頭ぽんぽんの成長

以前母が嬉しそうに語ったことがある。

「お兄ちゃんがね、泣いてうずくまってる女の子(施設の子)に頭ぽんぽんしたんだって」

私の兄は自閉症。
自分で施設に行くと決めてから毎日楽しそうに働くおっさんである。

施設には同じく「障害」と言われる人達がたくさんいて、一緒に生活している。人とたくさん関わる環境など兄にとっては小学校以来だろう。

兄は昔から笑顔がとても可愛かった。
私が産まれる前に死んでしまった祖母の妹は兄のことをずっと天使のようだと言っていたそうだし、地域の小学校に進学した兄は先生たちからも同級生からも可愛がられ、兄の妹と言うだけで近所に住む兄の同級生から私まで可愛がられて遊んでもらったものだ。

しかし、自閉症の兄なだけあり人とのコミュニケーションは苦手。自分がやってもらいたいことなどあればアクションはあるが、基本的には自分の世界の住人である。
テレビを見て、お絵かき帳に絵を描いている時間が家でも多く、でもその独特な世界観が私は好きだった。

施設に入ってから人と関わることの多くなった兄だがそれでも我が世界は変わらず、自分に関係の無いことには興味が無いし、他の利用者さんみたいに他の御家族には挨拶以外するところなど見たことがない。
そんな兄の頭ぽんぽんとは!
私も耳を疑い、え!?と声を上げた。

兄はこんなにも愛されて育ち
成長はゆっくりだけど
それでも受けた愛を返すことのできる
立派なおっさんになった

兄の周りの人は言う。
「いないとなんかダメなのよね」
祖母の妹が可愛がった「天使」は今みんなのアイドルとして毎日仕事に励んでいる。

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