1日15分の免疫学(54)液性免疫応答⑤
TI抗原に対するB細胞応答
本「いくつかのTI-1抗原への応答は、白脾髄辺縁部に並んで存在する非循環性B細胞サブセットである辺縁帯B細胞marginal zone B cellとB-1細胞が担う」
※胸腺非依存性抗原thymus-independent antigen(TI抗原)。TI-1とTI-2の二つのタイプがある。
※辺縁帯B細胞marginal zone B cellは、主に白脾髄(ハクヒズイ)と赤脾髄(セキヒズイ)の境界にある辺縁帯に少数存在する。局在する位置から、血流から入ってきた抗原や病原体に速やかに反応できる。
※B-1細胞:は、自然免疫系細胞の一集団。B細胞亜種集団です。二次リンパ器官にはわずかしか存在しておらず、メインは腹腔や胸腔。感染に先駆けて恒常的に自然抗体natural antibodyを作る。
大林「お!出た!辺縁帯B細胞とB-1細胞!」
本「辺縁帯B細胞は、出生時にはほとんどなく加齢とともに増加する」
大林「B-1細胞は出生段階からいるよね」
◆復習メモ
B-1細胞:CD5 B細胞とも呼ばれ、出生前期に最も活動的。分泌する抗体は多種類の抗原に結合する(多特異性)。生後しばらくすると骨髄で作られなくなり、抹消の循環で自身の分裂で数を維持する
TI-2抗原に対するB細胞応答
本「樹状細胞とマクロファージは、TI-2抗原へのB細胞活性化に補助刺激シグナルを供給できる」
大林「へぇ、同じプロフェッショナル抗原提示細胞で、補助してくれるのか」
※プロフェッショナル抗原提示細胞:抗原提示に特化した免疫細胞。MHCクラスⅡ分子を発現しており、ヘルパーT細胞にも抗原提示ができる。樹状細胞、マクロファージ、B細胞。中でも樹状細胞の抗原提示能は、その放射状の形状から突出している。
本「樹状細胞がつくる補助刺激シグナルの1つがBAFFで、B細胞のレセプターTACIと相互作用する」
大林「ほぉ」
本「多くの一般的な細胞外病原菌は多糖体でできた莢膜(きょうまく)で覆われている」
大林「それで貪食に抵抗してるんだよね」
本「貪食から逃れるだけでなく、マクロファージによるT細胞への抗原提示も妨げる」
大林「いわれてみれば。貪食できなければ提示もできないもんなぁ。それでTI-2抗原に対するB細胞が登場か!」
本「そういうこと。T細胞補助に依存せずに莢膜多糖体に対してIgMを急速に産生し、貪食と分解を促進する」
大林「なるほどねぇ」
これまでのまとめ
★胸腺依存性抗原thymus-dependent antigen(TD抗原)とB細胞について
B細胞の活性化の条件:
BCRと抗原との結合と抗原特異的ヘルパーT細胞との相互作用が必要。
Tfh細胞(濾胞性ヘルパーT細胞)は、胚中心でT細胞上のCD40リガンドとB細胞上のCD40との結合を介した接触と、IL-21などのサイトカイン放出でB細胞を活性化する。活性化B細胞はICOSリガンドなどを発現して、T細胞を刺激する。
初期の相互作用:
抗原で活性化したヘルパーT細胞とB細胞が、ケモカインに誘導され、二次リンパ組織のT細胞領域とB細胞領域の境界で起こる。
その後、濾胞に移動し、胚中心が形成される。
T細胞は胚中心でB細胞の爆発的増殖を誘導し、形質細胞またはメモリーB細胞への分化を誘導する。
クラススイッチするアイソタイプは、ヘルパーT細胞の放出するサイトカインで調整される。
★胸腺非依存性抗原thymus-independent antigen(TI抗原)とB細胞について
一部の非蛋白質性抗原はペプチド特異的ヘルパーT細胞に依存せずB細胞を直接活性化する。
この場合、限られたアイソタイプへのクラススイッチであり、メモリーB細胞への分化誘導はない。
しかし、T細胞応答を惹起できない病原体に対する生体防御において非常に重要
免疫グロブリンの各クラスについて
本「次は各クラスについて説明するよ」
大林「免疫グロブリンの種類か」
本「病原体は生体のほとんどの場所に侵入できるので、抗体も広く分布する必要がある」
大林「せやね。でも入れないとこあるでしょ」
本「肺や腸管などの粘膜で覆われた上皮表面をもつ器官では、特殊な輸送機構が必要」
大林「だよね~」
本「抗体は病原体を中和し、または深刻な感染に至る前に病原体の排除を促進する」
大林「抗体は基本防御系ですもんね、補体と合体したら間接的に攻撃系にもなるけど」
本「すべてのナイーブB細胞はIgMとIgDを発現している」
大林「初期に作られるのはIgMだよね」
本「活性化B細胞から最初に分泌される。血漿中の免疫グロブリンの10%以下」
大林「思ったより少ないのか多いのか……IgDは?」
本「常に少量産生されている」
大林「へぇ、まだ詳細はあまり知られてないんだよね」
本「IgEは血中の割合は少ないが免疫応答において生物学的に重要な寄与をしている」
大林「先進国では少々困ったことになってるけどね…」
本「主要な抗体クラスはIgGとIgA」
大林「グルメのG!オプソニン化!」
本「IgGは血漿中の抗体の多くを占めるが、これは半減期が長いことも理由の1つである」
大林「賞味期限長いのか」
本「IgMは液性免疫応答で最初に産生され、低親和性である」
大林「でも五量体だから、結合部位が10個もあるので結合性は結構高いよね」
本「細菌莢膜多糖体などの多価抗原に結合する際は高い結合性avidityをもつ。分子サイズが大きいので主に血流に存在し、リンパにも存在するが組織内の細胞間隙にはあまりない」
※多価抗原 (polyvalent antigen): エピトープを複数持つ高分子のこと
※エピトープ(epitope):抗体、B細胞、T細胞によって認識される抗原の一部
大林「そういえば大きいな」
本「IgMは六量体の形成が可能だが役割は不明」
大林「マジで?六個も合体するの?」
本「血液感染は重篤な事態を回避するために速やかな対処が必要」
大林「あっという間に全身に回るもんな。だからクラススイッチとかせずにB細胞だけで初期応答する必要があるわけか」
本「一部のIgMは、クラススイッチ前の通常B細胞conventional B cellが産生し、大部分は腹腔や胸腔内に存在するB-1細胞と脾臓の辺縁帯B細胞が産生する」
大林「ヘルパーT細胞に依存しない(補助helpを必要としない)B細胞ですね!」
本「なので生体に侵入する病原体を認識できるレパートリーをもったIgMを予め供給している」
大林「常に備えてるわけか~」
本「他のクラスは分子量が小さいため血中から容易に組織中へと拡散する」
大林「IgAは二量体だよね。まぁ五量体と比べれば小さいか」
本「五量体でないということは結合部位が少ない、つまり抗原との親和性が極めて重要となる」
大林「そういえばそうですね、抗体は『Y』の形で、『V』部分が抗原と結合するから2か所しかない」
本「IgEは血液中や細胞外組織液中に微量に存在するのみ」
大林「微量というのが意外。花粉症とか考えるといっぱいありそうじゃん」
本「微量だけど、皮膚直下や粘膜直下、結合織の血管周囲に分布するマスト細胞のレセプターに強く結合している」
大林「なるほど、そして抗原が結合するとマスト細胞にシグナルが伝達されて強力な化学伝達物質(メディエーター)が放出されて、せきくしゃみ嘔吐などの反応が誘導されるわけだ」
本「大事な反応だよ」
大林「わかってるよ~」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています!↓
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