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理想のキッチン探し⑬・上井草

 8月31日の月曜日、西武新宿線の上井草に、97㎡、1戸建てという物件が出たので観に行きました。上井草は以前、あっという間に築40年余りのマンションの部屋を持って行かれて断念した地域。何しろ、ここはちひろ美術館があって何度か訪れたことがある町です。石神井公園が近く、閑静な住宅街の雰囲気は好きでした。そして夫が調べてくれて分かったのは、西武新宿線は中央線と平行に走っていて、自転車などを使えば中央線沿線にも遊びに行けること。上井草の物件からは、ほぼまっすぐ行った先に西荻がある。

 練馬区は都区内でも農業が盛んで、直売所も多いんだそうです。石神井公園の駅前は、郊外型のショッピングエリアでもある。買い物も便利、落ち着いた雰囲気もいい、しかも万が一電車が止まったときの選択肢もある。しかも、物件の近くに最近スーパーのいなげやとドラッグストアもできたとかで、「あ、醤油が切れてた!」「トイレットペーパーがやばい」というときはすぐさま買いに行けるんです。理想的な立地ではないですか。

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 築年数は17年で元々はおばあさんが住んでいて、その後借りたのが5人家族。住んでいた人の気配は少なめです。庭があって、とにかく広い。収納が何もない10畳の洋室が2階にあって、そこは本を置き放題。隣の洋室は8畳で収納がぎっしり入っています。全室エアコン付き。玄関の下駄箱も、5人家族の全員分が入る巨大なのが後付けで入っています。窓からの景色も、住宅が周りに密集している割には開放感があります。何といっても1階和室の奥に広めの3畳ものサンルームがあって、くつろげそうです。

 問題は、水回りの動線とキッチンです。間取り図を観ていた段階では、トイレ、洗面所・風呂がくっついていて、たとえばトイレのドアを開けたらキッチンの入り口をふさぐんじゃないかと思われたこと。実際に行ってみると、トイレのドアを全開にしても人一人通れるぐらいのすき間はあります。トイレを出たら一度玄関側に引っ込まないとドアを閉められないのですが、まあそのぐらいは慣れるでしょう。

 洗面所も洗濯機がギリギリ置けるスペースで、上にしか収納が置けないので、タオル置き場を作ったら、念願の乾燥機が置けない、それかタオル類は別に収納するか工夫が必要です。何しろ雨がこんなに多い気候になってしまった近年、洗濯乾燥機は必需品になっているのではないかと思います。

 そしてキッチン。写真で見た時から若干気になっていたんですが、何しろ上井草。その前に観た蓮沼の物件がとても残念な感じだったので、期待もありましたが、やっぱり、気になっていた通りだったんです。

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L字型キッチンは、一般的にコンロとシンクの距離が近く、調理台が広くてコーナーに家電などが置けるところです。ただし、コーナーの収納は使いづらい。夫の実家がL字型です。

 ところがこのL字型キッチンは、その利点を完全に失っています、狭すぎるため。調理台に使えるシンク横は35センチ、コンロ横は43センチ。コーナーに立ったら狭くてちょっとしんどい。まな板をシンク上に置くしかないかもしれません。幸いシンク回りはフラットです。そのシンクも幅53×奥行41センチで現在の部屋のものより一回り小さい。3口コンロは結構傷んでいましたが、それは交換可能だとのこと。コーナーの収納は、なぜか右手奥が開放できないようになってい使える扉がとても小さく、デッドスペースにするしかなさそうです。そして、調理台面積が狭いので、電子レンジは置きづらい感じ。せいぜい炊飯器ぐらいです。夫の実家は電子レンジと大きな炊飯器を並べ、隣に洗い篭を置いていて、調理台はコンロ横ですが、十分なスペースがあります。

 食器や鍋類、電子レンジは別置きの棚が必要です。それは置けるとして、置いたらダイニング側が狭くないかも心配しました。テーブルのサイズを測ってくるのを忘れていました。そして冷蔵庫をどこに置くか。コンセントがいっぱいあるのが、キッチンと反対側の壁ですが、いかにも遠い。食材の一時置き場に動かせるワゴンを導入するとか。あるいは、コンロ横の壁にコンセントを開けることも可能だって、不動産屋さんはおっしゃってくださいます。

 実は、夫は不動産屋さんの応対の良さもこの物件に惹かれる理由として挙げていました。今まで観てきた物件はどれもチェーン店が紹介していて、ある意味ぞんざいな対応でした。何しろ彼らは成約数が大事なんですから。でも、今回のは管理物件を持つ地元で70年もやってきている3代目の不動産屋さん、とても親切で、地元に根付いて仕事をしている人ならではの温かさと落ち着きがありました。

 でも、いろいろ難があるのは確かなので、一度家に持ち帰ることにしました。帰り、すてきな古本屋があって、最近器や布にも興味が出てきた私は、そのジャンルの本と、フェミニズムの本もたくさんあったので、そのジャンルの本と、何と4冊も買ってしまいました。そして、すてきなカフェもある。どちらの店も中央線的なカルチャーな雰囲気があります。自家製クラフトコーラとアイスケーキをいただきながら、2人でいろいろ相談しました。

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 家に帰ると、ディノスのカタログと相談です。収納の選択肢はさすがにたくさんあります。調理台にもなる横置きの引き出し付きのものには、炊飯器を使うときは台を引き出せるようになっています。背が高い細長い収納もあります。トースターを置ける移動式の台もあれば、根菜類を入れられるラックつきのものもあります。そういえば、結婚したときに買った野菜ボックスつき棚はもうボロボロです。

 でも……あのコーナーの狭さ、調理台の狭さ、シンクの狭さ。どうしてあんなに広い物件なのに、水回り及びキッチンのスペースがあんなに狭いのか。「居室の広さを取ったみたいなんですよね」と不動産屋さんは言っていました。きっともう料理はどうでもよかったんじゃないかと思われる狭さなんです。ちなみにダイニング側のスペースは確保できそうでした。

 キッチンだけが難があるんだから、そこは目をつぶって、という話まで出ます。理想のキッチン探しの結論がこれでは、というと、いやいやそんな企画よりも実生活だろうという話になります。何しろ町はむちゃくちゃ魅力的なんです。

 ディノスに首っ引きでうんうんうなっていたところ、夫が、「でもあの物件は手間がかかる。庭の草むしりはしなければいけないし、実はお風呂の位置がお年寄り仕様で低めでシャワーも高い位置に置けない」と言い出します。先ほども書いたように、洗濯機置き場も狭い。キッチンはストレスを感じるだろうことが予想できます。考えてみれば、私はずっとキッチンに難がある物件にばかり住んできました。1人暮らしのときからだと四半世紀。狭くて小さい。調理台が低い物件は16年。今回の引っ越しが最終結論出ないにせよ、よりよくしないことには、妄想ばかりが大きくなります。例えば3口コンロにすれば調理の効率は断然上がって料理が楽しくなるに違いない。調理台が広くなったらやっぱり楽しくなるに違いない。もう今の問題が解決すれば万能であるかのように……。たとえ、企画より実生活と考えても、その実生活の解決したい大きな問題を一つも解決しないで引っ越しするのはどうなんでしょうか?

 そして結局、断りました。頭の中にちらちら浮かぶのは、港北ニュータウンで最初に観たURの物件です。あれがどうしても頭から離れません。手に入る金額で使い勝手をきちんと考えたキッチンがある。あるのに……今、物件は次々と出てくる時期です。当分、この旅は続きそうです……。

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