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夢のキッチン・その5

 前回は、作業場の狭さから憧れのキッチン像について書きました。

 今回は、一時置き場について書きます。トップの写真は、今のキッチンになってから私がこしらえた一時置き場です。わが家で何かと重宝している棚が、ルミナスシリーズです。これをキッチンその他あちこちで使っています。適切な大きさについて計算するのがちょっと面倒なのですが、東京の狭い住宅の条件下、リアルの家具屋さんにはなかなかないサイズの棚がつくれるので重宝しています。しかも通常の収納家具より割安。

 写真の棚は、キッチンの全体像を描いた回でも少し紹介しました。

 ここは、買いものをしてきたときに、買ってきた食材をとりあえず置く場所です。ちょうどこの反対側に冷蔵庫があるので、置いた袋から、野菜は野菜室へ、肉類はチルドケースへと移し替えます。これがあると買ってきた袋を腕に下げて収納したり、あるいは床に置く必要がありません。

 出汁を取った鍋を冷ましておくときや、調理済みだけど今回は食べない料理の鍋を置いたりできます。ギョウザやお菓子をつくるなど、作業台を全部使うときに、洗い籠を置いているときもあります。

 作業台のときにも書きましたが、キッチンは働く場所なので、作業しやすいようにモノを置くスペースを十分確保することが、効率的に上手に作業するうえで必要です。

 狭いところに重ねてモノを置いていたり、ぎゅうぎゅう詰めに置いていたら、必要な時にすぐにそれを使えない。下手をすると落としてしまいます。ボウルをひっくり返せば食材が飛び散って、場合によっては食べられなくなる。お皿に食材を入れていたら、お皿を落として割ってしまうかもしれません。そんなときは、とても情けない気分になりますし、続けて作業したくなくなったりします。そんなところに置いた自分が恥ずかしいと思うかもしれない。でも本当は、ちゃんと余裕を持ってモノを置くスペースがないのがいけないのです

一時置き場は必要

 料理が上達するには、一時置き場は必要です。なぜなら、ちょっと手間がかかることをやろうとすると、あるいは何品か並行してつくろうと思えば、鍋一個では足りなくなってしまうからです。

 実はこのことは、作業台にも言えます。確か『料理上手の台所』にも書いてありました。洗いものがふえることを恐れず、ボウルをいくつか使うようにすれば、料理は上手になります。私も以前は、なるべくボウルを使わずに料理しようとしていましたが、あるとき惜しまないでボウルをいくつも使うようにしたら、段取りが早くなり、そしてたぶん味も向上しました。

 分かりやすいので、再び筑前煮を例に出します。これは固さの異なる野菜を順番に炒めてから煮る料理です。一度に素材を入れないほうがおいしくできるので、ゴボウ、ニンジンなど、切った素材を別々にボウルに入れておけば、手を離せない炒め物中に、ボウルごとざざっと素材を入れるだけの作業で済みます。

 素材を何種類か使う炒め物でも同じです。私は肉野菜炒めをよくつくるのですが、例えばナスとニンジン、シメジを豚肉と一緒に炒めるとしましょう。ナスは切ってしばらく水に漬けてアクを出しておきます。その後ボウルに移し替えつつ水を捨てます。

 ニンジンは固いので早めに切っておきます。ニンジンは最後に切ればボウルを使わずまな板にそのまま載せておけますが、もしニンジンを切った後に肉を切る必要がある場合は、ボウルに入れます。肉は切り落としを買っておけば切る作業を省けます。

 しめじはパックから取り出して石突を取ります。パックの汚れを除いておけば、ここに戻せばボウルを使わなくてすみます……結構私は今も、ボウルをあまり使わないようにしてしまっていますね(笑)。でも、こうやっていろいろ広げるには、やっぱり作業台が広めの方がいいこともわかりますか?

 肉をまず中華鍋で炒めて味をつけ、色が変わったらいったん肉が入っていたパックに戻します。肉汁を鍋に戻し、それからニンジン、ナスを順に炒めます。だいたい炒め終わった頃に肉を戻し、シメジを加えて全体をよく混ぜ合わせて仕上げます。

 鍋の一時置き場が欲しいなというのは、案外サラダをつくるときです。「サラダなんて材料を合わせて、食卓でドレッシングをかければ終わりでしょ」って思っていませんか? 私のサラダは違います。何といっても野菜好き。そして夫は固い素材を苦手としています。だからサラダは下ごしらえが肝心です。アスパラやスナップエンドウは茹でておく必要があるし、キュウリは板摺して塩を入れておく必要があります。サラダスピナーがないわが家では、葉野菜も早めに洗って乾かしておきたい。こんな風にいろいろな下ごしらえものがあふから作業台、一時置き場は必須なのです。

 そして全部が揃ったら、レモン汁・塩・オリーブオイルをさっと混ぜたボウルに入れてよく混ぜます。こうしてあらかじめ混ぜておくと、素材がよくなじんでおいしくなるのです。私はレタスが苦手なのですが、油を使ったドレッシングでよく混ぜておけば案外食べられるのです。

 和風サラダはもっと手間がかかります。かけたいだけなんですが。例えば、ささ身とキュウリの梅和え。ささ身は小鍋でゆでて冷ましておきます。汁はスープに使うのに取っておきます。このとき、別のコンロは使っているかもしれないので、小鍋置き場が必要です。

 ゴマをすり鉢で摺ります。梅干しを入れて種を取り除き、再びゴリゴリやります。醤油を加えてさらにゴリゴリ。キュウリは板摺しておきます。ミョウガを小鍋でさっとゆで、アクを取り除きます。大葉を洗って水を切り、細く切ります。ミョウガを粗みじんに切ります。ささ身を割きます。

 キュウリを半分に割って、5センチ長さに切り、細切りにします。キュウリ、ミョウガ、大葉をすり鉢に入れて和え衣を絡めます。ボウルに移し替えます。ささ身を加えてよく混ぜ合わせて完成です。これは冷蔵庫で2~3日持ちます。

 小鍋が二つ登場しました。それを置いておく場所が必要です。もし、サラダを作っている間にほかの料理もすすめている場合は、その置き場も必要です。前にえらくヒットした記事で書いたように、蒸し物も私は好きです。

 蒸し物は簡単なのですが、鍋がかさばります。和風のサラダのときは、カボチャ蒸しなんかも似合いますが、この鍋も、ほかの料理を進めている場合は置いておきたいときがあります。もちろん、カボチャをさっさと蒸してしまい、お皿に移し替えればいいのですが、温かいまま食べたいときは、できるだけ長く鍋の中に置いておきたい。となると、かさばる鍋をどこかに置いておきたくなります。和食は何かと下ごしらえが多いので、作業場も必要なのですね。

 そしてこのひと手間の連続が、多くの人を和食から遠ざけているようにも思えます。気持ちに余裕がないときは、ひと手間を省きたくなりますから。そして、和食だとカロリーが少なめの料理が多いので品数を稼がなければならなくなる場合も多いのです。

 前の家に住んでいたときは、キッチンが独立型でなく、すぐ後ろにダイニングテーブルがあったので、テーブルを一時置き場にしていました。買ってきたものもテーブルに置いて冷蔵庫に入れ替えていました。独立型キッチンの今は、テーブルに行くには一回りしないといけないので、作業台にするには向きません。となると、でも、前の部屋だとダイニングテーブルからキッチンが丸見えなので落ち着かないし、お客さんが来たときは恥ずかしかったです。となると、理想はアイランドキッチンですね! これがあれば、作業台も一時置き場も十分確保できたうえ、ダイニングとは別なので、ダイニングでくつろいでいる人は作業を見なくても済むのです。



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