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かき揚げ失敗の巻

 皆さんはふだん料理するとき、どのぐらいレシピを参考にしていますか?私はふだん、レシピは見ません。適当にある食材を使って、炒める、煮る、和えるなどの単純な料理をするだけです。仕上げが簡単なサラダなどは、ちょっと手間をかけて食材を下ごしらえすることもありますが。

 しかし、レシピは食のトレンドや歴史を調べる仕事の材料になるので、資料として読むことはよくあります。ちょうど今、家庭料理のトレンドを書く仕事があって、有元葉子さんの『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』を再読していました。

 「レシピは参考にしない」と言いつつ、そうやって仕事でレシピを読んでいるうちに、書いてある料理を作りたくなることはあります。今回もそういう感じで、「かき揚げを”味方”につけましょう」という項目を読んでいるうちに、かき揚げを作ってみたくなったのです。その結果が、上の写真です。

中途半端にレシピを読んではいけない

 食材に小麦粉をまぶし、湿らせる程度に水を加える。私はこのあたりの記述の、卵を使わないこの衣の考え方に驚き、試したくなったのです。

 でも、私は有元さんが書いている通りには作りませんでした。頭の中には「卵を使わない」ことしか残っていません。実は天ぷらを作るとき、卵1個分を使う衣を作ると、大量に揚げないと衣が残ってしまうのを難点に感じていました。

 わが家は2人暮らしです。しかも壮年と言ってもいい年頃。大量に食べるわけではありません。天ぷらを作ると、3回分ぐらいできてしまいます。でも揚げ物をあまり長く残すのも心配なので、2回で食べきる。そうするとお腹がパンパンになってしまうのです。それに料理にも時間がかかるし、キッチンペーパーは大量に使うし、台所も汚れてしまいます。それで、年に1回も作らない料理になっていました。

 「卵を使わなければ、大量に作らなくても大丈夫なのでは?」と思った私は、ちょうどスーパーで大量に売っていた根三つ葉に、タマネギ、シイタケ、エビを加え、かき揚げを作ってみることにしたのです。実はかき揚げは初めての挑戦です。何も考えずにボウルに小麦粉を振り入れ、冷蔵庫で冷やしていた水を加えて混ぜます。そこへ野菜を投入して和えていきます。その工程がまず間違っていることに、今朝有元さんの本を読み返すまで気が付きませんでした。

 小麦粉が足りないので、上からまぶして水を加えます。そこで初めてレシピ通りなわけですが、そのときの私は気づいていません。で、お玉でそのタネをすくい、熱した油に投入します。厚みがあるので、途中でひっくり返します。そのときも崩れそうで大変です。味噌漉しの平たいザルと菜箸で何とかひっくり返しますが、ばらけるのが心配なので、茶色くなる前に引き上げてしまいました。

 実は揚げ物に時間がかかることを想定しておらず、予定していた食事の時間が過ぎて焦っていました。何とか形だけは整えたかき揚げは、しかし今にも崩れそうです。二つ目はばらけてしまいました。

 いつもなら、揚げ物はまずキッチンペーパーで油を吸わせたあと、やはりキッチンペーパーを敷いた皿に移して盛り付けていくのですが、今回は動かすたびに少しずつ壊れていくので、油だらけのキッチンペーパーごと皿に移します。

 そういった焦りと経験がなさすぎることで、何だか油っぽい、サクサクとしていないかき揚げになってしまったのです。そもそもなぜ、茶色くなるまで待てなかったのでしょうか……。きっと、思った以上に油を吸うのに焦ったのです。「油がもったいない」そのせこさが失敗の元かもしれません。

焦りは禁物

 有元さんの本には、揚げ終わった後の天ぷらの管理までは書いていません。崩れやすくて重ねることが難しいかき揚げを、どう並べるのか。皿やバットではなく、オーブンの天板を使ったほうがよかったかもしれません。

 そもそも、ボウルいっぱいに食材を使ったことが間違いかもしれません。何しろ私が作ったかき揚げは、直径10センチぐらいで6個分もあったのです。卵を使ったってたぶんこのぐらいの量にはなったでしょう。それなら最初から卵を使った衣でもよかったのでは? 

 なぜ作ったこともないかき揚げに挑戦し、失敗したのか。それはひとえに、有元さんの本が楽しそうで簡単そうに思えたからです。かき揚げ初心者の私には、同じようには料理できないのです。

 レシピを読んで初めての料理に挑戦するときは、ちゃんと初心者の気持ちになって真剣にレシピに向き合い、書かれてある通りに作らなければなりません。そして、その料理の達人である料理家さんと同じようにはできないことを、覚えておかなければならないのです。

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