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1日20分の免疫学(7)抗体③

抗体について(つづき)

本「B細胞が抗原に反応し、抗体産生細胞になって、抗体が作られる。1個のB細胞はさまざまのクラスの免疫グロプリンの抗体を作る能力をもっていて、IgMを作っていたものがIgGを作るものに変わったりする」
大林「クラススイッチだね」
本「免疫グロブリンのクラスは変わってもL鎖のκ又はλ変わらない
大林「ほぉ~そこは変化しないってことか」
本「B細胞はκを作るかλを作るか一方に運命が定まっている」
大林「運命…!」
本「クラススイッチしても抗原を結合する部分は変わらない」
大林「抗原も運命の相手だもんな」

本「がんは一般に1個の細胞からスタートしたクローンであると考えられている」
大林「不安定だから多少は変わるみたいだけどね」
本「B細胞や抗体産生細胞が『がん』化した場合(リンパ腫・白血病・骨髄腫)、その細胞の作る免疫グロブリンはκかλかいずれかに限られているし、ひとつのイディオタイプのものである」
大林「そういう意味では治療の標的がわかりやすい」
本「骨髄腫は免疫グロブリンのうちL鎖だけのものを作ることがある。それは分子量が小さいので尿中に出てくる(Bence Jones蛋白)。Bence Jones蛋白はκ型かλ型に限られている」
大林「へぇ~抗体の一部しかつくられないのか」
Wiki「ベンス・ジョーンズ蛋白は、尿中に含まれる分子量22-24kDaのモノクローナルなグロブリンタンパク質または免疫グロブリン軽鎖を指す」

IgGについて。さらに詳しく

本「中和抗体・オプソニン抗体ほとんどはIgGに属している。IgGは補体を活性化する作用もあり、溶菌現象をおこすサブクラスがある」
大林「IgGにはサブクラスがあるよね。1~4だっけ」
本「IgG1ウイルス細菌外毒素IgG2細菌多糖体に対するものが多い」
大林「へ~覚えられん」
本「食細胞の表面にはIgGのFc部に対するレセプター(Fcγレセプター)がある」
大林「IgGのFcをつかんで細胞内に取り込むわけだ」
本「IgG1IgG3がFcγレセプターの結合をうけやすい。まだ、IgGは樹状細胞の抗原捕捉を助け、抗原提示作用も促進する」
大林「IgG、有能すぎでは?」

本「他のクラスの半減期が数日以内であるのに、IgGは21〜23日
大林「一度作られると有効期限が長いってわけか」
本「生まれつき免疫グロブリンを作れない人(無γグロブリン血症)の治療で免疫グロブリン注射が行われるが、半減期が長いので1ヵ月に一度で足りる」
大林「治療回数が少なく済むのはいいね」
本「A型肝炎の流行地に旅行する時、免疫を持っていない人が予防で免疫グロブリン注射をうつとその効果は1~2ヶ月もつ」
大林「あぁ~そうか、そういう使い方もあるのか」

本「また、IgGは胎盤を通過する唯一の抗体」
大林「なんでIgGだけ通過できるの?」
本「胎盤の細胞にはIgGのFc部に対する受容体(FcRn)がある」
大林「なるほど、積極的に取り込む仕組みがあるのか」
本「とりこみは胎生期の後半から盛んになる。出生前は血液中のIgG濃度は母親と同等あるいはそれ以上となる」
大林「半減期も長いし、それだけたっぷりあるなら生後数カ月はもつね!ところで生後どれくらいで自分で抗体つくれるんだっけ?」
本「出生後の児のIgG産生は生後3〜4ヵ月から活発になる」
大林「じゃあ、生後3ヵ月頃が一番IgG濃度が低くなるね。感染症にかかりやすい時期だ…」
本「この時期を生理的低γグロブリン血症と呼ぶよ。母親から児に与えられる免疫は『母子免疫』、抗体は『移行抗体』と呼ばれる」
大林「ふむふむ」
本「生後どのくらい児の感染防御に有効かは、母親の抗体のバラエティ次第だよ」
大林「言われてみればそうか、母親がいろんな抗体をもってるのは児にとってのメリットになる」
本「麻疹の抗体はかなり多いので、生後6〜7ヵ月までは児が麻疹にかかることはまずない。百日咳菌の抗体はあまりないので、生後間もなくから百日咳の感染を受けるようになる」
大林「へぇ~」

本「自分のからだに対して抗体を作るという異常がおこることがある(自己抗体)。これによりおこる病気を自己免疫病という。母親がこの病気でIgGに属する抗体を持っていると…」
大林「IgGは胎盤を通過するから胎児も同じ病気になる!」
本「たとえば、新生児血小板減少性紫斑病(血小板に対する自己抗体)、新生児重症筋無力症(筋肉のアセチルコリン受容体に対する自己抗体)、新生児エリテマトーデス(抗核自己抗体)などがある」
大林「大変だ!」
本「抗体が消失するまでの一過性の病気だよ」

本「子宮・膣の粘膜上皮細胞もFcRnを発現していて、血中のIgGを粘膜上に転送し分泌させる。これは子宮・膣から侵入してくる病原体の防御に役立つ」
大林「なるほど、FcRnって血中を流れるIgGが欲しい場所の細胞がもってるのか」
本「IgGは血液中で最も量が多く、成人の血液中の濃度は、血清濃度にして1100mg/dl
大林「他のIgは?」
本「IgAが250mg/dl、IgMが100mg/dl」
大林「IgG圧倒的に多いな!」
本「免疫グロブリンの中でも最も重要だからかもね」
大林「IgGがつくれない人は大変だ…半減期長いから注射回数は抑えられるけど」
本「各年齢健康者の平均値の50%以下だと間題があるね。200mg/dl以下は明らかな異常である」
大林「おぉ…」

本「抗体産生では、抗原結合部遺伝子の突然変異が生じて次第に親和性の高い抗体が作られてくる。IgGでは、IgMに比べて100倍も親和性が高い抗体が出現する」
大林「へぇ~なんでだろう」

本「また、IgGはADCCに関与している」
大林「出た!新型コロナウイルス感染症で話題に上りましたね、ADCC!交代依存性細胞傷害!」
WEB「細胞や病原体に抗体が結合すると,その抗体のFc領域を認識するFc受容体を持ったマクロファージやNK細胞といった免疫細胞が呼び寄せられ,抗体が結合している細胞や病原体を殺傷する」
大林「NK細胞はともかく、マクロファージも攻撃するのすごい」

本「K細胞などは標的細胞に結合しているIgG抗体のFc部にFcγⅢαレセプター
で結合して、その標的細胞を傷害する。この傷害作用をADCC(antbody dependent cell mediated cytotoxicity)という」
大林「ときどき見かけるけどK細胞って実際どんな細胞なの?」
WEB「GIPを分泌する細胞はK細胞と呼ばれ,主に十二指. 腸,空腸を中心とした小腸上部に局在する」
大林「GIP?」
WEB「glucose-dependent insulinotropic polypeptide」
インクレチン分泌の機序↓
http://www.igaku.co.jp/pdf/tonyo1001inc-3.pdf


本「あと、IgG1IgG3補体活性化作用が強い」
大林「IgGがIgの中でチート過ぎない?」
本「次はIgAについて」
大林「あっ、きりがいいから今回はここまで!」

サイトでは細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
現在、サイト改装用の画像作成等、いろいろがんばってるけど公開できる動きがない……


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