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私が実際に見た「売れた」俳優がやっていたこと

私がまだ芝居を始めたばかりの頃、ある芸能事務所に所属していました。小さな小さな事務所で、特に有名な俳優もいませんでした。

ある時、1人の俳優が映画のオーディションでメインの役を掴みました。名前を仮にKさんとします。

その映画は国内外でヒットし、Kさんも舞台挨拶やメディアにも取り上げられ、一気に仕事が増え、事務所もその恩恵にあずかりました。(バーターの仕事も増えたし)

そのKさん。オーディションで役を射止めたのは実力だったことは言うまでもありません。事務所は何の影響力もない小さなところでしたから。

ある時、事務所の社長からKさんの話を聞き、「売れる俳優」と「売れない俳優」には決定的な違いがあると、思い知りました。

Kさんがやっていたこと

事務所では毎週1回レッスンがあり、まだ無名だったKさんも一緒にレッスンを受けていました。

ある日のレッスンで、事前に課題が出されました。『映画を観て感想文を書く』というもの。(このレッスン内容の善し悪しはおいといて)担当の講師から、この映画を観てほしいという作品のタイトルが10本くらい挙げられ、『この中から2本選んで』と付け加えられていました。

私もそのレッスンに参加しましたが、10本の中から自分が観たいと思ったもの、感想が書きやすそうなものを選んだ記憶があります。

レッスン当日、Kさんは仕事が入ったのか欠席でした。…が、社長の話では課題の感想は準備していたので、担当講師に渡したそうです。

「Kさんはどの作品を選んだのですか?」興味本位で社長にそう聞くと

「全部」

「え?全部?」

「そう。自分ではどれかを選ぶなんてできないから全部観て書いたって」

Σ(゚д゚lll)

改めて文字に起こしてみると、大した話じゃない気がしてきましたが(笑)その時ものすごい衝撃を受けたのです。

売れる人って、ものすごく貪欲で、ものすごく素直。そう思います。変なプライドがないから、薦められたら観るし、読むし、やってみる。経験して初めて分かることがある。経験は財産になります。

Kさんは、なにも優柔不断だからどの作品にするか決められなかったわけではありません。自分1人の狭い世界の小さなものさしで何かを選ぶことが、得策ではないと分かっていたのだと思います。(その時点で他の俳優よりもずっとずっと広い視野を持ってますけどね)

売れない俳優は、変なプライドや、自分はできる・分かってるという思い上がりがあり、人の話を素直に聞けない。例えば「この映画面白いから観てみて」「この本いいよ」と言われた時に、自分の感覚だけで「うーん、あんまり興味沸かないなぁ、やめとこう」「こういうジャンル好きじゃないんだよね」と決め付けて、世界を広げようとしない。

人の助言を聞くことは面白くないこともあります。プライドが傷つくこともあります。でも、その人がなぜそう言うのか?そこが大事です。

映画や本を薦められたのなら、どこが面白いと思ったのか、この作品のどこが自分に役に立つと思って薦めてくれたのか。実際に観て、読んで、つまらなかったとしても、なぜつまらないと思うのか。そういう一つ一つを言語化していくことで、どんなことも貴重な経験になります。

演技に対してのダメ出しも同じ。俳優は人に見られてナンボ。「自分はこう思って演じました!」といくら熱弁しても、それが見ている人に伝わってなければ意味なし。やってないのと同じ。だからこそ、どう見えているのかを教えてくれる人はありがたいのです。

私も昔は、ダメ出ししてくる人のことを「あいつは見る目がない!」なんて言って素直に聞きませんでした(^^; 恥

もし、このnoteを読んでくださっている人の中に、思い当たる方がいましたら、ぜひ今日から少し素直になってみることをオススメします。騙されたと思って、「薦められたらやってみる」をしてみてはいかがでしょう?

ちなみに。Kさんは今も一線で活躍されてます!

さて。次回はもっと上手にまとめます。
ありがとうございました!