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「名前のない家事」問題・前編

  ここ数年、あちこちで家事に関する議論が活発になっています。その中で浮上してきたのが、「名前のない家事」問題です。家庭で家事を中心に担う人の負担感は、実はこの「名前のない家事」が細かくたくさんあるからかもしれません。そこで、今回はこの問題について考えてみたいと思います。

分担が難しい家事もある

 わが家では家事を、できるだけ等分になるように夫婦で分担しています。掃除は半分ずつ、担当する部屋を分けています。風呂掃除は、バスタブの中は私がやりますが、床などは夫がやります。月に1度、私は家中の床拭きを行いますが、ふだん、髪の毛などのゴミをクイックルワイパーで取るのは夫がやってくれます。

 料理は私の方が多く、平日担当で夫が週末担当です。つくってもらったほうが洗い物をします。食器を下げるのは洗うほうです。配膳は時間があるほうです。ただし、私は段取りが悪いのか、使い終わった鍋などを一部食前に洗いきれないことがあり、それは夫がやってくれます。シンクやコンロ周りも使ったほうが拭きますが、夫の方が汚れを気にすることもあって、夫が毎回きれいに拭き上げてくれます。

 買い物と食材の整理は私の担当です。ゴミ出しは夫です。ゴミを集めてくるのは私が多いです。アイロンはたまにしかかけませんが私です。洗濯も私。洗濯物を取り込むのも私の方が多いです。たたんでしまうのは、自分のものをやると決めています。

 こうして列挙してみると、今はある程度理想的な分担になったなと思います。今までいろいろあって、夫のほうが家事が多かったこともあります。そして、最近うちでは、かなり「名前のない家事」問題が解決してきたように思うので、今回その問題を書けるかなと思ったのです。

ついでの作業が家事を減らす

 なぜ解決したなと思うのかというと、お互いが自主的に「ついでに」家事を片づけるようになってきたからです。クイックルワイパーの件は前にも書きました。 

 あれ以来、夫は2日に1回はクイックルワイパーで洗い場や廊下を掃除してくれます。そういうことをしている姿を見ると「やってくれている」とありがたく感じます。この、相手が働いている姿を見る、ということが案外大事なのではないかと思います。 

 専業主婦の場合、家事をほとんど引き受けている人も多いと思いますが、その大半を家族は見ていません。そして家事のほとんどは、環境を整えるために行われるので、特に家事の経験が少ない人は「やってもらった」実感が少なく感謝しにくいのです。床拭きを毎日していようが、たまにしかしていなかろうが、足の裏が真っ黒になるなんてことは少ないと思います。手を抜いても手をかけても気づかれにくいのです。

 それからついで家事についていえば、夫はふと気がついたときにクイックルワイパーをかけます。鍋を洗ったりコンロ・シンクを拭き上げるのも、台所に立っているときのついでです。

 私は買い物をしてから、食材を仕分けしたり、ものによっては下ごしらえをしつつ片づけます。それは「名前のない家事」そのもので、ときどき大きな負担を感じますが、それ一つで食材が長持ちする、いざ料理するときにラクになることを知っています。マルシェの類に行った後は、片づけつつそれを食べる・飲むときを想像してにんまりしているときもあります。そのときの気分次第で、「働いてめんどくさい」こともあれば、収穫物を眺める趣味的な気分のときもあるのです。

 お互いが「これをやっておけばあとがラクになる」「気持ちよく暮らせる」と自主的に行動する。そのことが、名前のない家事をやる一番の動機です。それはやっぱり、長年それをサボったり負担が重くてつらくなったり、ケンカしたりと積み重ねてきた結果です。私たちは一緒に暮らして19年です。そりゃー学習しますよね。というか、学習しない人がいるから、たぶん「名前のない家事」の負担感は大きくなってしま野かもしれません

家族に、手を出させていないのでは?

 料理は買ってくる、外食することが可能です。掃除も外注が可能です。洗濯もある程度はクリーニングという外注ができます。でも、「名前のない家事」は外注できません。気がつかない人はやりません。やってもらうためには、細かく指示して分担させる必要があるかもしれません。そういう指示を出すことも結構めんどくさかったりしますよね。「えー!めんどくさい」と抵抗にあうかもしれませんし。

 家族のほかのメンバーに自主的にやってもらうには、その人に自分も家事の担い手だと自覚をもってもらい、自分で考えてやってもううことが一番です。実は夫がやってくれているコンロの拭き上げ、クイックルワイパーなどの作業は、私が掃除を苦手でめんどくさくて気がつかなかったことが大きい。「いくら言ってもこいつは分からないから、俺がやる」と思ったのかもしれません。いわばケガの功名です。

 完璧すぎる奥さんは、もしかすると家族が家事に手を出させない人かもしれません。なんでもやってくれるし、気がつくから、他の人が手を出す必要がなくなっている。実は奥さんも負担に思っているなら、ちょっと手を抜いてみる、弱みを見せるなどの工夫が必要かもしれません。ふだんグチを言わない人であれば、あえてちょっとグチってみる。

 少なくとも、脱いだものを片づけるなど、自分のことは自分でやってもらいましょう。それだけでずいぶん「名前のない家事」は減ります。そのあたりについては、次回改めて。

 

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