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【声劇台本】掘っちゃった人、掘られちゃった人

ボイコネに掲載していたものになります。
演じてくださったら嬉しいです。
動画や音声作品として残す場合はURLを
教えて頂けたら聞きに行きます。

登場人物
掘った人:桜の名所を散歩中の普通の人。男女不問
ゾンビ:桜の木の下に埋まっていたカタコトのゾンビ。男女不問。


掘った人:桜の木の下にはうんぬんというフレーズをこの季節になると思い出す。
誰の作品かは覚えていないが小説の一文であろうことはわかる。
そしてここはおあつらえ向きに桜の名所。
とはいえ、観光客もいないような夜更けである。
ささやかながらだがライトアップされた幻想的な
桜が風に揺れているだけであたりは静かだ。
少しの好奇心が頭をもたげても無理はないだろう。
…実際埋まってたりするのかな。

掘った人:いやでもスコップとか無いしなあ…
ん…良い感じの太い枝があるな、
このへんはそんなに土も固くなさそうだし…
(力を込めてしばらく根本を掘ってみる)

掘った人:あれ…なんか変な感触が

ゾンビ:…ンン~

ゾンビ:もう終末デスか~?

掘った人:うわっ…!

ゾンビ:何デスカあなた、見たところ終末も訪れてないデスネ~?

掘った人:え?死体?!警察呼ばないと!

ゾンビ:エっ?ナンデ!

掘った人:えっ?違うの?ってか喋ってる!

ゾンビ:違うッテイウカ、寝てるだけナノニ警察呼ぶとかナイワ~

掘った人:(なんだこのしぬほどユルい死体…いや喋る死体だから、
リビングデッド的なやつ…?!逃げるべき?)

ゾンビ:あなたサ~何でこんなとこ掘っちゃったノ?
勝手にそのへん掘っちゃダメって教わらなかったノ~?

掘った人:いや、その…桜にまつわる有名な言葉があって
桜の木の下には死体が埋まっているって
それで、たまたまこの辺歩いてて
もしかして埋まってたりして~なんて
軽い気持ちで掘ってみたら君が…
まさか本当に死体埋まってると思わないじゃん?

ゾンビ:あなた通知表に「もうすこし慎重に行動しないと生きてきた事を
悔やむような痛い目見ますよ」って書かれるタイプデショ~!

掘った人:書かれた事無いし、そんな辛辣なコメントつけてくる教師嫌だよ!
それに週末ってなんかあるの?
近所のスーパーの特売とかそういうあれ?

ゾンビ:ソウソウ~。土の下に長年埋まってると喉乾いちゃってネ~。
スポドリ箱買いしとかないとナ~ッテ。ソンナワケナイヨネ~!

掘った人:ですよね~!

掘った人:じゃあ何なの。そもそもなんで見るからに腐敗してのに喋れるのさ。

ゾンビ:人がいつカラ喋れるようになったかナンテ、
アレコレ偉い学者様タチが答えを出してても
神様デモ無い限りそれが本当に正解だとは限らないジャナイノ。
ソレニ知らないノ~?
この世ハネ天変地異によって滅びる運命ナノ。
それをネ~ゆっくり待トウッテいい気持ちで寝てたノニ。
あなたが掘り起こすからナーンモ起きてないのに
ウェイクアップしちゃったジャナイノ。

掘った人:うわっこのゾンビ面倒くせえ…でもそれは、申し訳ないことしました。

ゾンビ:ワカレバイイノヨ~
人間物分りの良さってダイジダカラネ!
頑固な人って損ダト思うノ
もちろんその真っ直ぐさとか誇れると思うノヨ
ただ人の考えを聞くッテイウコトデネ、
広がる世界もアッタリナカッタリスルワケ

掘った人:(何で見ず知らずのゾンビに説教されてるんだろうなあ…これ以上関わりたくないし謝ったら許してくれそうだし早く帰ろう)

掘った人:あの、本当すみませんでした

ゾンビ:イイノイイノ。もう行って、ほら行って
これからまマタ終末に備えて寝るカラ。

掘った人:あ、はい。それじゃあこれで(立ち去ろうとする)
  
(少しの間)

ゾンビ:待ッテ!!

掘った人:はい?!

ゾンビ:一人じゃ無理

掘った人:(これはあれか、やっぱり道連れにするぞ的な?マジかよ~…)

ゾンビ:アノネ、自分ヒトリじゃ難しいから土、カケテ…?

掘った人:喜んで~!(せっせと埋める)

  
掘った人:この出来事を経て、これを聞いている人々に自分が言えることはただひとつ。興味本位で桜の根本なんて掘るもんじゃあない。
  
  
<<終演>>

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