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やる気を奪うキッチン

 あなたの家のキッチンは使いやすいですか? 狭いですか? それとも広すぎますか? コンロの数は十分ですか? 実は台所の使いやすさも、料理をするしない、あるいは得意不得意にかかわっているように思います。

調理台が狭すぎるわが家

 トップの写真は恥ずかしながらうちの台所です。下が切れてしまっていますが、水切り籠を置くと、調理台のスペースはわずか24センチしかありません。まな板1枚を置くのがやっとです。

 昨日、慌てていたこともあり、狭い調理台に汁椀を置き、味噌汁を入れようとしたところ、鍋の持ち手に手が引っかかってひっくり返してしまいました。味噌汁が半分床までこぼれ、とても情けない気持ちになりました。そのとき、心の底から思いました。「もう少し広いキッチンが欲しい!」。

 本当にこの狭い調理台には閉口します。まな板がシンクに飛び出す状態で、不安定なところで野菜を切ることもしばしば。よく野菜はシンクにこぼれてしまいます。

 もちろん、水切り籠を別のところに置いておくこともできます。夫は後ろの電子レンジの上によく置いて作業しています。でもその位置はちょっと高いし、私はよくボウルを使った端から洗っていくので、別の場所に置くと洗ったものを置くのに不便なのですね。だから、狭い調理台でまな板を使わざるを得ません。ときどきそのためにイライラしながら料理しています。

キッチンの設計をするのは男性たち

 日本で企業を支えてきたのは男性たちです。キッチンも、男性たちが設計し製造してきました。少しは女性も入っているのでしょうが、キッチン業界の人に聞いたところ「今も男性がほとんどです」とのことです。

 料理する男性がまだまだ少数派であることを考えると、設計者たちが日々台所に立っているとは限りません。仕事の現場ではユーザーではない人たちが商品開発することは普通のことですが、キッチンに関して切なる願いは、使い勝手を考えてほしいということです。

都会のキッチン事情

 私は一人暮らしの時代も含めて、4つの賃貸物件でキッチンを使ってきました。まあどこも狭いです。一人暮らしを始めるときは、とにかく二口コンロが置ける部屋、というのをポイントに選びました。90年代の大阪市でしたが、IHコンロで一口だけ、という物件はたくさんありました。それでは料理しなくなるだろうと思いましたが、たぶん1口コンロで暮らしている独り暮らしの人は今も多いと思います。

 調理台の狭さも、どこの台所でも感じていました。家賃が高い都会では特に、キッチンの広さを確保することは優先事項ではないようです。「調理台が狭い」と嘆くと、都会の賃貸暮らしの人には「わかるわかる」とよく言われます。

 また、最近はテレビCMを見ていると、掃除しなくていい換気扇が次々と登場していますが、賃貸暮らしの私は遠い目をしてみてしまいます。賃貸だと、換気扇は選べないんですよね。もちろん、古すぎるタイプの換気扇がついている物件を避けることもできますが、それだけで部屋を選ぶわけではないですから、掃除にうんざりしながら、あるいは汚すのがいやでキッチンをあまり使わないで暮らす人もいるのではないでしょうか。

 調理台の高さも賃貸だと選べません。私が結婚して最初に住んだマンションのキッチンは、入れ替えたばかりで比較的使いやすい高さでしたが、その後引っ越した先は、二つとも身長150センチ台の人を想定しているらしく、160センチ越えの私には低くて腰が疲れます。

 170センチ越えの夫はもっとつらいらしく、料理してから「腰が痛い」と訴えることもしばしばです。あっていない高さでする料理が苦痛になる、とキッチンを使わない男性は、もしかして多いのではないでしょうか?

広すぎるのも困る

 かといって、広ければいいのかというとそうではありません。昔、キッチンについて勉強したことがありますが、一番いいのはコックピット型。つまり必要なものが手を伸ばせばすぐ届くことが大事だそうです。火を使っている最中に調味料を取るなど、一刻の猶予も許さない場面が、料理中はしばしばあります。いちいち歩いて行って取る、あるいは戸棚を引っ掻き回さないといけないなら、料理を失敗する、やる気が萎えてしまう危険があります。

 昔の土間の台所を改善する現代のキッチンを開発したのは女性ですが、彼女はまず動線を調べたそうです。昔の土間の台所だと、農作業の続きで大量の野菜を洗ったり漬け物に漬けたりするので、広い空間があったんですね。でもそのために、ふだんの料理は土間に降りたり板の間で作業したりと、何度も履物を脱ぎ期しなければならなかった。

 道具もあちこちにあるので、歩き回らなくてはいけなかった。しかもまな板は足つきでしゃがんで使わなければならなかった。立ったり座ったり歩いたりと、主婦は大変な労働を強いられていたのです。

 現代の私たちはそこまで大変ではないかもしれません。でも、あなたが料理をわずらわしく感じるのは、もしかすると、キッチンが使いにくいからかもしれませんよ。

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