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家事を誰に教えるべきか

 家事の分担について、ある30代の主婦の方たちにお話をうかがってみたら、旦那さんがまったく関与しない、とちょっと怒りながら話してくださいました。彼女たちが主婦ということもあるのでしょうが、「せめて階下に持って降りたものぐらいは、後で自分で戻せるようになってほしい」「せめて子どもたちが将来同じようにならないようにしつけます」と。彼女たちのような夫婦は多いのかもしれない、と思う一方、今後が心配になりました。

 ちょっと歴史を振り返ってみましょう。昔、「家のこと」は、家族全員が取り組んでいました。昭和半ばに機械化が進むまでの農家では、お父さんは薪割り、子どもたちは料理の下ごしらえを手伝う、かまどの番をするといった役割を持っていたのです。家電が普及し、水道やガスが各家庭に通る前は、家事は手作業で一日中かかる大仕事でしたから。

 家事を教え、手伝わせることもしつけの一環だったから、もしかすると子育ては楽だったかもしれません。親がしている仕事に参加していることが分かるから、子どもは自分の役割に納得しやすいのです。

 子育てがいろいろ面倒になったのは、大人が身体で示せないしつけがふえたからかもしれないなと思います。

 最初にご紹介した例だけでなく、結婚している女性から、夫が家事・育児に参加しないという悩みはよく聞きます。冒頭の女性もそうですが、たいていの場合、その夫は父親が家事・育児に参加しない姿をみて育っています。農業社会からサラリーマン社会になった昭和半ば以降、夫が稼ぎ、妻が家のことを全部引き受ける家庭がふえたからです。そういう家庭で育った男性には、男が家事や育児をするイメージが持ちにくいのかもしれません。

 平成になると、共働きの女性、共働きを望む女性がふえました。「家のことを全部やれるなら働いてもいい」なんて上から目線で言うお父さんたちと違い、平成の男性はそんなことは言わないでしょう。でも、残業や休日出勤が多い人もいて、夫たちが家事をしない傾向は変わらないのです。妻たちは自分が忙しいときに、何も手伝ってくれない夫にいらだち、あるいは家事を知らない夫にあきれます。

 せめて子どもだけは家事を一通りやる大人に育てたい、と思うのは自然なのかもしれません。でも、子どもたちは家で働かないお父さんをどう思いながら育つのでしょうか。サラリーマンのお父さんだったら、仕事をするお父さんの姿は見ることがありません。「自分のことは自分でするのが当たり前」と言うお母さんの言葉と合わないお父さんの姿を、どう思うでしょうか。

 夫に対する不満を愚痴れば、子どもは父親を尊敬しなくなるかもしれません。結婚にいいイメージを持たないかもしれません。そして夫たちは将来、子どもに身の回りの世話をさせてしまうかもしれないのです。先のことを考えれば、面倒かもしれないけれど、お父さんに少しずつ家事参加してもらうほうがいいと思いませんか。せめて一人のときに自分の世話をできるぐらいに。奥さんだっていつも健康で家にいるとは限らないのですよ、とわかってもらいましょう。

 お父さんも家のことに取り組んでいけば、もっと家族の絆は深まるのではないでしょうか。だって家族は運命共同体。みんな人生の荒波を乗り切る仲間なのです。

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