浅草ルンタッタを読んだ

劇団ひとりの小説は『陰日向に咲く』を以前読んだ事があるので2度目。明治から大正にかけての浅草を舞台にした群像劇のような話。明治から大正とだけで人によってはピンと来るだろうけど震災の話もあり、主人公のお雪をはじめとして登場人物の大半は苦しい状況になる事が多いのだけれど、そこに住む人たちと支え合いながら乗り越えていく感じの底力やパワーなんかの逞しさを感じられて、起こる出来事に反してとても清々しい気持ちになれるような、そんな話で面白く読めた。

タイトルは軽快な感じなんだけど、本筋の話はしんみりするエピソードが多い。赤ん坊の頃に捨てられていたお雪を拾った千代は、周囲の反対を押し切って自分が育てると決意をしてお雪を育て始める。いつしかお雪は千代の働く燕屋の住人みんなの子供のような存在になっていく。しかし横柄な客によってまだ幼いお雪が襲われそうになっている所を見て千代が助けに入り結果的に客を殺してしまった事で、千代と遺体の処理を手伝っていた鈴江が警察に捕まり、燕屋も解散、みんな離れ離れになってしまう。
結果的に悲劇に繋がってしまう事件なのだけれど、お雪も千代もお互いがお互いを守りたいと思った上で起こってしまった事件なのもあって、悲しいんだけど親子愛を感じて印象に残った。血の繋がりがなくても親子なんだという確かな物を感じる事が出来た。

劇団ひとりがお笑いの人だからか随所にクスっとくるポイントがあって、信夫がお雪と再会出来た後に、お雪の無事を鈴江や千代に伝えようと鈴江の元に面会しにいくのだけど、お雪の身元がバレたら捕まるので姪と偽るくだりとか信夫のビジュアルが自分の中で完全に劇団ひとりになっていてクスクス笑えた。
震災で福子と兵助が危ない時も震災だしこの状況だときっと助からないだろうと思いながら読み進めたらまさかの展開になったりとか。ベースとなる部分はシリアスなんだけど随所に挟まれるちょっとしたエピソードでクスっと笑って息抜き出来るから重苦しく感じなかったのかな。人間の強く逞しいエネルギーを感じる事が出来る物語だと思う。

#読書の秋2022 #浅草ルンタッタ

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