートリーの多様性は確保できるけど、自己反応するのもできてしまうから?」
本「非機能的な再編成も生じるから」
大林「失敗作ができるからってことか。たしかに、機能しない抗体は意味ないなぁ」
本「なので重鎖が機能的であればシグナル伝達できるようにレセプター分子に組み込まれる」
大林「機能したらシグナルが伝達されて、プロB細胞はプレB細胞になる?」
本「プロB細胞はまだ軽鎖をもたないので、構造が似た多様性のない代替軽鎖(サロゲート)を2つつくってμ鎖と会合してプレBCRを作り、プレBCRはB細胞内にシグナルを伝達する」
大林「なるほど、プレBCRが伝達するシグナルでプロB細胞はプレB細胞に分化するわけね。プレBCRは何かの分子に触れてB細胞内にシグナルを伝達するの?」
本「いや、プレBCR同士が互いに結合して二量体やポリマー形成でシグナルを伝達する」
大林「へぇ……よくわからん」
プロB細胞からプレB細胞へ分化
本「プロB細胞から大型プレB細胞への分化は数回の細胞分裂を伴う。静止期の小型プレB細胞になるまでに約30~60倍に増える」
大林「おぉ、増えるねぇ」
本「これらはそれぞれ異なった軽鎖遺伝子再編成ができるので、1つのプレB細胞から多様な特異性をもつB細胞がつくられる」
大林「ほぉ~、同じB細胞が増える…クローン増殖ではないんだね」
プレB細胞から未熟B細胞へ分化
大林「プレB細胞の次は未熟B細胞だよね」
本「この段階で多くが正常なIgMをもつことになる」
大林「膜型免疫グロブリンでしょ。B細胞表面にくっついてるんだよね、分泌型じゃないグロブリン!」
本「そして未熟B細胞は骨髄から出る前に、自己反応性を検定される」
大林「おっ、きたな!試験が!」
自己反応性B細胞の排除(免疫寛容のしくみ)
本「B細胞分化段階で生じる寛容性は、中枢リンパ組織である骨髄で生じるので中枢性免疫寛容central toleranceと言われる」
大林「骨髄を無事に離脱した未熟B細胞は自己反応性チェック済みってわけね。」
本「検定を逃れるB細胞もいるけど。それらは末梢性免疫寛容peripheral toleranceで除去される」
大林「抜かりないねぇ、人体!」
本「マウスの実験で、自己反応性のBCRをもつB細胞の運命は4通りあった」
大林「ほぉ、その4通りの運命とは?」
本「新しいレセプター産生、アポトーシス、抗原に反応しないアネルギー、抗原濃度が低すぎてBCRが刺激されるに至らない免疫学的無視」
大林「つまり、再試験と自殺とニートと存在感0?」
本「まずは1つ目の運命について」
大林「B細胞は、T細胞と違って再編成何度もやり直しできるもんなぁ」
本「そう。自己反応性ではないレセプターが作られるまで、もしくは、V-J遺伝子断片が使い果たされるまで再編成は続く」
大林「正解するまで帰れない、ただし回数制限はある……と」
本「ちなみに。レセプター編集機構が障害されると、自己反応性抗体を多く産生する自己免疫疾患を発症する」
大林「ループスとか?」
本「そう。全身性エリテマトーデスや関節リウマチだね」
本「2つめの運命の説明は省略するよ」
大林「アポトーシス……細胞の自殺ですね。うまく再編成できないと自ら死んじゃうのか」
大林「3つめの運命、アネルギーになったらその後どうなる?無気力に生き続けるの?」
本「まぁ、すぐには死なないね。抗原特異的T細胞の補助があっても活性化されないし、アネルギーB細胞は移動性が低下しているから…」
大林「なるほど、T細胞領域から動けないのか。そもそもT細胞に出会えない」
本「そして成熟もせず、比較的速やかに死滅する」
大林「比較的速やかに死滅する……すごい言い方するな」
大林「4つめの免疫学的無視というのは?」
本「免疫学的無視immnological ignoranceでは、自己抗原に対する親和性はあるが反応しない。というか、分化途中のB細胞は骨髄や脾臓に存在し、抗原はB細胞に近づけない。もしくは濃度が低い、弱くしか結合できない」
大林「ふーん、そういう状態ってことね。でも万一ってこともあるのでは?近づいたり、濃度が濃くなったり」
本「あるね。特定の条件下では活性化するため、不活性細胞とみなされていない」
大林「なんでそんな危険分子を何故残しておくの?」
本「もし自己反応性細胞が効率よく除去されると、レセプターレパートリーが非常に限られることになる」
大林「おぅ……そういうこと?厳密すぎると多様性を減らしすぎるって?」
本「多様な病原体に反応するためにも一部の自己免疫疾患はこのバランスの代償である」
大林「ちなみに骨髄でうける自己反応性検定はどれくらい自己抗原を網羅してるの?」
本「骨髄にあるか、骨髄に運ばれてくる自己抗原のみの検定なので、残りは末梢性免疫寛容で、自己抗原に反応する自己反応性B細胞は排除される。この場合の自己反応性のB細胞は3つの運命にわかれる」
大林「えっ、3つ?4つじゃなくて…?そうか、再編成のチャンスはもうないのか!」
本「そう。消失(アポトーシス)、アネルギー、生存(無視)」
大林「うーん、厳しい世界だ」
今回はここまで!
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