1日15分の免疫学(34)B細胞とT細胞の分化③
本「非感染時に、B細胞が末梢で強く架橋する抗原に出会うとクローン消失をうける」
大林「おっ、感染時に存在するシグナル無しに反応したらそれは自己反応性ということで排除されるって仕組みかな?」
本「非感染時に抗原に強く架橋すると、骨髄ではレセプター遺伝子の再編成を起こすが、末梢ではアポトーシスを受ける」
大林「それは……骨髄にいるときはまだ再編成できるけど、末梢ではもう成熟して軽鎖遺伝子を再編成できないから?」
本「おそらく。豊富な可溶性抗原に出会って結合した末梢の成熟B細胞はアネルギーとなる」
◆復習メモ
アネルギー:刺激を受けても活性化しない状態。比較的速やかに死滅する。
大林「可溶性抗原……血液中に溶け込んでる抗原ってことかな?なんで豊富な可溶性抗原に結合するとアネルギーになるのさ?どういう仕組み?」
本「骨髄の未熟B細胞も、末梢の成熟B細胞も、可溶性抗原に慢性的に曝露されると不活性になる」
大林「うん、だからどうして?仕組みを知りたいんだが……」
本は答えない!慢性的に曝露することで免疫寛容が起こるみたいな感じのアレだろうか……
本「未熟B細胞はsIgMを高く発現し、sIgDはほとんど発現しない」
大林「突然のs!IgMやIgDと何が違うの?」
本は答えないし、インターネットも答えない!
容赦ない免疫学の世界!!!
本「成熟B細胞はIgMの発現は低く、IgDは高い。成熟B細胞でのsIgDの機能は不明」
大林「いやいや、その突然出てきたsの説明してくれよ」
濾胞とB細胞
本「骨髄を離れた未熟B細胞の大部分は生存できず、成熟B細胞に分化できない」
大林「濾胞に入れないと生存シグナルもらえないんだよね、しかも成熟B細胞が優先されるから狭き門」
本「新しいB細胞の流入数と死滅する末梢B細胞の数は一定に保たれている。大部分の末梢成熟B細胞は寿命が長く、1日1~2%しか死なない」
大林「……ということは新たに流入してくる未熟B細胞は、」
本「死滅するB細胞のほとんどは未熟B細胞で、3日で50%以上が死ぬ。新たなB細胞の多くが2~3日しか生存できないのは濾胞への移動競合で脱落するからである」
大林「あぁ~やっぱり」
本「濾胞はB細胞に生存シグナルを供給する。特にB細胞活性化因子B-cell activating factor belonging to the TNF family:BAFFは様々の細胞から作られるが、濾胞樹状細胞follicular dendric cell:FDCからは豊富に産生される」
大林「出たー!濾胞樹状細胞!」
本「濾胞樹状細胞はBCRによって認識される抗原の捕獲に特化した細胞」
大林「へぇ~、B細胞のために存在する感じだな」
濾胞B細胞と辺縁帯B細胞について
本「脾臓やその他の二次リンパ器官に存在する多くの末梢B細胞は、濾胞B細胞follicular B cellまたはB-2細胞として知られる」
大林「出た!B-2!」
本「脾臓にいる少ないB細胞集団である辺縁帯B細胞marginal zone B cellは、主に白脾髄(ハクヒズイ)と赤脾髄(セキヒズイ)の境界にある辺縁帯に存在する」※2022年4月7日訂正&追記
大林「濾胞B細胞と辺縁帯B細胞はどんな関係?」
本「骨髄で分化するまでは同じで、脾臓濾胞での最終成熟段階で分岐する」
大林「へぇ~、結構最後の最後で分かれるんだね。姉妹って感じかな」
本「辺縁帯B細胞は、その局在する位置から、血流から入ってきた抗原や病原体に速やかに反応できる」
大林「つまり早期防衛線を担うわけだ。自然免疫のB-1細胞のことだよね?」
本「違うよ」
大林「違うんかい!」
本「濾胞B細胞(B-2細胞)と辺縁帯B細胞は二次リンパ器官にいるB細胞の大半を占めるって話だよ。そしてこれらは適応免疫応答を担うB細胞の主力部隊」
大林「主力部隊……かっこいい言い方するねぇ!」
B-1細胞について
本「では、気になってるB-1細胞について。B-1細胞は、自然免疫系細胞の一集団。B細胞亜種集団です。二次リンパ器官にはわずかしか存在しておらず、メインは腹腔や胸腔」
大林「自然抗体natural antibodyをつくるんだよね?」
本「そう。感染に先駆けて恒常的に作られる」
大林「それ!それが知りたかった!だって入門書では抗体は適応免疫だって言いながら、適応免疫の準備には日数を要するって言うのに、なんか感染してすぐにいるIgMあるし」
本「B-1細胞がつくる抗体の多くは莢膜多糖体抗原を認識するので、病原性ウィルスや細菌からの防御に重要」
大林「莢膜多糖体抗原?なんか聞き覚えがあるような…」
Web「莢膜多糖体はT細胞非依存性抗原で、. 膜型免疫グロブリン(B細胞レセプター). と直接結合しB細胞を直接刺激する」
参考元:ファイザーKK・社内勉強会
◆復習メモ※過去記事より抜粋
本「多くの細菌性病源体は細胞の外で生息し増殖する。細胞外病原体について、自然免疫応答はどのようなものがある?」
大林「ファゴサイトーシス(食作用)!食細胞であるマクロファージと好中球が標的を貪食します!」
本「そう。細胞外の細菌は通常、貪食細胞による食作用の感受性が高い(≒食作用の有効性が高い)。しかし、」
大林「しかし?!」
本「ブドウ球菌属、肺炎球菌属の細菌はファゴサイトーシスに抵抗する多糖体の莢膜をもっている。」
◆復習メモ※さらに抜粋
本「脾臓のリンパ濾胞には主にB細胞がいて、そこを囲むように辺縁帯があり、辺縁帯には少数のT細胞と多数のマクロファージ、巡回せず定住している辺縁帯B細胞marginal zone B cellの集団がいる」
大林「え!巡回しないB細胞?!そのB細胞はなにやってるのさ?」
本「細菌の莢膜の多糖体に対する低親和性の抗体をすぐに作れる態勢にある」
本「まぁ、ヒトB-1細胞が同じかはまだわかってないけど」
大林「???!待っ?マウスの話をしてたの?いつから??!」
本「B-1の特徴は、T細胞の補助なくしてIgMをつくること。抗原曝露から48時間以内……T細胞が関与する前に抗体がつくられる。まぁヒトでもそうかはまだ不明だけど」
大林「うぉおおい!」
B細胞の分化のまとめ
・B細胞は、重鎖遺伝子座が最初に再編成される。
・μ重鎖が作られたらサロゲート軽鎖と会合してプレBCRを形成。
・プレBCRシグナルによって重鎖遺伝子再編成は止まり、対立遺伝子排除が誘導される。
・プレB細胞は増殖し、それぞれが軽鎖遺伝子再編成をして、多様なレパートリーをうみだす。
※軽鎖遺伝子再編成に失敗すると成功するまで又はJ遺伝子を使いきるまで再編成を繰り返す。成功すれば再編成は止まり、次の段階へと進む。
・完成型の免疫グロブリンは寛容性の検定を受ける。
・寛容性の検定は骨髄から末梢まで続き、不合格となったB細胞は消失する。
<B細胞の一生>
幹細胞→早期プロB細胞→後期プロB細胞→大型プレB細胞→小型プレB細胞→未熟B細胞→成熟ナイーブB細胞→リンパ芽球(→メモリーB細胞)→形質芽細胞、形質細胞
本「次回はT細胞の分化について」
大林「いぇえええい!!!」
細胞の世界をファンタジー漫画や4コマ漫画にしています↓
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