1日20分の免疫学(14)リンパ球②
リンパ球について
本「成人の血液中の白血球の約30%はリンパ球で、胸管中を流れる細胞
のほとんどはリンパ球」
大林「胸管?」
WEB「リンパ管の主幹。下半身および左上半身のリンパを集める。腸リンパ管・腰リンパ管の合流点から、脊柱に沿って上り、左の鎖骨下で静脈に連絡するまでの部分」
本「リンパ節・脾・扁桃・胸腺などに密集して存在する球状の核を持つ細胞で、一般に食作用のない細胞をリンパ球と総称する。骨髄などの造血器に存在する造血幹細胞 hematopoietic stem cellから分化する」
大林「密集ってかわいい!球状の核って表現するのか。覚えておこう」
本「リンパ球の一部は、リンパ組織を離れリンパ管・胸管・血管の中を流れて再びリンパ組織に戻る」
大林「リンパ球ホーミングだね。全身を巡回してくれてる」
体液性免疫と細胞性免疫
本「免疫を持つ動物の血清を注射することで、免疫を持たない動物に与えることができる。抗体によってもたらされる免疫反応を体液性免疫 humoral immunity という」
大林「そうだね」
本「一方、結核菌に対する免疫を持っていてツベルクリン反応が陽性の動物のの血清を注射しても、免疫を持たない動物のツベルクリン反応を陽性にすることはできない」
大林「なんで?」
本「でも、リンパ球を採取して注入すれば可能となる。つまり、ツベルクリン反応はリンパ球によって営まれていると考えられ、このような免疫反応を細胞性免疫 cellular immunityまたは細胞媒介性免疫 cell mediated immunityという」
大林「ツベルクリン反応は適応免疫のリンパ球がいないと起こらないってことかな」
本「ツベルクリン抗原に対する皮膚反応(遅延型アレルギー反応)はリンパ球を中心とする反応で細胞性免疫だよ」
大林「へぇ」
T細胞とB細胞について
本「T細胞の名前の由来はthymus(胸腺)だが、現在では胸腺外で分化するT細胞も存在することが知られており、抗原レセプターとしてTCRを持つリンパ球をT細胞と定義する」
※TCR:T cell receptor T細胞受容体、T細胞レセプター
大林「あとからわかったことと名前の由来が異なることあるあるだね~」
本「B細胞の抗原レセプターは表面の免疫グロブリンであり、表面に免疫グロブリンを持つリンパ球がB細胞と定義される」
大林「なるほど」
本「TCRはγ、δ、ε、ζ、ηという5種のCD3分子群と連結している」
大林「ガンマ、デルタ、イプシロン、、、」
WEB「ジータ、イータ」
T細胞の抗原認識に必須の抗原提示細胞
本「T細胞の抗原認識には、通常、TCRに抗原のみが結合することでは成立し
ない」
大林「通常、ということで例外があるんだよね、スーパー抗原……」
本「抗原提示細胞 antigen presenting cell(APC)という細胞が必要。組織の細胞表面には個体ごとに異った抗原が存在する(組織適合抗原)という。特に重要なものは主要組織適合抗原といい、規定する遺伝子群は染色体上の一定部に存在し主要組織適合複合体 major histocompatibility complex(MHC)という」
大林「ヒトの場合、HLAと命名されてるね。当初は白血球の表面で見つかったからこの名前。でもほとんどすべてのヒト細胞表面にあることがあとからわかった」
本「T細胞は、抗原提示細胞上のMHC 分子と特異的な抗原との組み合せに反応する(認識する)」
大林「MHCをお皿に例えてることもあるよね。お皿に乗せた抗原でないと反応しない推しがお上品(笑)」
本「ちなみに、他の個体のMHCと抗原ペプチドの組合せは無効。これを、MHC拘束性という」
大林「自分のMHCでないと反応しない、という意味での拘束性だね」
本「樹状細胞は、古典的樹状細胞conventional/classicalと形質細胞様樹状細胞plasmacytoidに大別される。前者にはリンパ組織定住樹状細胞と、非リンパ組織からリンパ組織に移動してくる間質樹状細胞(移動性樹状細胞)とがある。ほかに単球由来樹状細胞、表皮のLangerhans細胞がある」
大林「あ、移動してくる奴は定住タイプじゃなかったのか。漫画描くとき気を付けよう」
本「多くのナイーブT細胞はリンパ節などの組織に存在する。樹状細胞はナイーブT細胞に対する唯一の抗原提示細胞で、リンパ流に乗ってリンパ組織に流入し、抗原を提示する」
大林「唯一の、なんだよね。つまり、樹状細胞もすごく重要」
T細胞の機能
本「T細胞の機能は3つに要約される。生体にとって異物である細胞(異常な細胞)を排除すること、食細胞などの他の細胞を游走・活性化するサイトカインを産生・放出すること、B細胞や他のT細胞の働きを補助・抑制して調節すること」
大林「その3分類微妙に納得がいかないんだけど。CD8T細胞(直接排除)、T細胞全般(ほかの細胞への働きかけ)、CD4T細胞(B細胞とT細胞への働きかけ)ってことかな」
本「細胞傷害作用について。クラスI分子に反応するものが主体だが、クラスⅡに反応するものもある」
大林「ヘルパーT細胞も細胞傷害するって話だな……それもっと詳しく知りたいんだけど」
本「細胞傷害をするT細胞のことをキラーT細胞という。細胞傷害性T細胞 cytotoxic T lymphocyte(CTL)」
大林「細胞傷害性T細胞 とCTLで覚えた」
本「CTLはさまざまな細胞傷害物質(パーホリン・グランザイム・リンホトキシン、TNF-a)を放出し、またはFasリガンドを表出して相手細胞表面にあるFasに刺激を与えるなどして相手の細胞をアポトーシス誘導する」
大林「物理で傷害するのと、自殺スイッチ押すのとで2パターンあるわけだな」
本「キラーT細胞が充分働くよう助けているT細胞がある」
大林「ヘルパーT細胞だね。補助 helpする」
本「CTLは、ウイルス感染細胞の排除と腫痛細胞の破壊を行う。これはMHC分子と共に表出されているウイルス抗原や腫瘍関連抗原に反応することによる」
大林「うむ」
本「相手と反応した後のCTLの一部は記憶(メモリー)T細胞となって長く生体内に存続し次回直ちに対応できるよう備えられる」
大林「かわいい」
本「一方、B細胞の場合は、抗原と反応した後、一部が抗体産生細胞に分化し、他が記憶B細胞に分化する」
大林「CTLは実際に戦った子が記憶細胞になるってこと?」
本「一度実際に相手を傷害できるキラーT細胞になったものも記憶キラーT細胞に分化する」
大林「OK把握」
※ナイーブ naive細胞:T細胞やB細胞で抗原と未だ反応したことがないもの
※エフェクター effector細胞:抗原と反応し実際に仕事をするようになったもの
本「CD8T細胞は、特異的な相手に反応すると、まず細胞分裂で増殖する」
大林「一週間くらいかけてすごく増えるよね」
本「5~8日の間に1万倍以上の数に増える。仕事がすむと一部はメモリーT細胞として残されるが、残りの90〜95%は死滅して反応が終息していく」
大林「推しが死ぬ……必要なことだけど哀しい」
本「CD8T細胞の増殖・生存・機能発現は、CD4T細胞や自分で産生するIL-2、樹状細胞やマクロファージの産生するサイトカインルIL-12、IL-15、IL-18、インターフェロンによって支持される」
大林「自分でも作れるのか、かわいいな」
本「IL-12、IL-18、1型インターフェロンによって、CD8T細胞のTCRからのシグナルが増強されるので、これらのサイトカインが増加している炎症部では抗原に対する感受性が高まり抗原に強く反応する」
大林「推しの感受性が高まる……!」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
サイトカインの種類
・ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている
・インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)
・インターロイキン(Interleukin;IL):リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
・腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。
マクロファージの活性化等
本「細菌や真菌は主にマクロファージが貪食して処理する。マクロファージは原形質の中に取り込んで消化する大型の食細胞で、さまざな異物や老廃化細胞も処理する」
大林「いろんな意味で掃除屋……」
本「T細胞は細菌などの抗原と反応すると、リンホカインを産生して放出する」
大林「リンパ球の作る作用物質(カイン)っていう命名だよね」
本「他の細胞からも産生されることが多いので、細胞の作る作用物質という意味でサイトカインともいう」
大林「T細胞のつくるサイトカインでマクロファージも活性化されるわけだ。殺菌力や消化力を高めるインターフェロンγ!」
本「T細胞は活性化するとCD154という分子を表出する。それがマクロファージ表面のCD40分子と結合すると、マクロファージが活性化する」
大林「たしか結合することでサイトカインも独り占め状態になるから余計に活性化するんだっけ?Janeway'sで読んだような」
本「ツベルクリン反応は、結核菌抗原に反応したT細胞がリンホカインを放出してマクロファージなどが反応しておこす皮膚の炎症反応」
大林「なるほど。さっき言ってたようにリンパ球が必要だね」
本「ツベルクリンを注射するとゆっくり反応が進行し、2日目頃に最大の反応となる(遅延型皮膚過敏反応(アレルギー反応))。結核菌に感染したこと
がない人では、結核菌抗原に対応するT細胞が増えていないから反応が出現しない」
大林「それでツベルクリン反応で過去の感染の有無がわかるわけだ」
本「サイトカインIL-17を産生するT細胞(Th17細胞)は好中球の反応を誘導し、細菌の防御や炎症反応の惹起にかかわる」
今回はここまで!
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