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1日20分の免疫学(22)リンパ球⑩

本「脾の周辺にはリンパ球集積している」
大林「脾と言えば、赤血球エリアと白血球エリアがあったよね」
本「赤血球の多い赤脾髄、白血球が多い白脾髄white pulpだね。これから説明するのは白脾髄だよ」
大林「よしきた」

白脾髄について

本「中心には中心動脈が通っていて、その周囲にリンパ球集団がいる動脈周囲リンパ球鞘periarteriolar lymphoid sheath(PALS)がある。その周囲に辺縁帯メタロフィリックマクロファージが並ぶ帯があり、その周囲に辺縁洞(へんえんどう)があり、その外側は辺縁帯marginal zoneで、辺縁帯には辺縁帯B細胞、辺縁帯マクロファージとがいる」
大林「今、中心から外側に向かって説明したってことだよね。辺縁帯メタロフィリックマクロファージ?!名前長いな?!」


本「PALS主にT細胞が存在し、抗原を提示する樹状細胞の一種である相互連結細胞もいる。リンパ濾胞もある」
大林「リンパ濾胞は主にB細胞だよね、B細胞に抗原を提供する濾胞樹状細胞もいる。この樹状細胞はT細胞に抗原ペプチドを提示する樹状細胞とは別の細胞で、生抗原をそのままB細胞に見せびらかすんだよね」

本「辺縁洞に侵入してきた細菌は、辺縁帯マクロファージメタロフィリックマクロファージに貪食される。濾胞間赤脾髓抗原樹状細胞が捉えて白脾髄へ運び、T細胞に提示される。辺縁帯B細胞は抗原を濾胞へ運ぶ」
大林「覚えきれないほどにしっかりしたシステムだな……」

本「NKT細胞辺縁帯B細胞CD1dとセットで提示する脂質抗原に反応する」
大林「きた!最推し!」

本「辺縁帯で抗原を捕えたCD116+樹状細胞CD8α+樹状細胞は、PALSに運んでB細胞やT細胞に提示する」
大林「とりあえず各所で抗原捕まえて提示して免疫反応を起こしてるわけだ」
本「ちなみに、ヒトでは辺縁洞は存在しない」
大林「うぉい!マウスの話とヒトの話を混ぜないでくれよ。こちとら人体の話をファンタジー漫画にしてるんだから……で?辺縁洞がないとどう違うの」
本「マウスでは辺縁洞から血中リンパ球が白脾髄に入ってくる。ヒトでは筆先細動脈から濾胞周辺や赤脾髄に血液が入る」
大林「なるほど。血液が流れ込むルートが変わるわけね」

赤脾髄について

本「赤脾髄にはマクロファージが多数存在する」
大林「古い赤血球を処理するんだよね」
本「そうだね。血中の細菌異物老廃化血球組織残骸を貪食する」
大林「ガチのスカベンジャーだな……」

本「赤脾髄のマクロファージと辺縁帯マクロファージは死細胞を貪食するとTGF-β、IL-10を産生し、Foxp3レギュラトリーT細胞も誘導し、死細胞由来の抗原提示をしてT細胞をトレランス(不応性)に導く」
大林「トレランスってことは免疫寛容だな」

皮膚にいるリンパ球について

本「皮膚の表皮内には、散在性にリンパ球が存在する(cutaneous intraepithelial lymphocyte:cIEL)」
大林「へぇ、皮膚が傷ついて敵が入ってきたら戦う感じ?」

本「マウスの話だけど。損傷をうけた表皮細胞の特定物質やMICなどの物質に、TCRやNKG2DT細胞レセプターで反応して、サイトカインを放出して表皮細胞を増殖させる」
大林「なるほど、壊れた現場を直す役か……ってマウスの話かい!ヒトは?!」
本「平常時でもIGFを産生して表皮細胞の生存を支持している」
大林「めっちゃ重要じゃん」
本「IGFはT細胞自身の生存も支持する。一部のリンパ球は抗菌ペプチドしたり、IL-17を産生して表皮細胞に抗菌ペプチドを産生させたりして、感染防御を担う」

大林「で、ヒトは?」
本「ヒトでは表皮にはランゲルハンス細胞と、わずかにγδ型、αβ型T細胞…特にメモリーCD8T細胞がいる。メモリーCD8T細胞は表皮細胞が作るIL-7、IL-15生存が維持される」
大林「表皮細胞に生かされている推し……」
本「ヒトのT細胞は主に真皮に分布する。γδ型は10%以下」
大林「真皮にはαβ型のメモリーCD8T細胞が多いってことか」
本「γδ型もαβ型もIGF-1とKGFを作って創傷治療を担う。腫瘍瘍細胞も傷害する」
大林「へぇ~」

本「表皮の有棘層にはLangerhans細胞がいて、局所で複製され長期に皮膚に存続する」
大林「ランゲルハンス細胞って組織定住マクロファージの表皮バージョンだよね。定住する組織によって名前が変わる」
本「ランゲルハンス細胞は、骨髄細胞・単球系由来の樹状細胞様形質を示すマクロファージだよ」
大林「お、おう」
本「炎症時は、マクロファージなどが生成するケモカインMCPに反応して、血中の前駆細胞が皮膚に移動してくる」
大林「呼ばれてやってくるわけね、そして抗原を捕らえて…」
本「リンパ節へ移動しT細胞に抗原を提示する」
大林「まるで樹状細胞じゃん。まぁ、マクロファージと樹状細胞は元々親戚みたいなもんだけど」
本「マウスの真皮のT細胞はαβ型とγδ型がほぼ同数で、γδ型はIL-7で生存が維持される。真菌感染時はIL-17を産生して好中球を動員し、IL-22も産生する。CD4とCD8はほぼ同数で、ほとんどがメモリー細胞。CD4の10%はレギュラトリーT細胞で真皮の毛嚢の近くに存在して、生体に有用な共生菌の存在を許容している」
大林「ヒトの話をしてくれえぇ~」

短いけど今回はここまで!

オリジナルサイトのBeing最新話作成も再開しています。


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