1日5分の免疫学②警備員な細胞
本「さて、今回は『異物侵入から炎症にいたるまで』をやるで」
大林「よしきた!」
本「皮下組織には、外敵の侵入を見張ってる警備員が3種類いる。マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞!」
大林「アニメ『はたらく細胞』効果で、この3種類の特徴はかなりメジャー情報になりましたね」
本「せやね」
大林「マクロファージは、まだ色んな細胞の種類が発見されてない時代に、ファージ(食細胞)を大きい(マクロ)のと小さい(ミクロ)に分けたのが名前の由来。実際大きい、白血球の数倍?」
大林「樹状細胞は、その名の通り、樹が枝を伸ばすような形状をしている。肌荒れ酷いと樹状細胞の先っちょが皮膚の外に出ててヤバイんだっけ?医療者向けの書籍等ではDC(dendritic cells)と書かれてて誰やねんて思う」
別の本「放射線状に突起を伸ばしているので、星型で略図が描かれることもある」
大林「マスト細胞は、中に顆粒がいっぱい詰まってるからドイツ語で『太い』といった意味のmastが名の由来※1。おかげで日本語訳も肥満細胞。でも某教授が脂肪細胞と紛らわしいからマスト細胞の名前を推してるとか※2」
※1…諸説あり。私はそろそろドイツ語の辞書買うべき…
※2…仲野徹「こわいもの知らずの病理学講義」
本「マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞が監視員としてどう働くか説明するで。彼らには、異物に触れて『あ、これあかんやつや』と判断するための感知器がついてます。TLRと呼ばれる受容体(じゅようたい)で……」
大林「きたー!受容体!これわかってないと先に進めないやつ!」
本「受容体とセットで『リガンド』も覚えておくように」
大林「これ知ってると、ノーベル賞のPD-1とPD-L1の説明読むとき少しスムーズ」
本「TLR(Toll like receptor;トル様レセプター)」※
大林「Tollに似た(like)レセプター!トルサマじゃなくてトルヨウ!」
本「免疫学で『様』と書いてるのは基本的に『よう』読みだから」
※Tollはドイツ語で「すごい」。ハエで研究してて見つけた遺伝子に「すごい!」と叫んで喜び、Toll遺伝子と名付けられ、それに「似た(like)」遺伝子によって作られるタンパク質がTLRとのこと。↓参照
本「TLRファミリーには色々種類があって、ある種の細菌の細胞壁成分を認識するTLRや、ウイルスや真菌の成分を認識するTLRもある」
大林「ファミリー?家族なの?菌の株的な意味合い?」
WEB「分類体系で、【ドメイン>門>網>目>科(family)>属>種】」
大林「えーと、つまり、監視三細胞の表面には色んなTLRがついてて、それで侵入者を感知してる訳ですな。因みに、どのTLRでも感知できない侵入者とかはありえますか?」
本「………」
本は答えてくれなかった!!!!
別の本「TLRは長い年月をかけて獲得したセンサー」
大林「進化論的な発想で捉えておいたらいいかな?生き残れた奴が今の形」
本「監視三細胞がTLRで異物の侵入を感知したら、周りに知らせるために連絡物質を撒き散らします」
大林「連絡物質……サイトカインですね!」
辞典「サイトカインとは、非抗体性蛋白質細胞制御因子の総称」
大林「呪文かよ」
《今回のポイント》
警備員みたいな役割の細胞(マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞)は、細胞の表面についてるTLR(トル様受容体)で「触れたモノが怪しいかどうかを大まかに判断する」。
怪しいと判断したら、周囲に知らせるために連絡物質(サイトカイン)を撒き散らす。
重要知識!「受容体(レセプター)」にくっつものを「リガンド」という。
次回は、ついに「炎症反応、起こります!」。
※2019/9/6一部追記
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