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役所あるある「年末にお金使いきるために舗装をめくって敷いてを繰り返してるやろ!」

結論は「そんなわけない」です。
でもこのご指摘が結構多いのです。
誰が拡散したのか知らんが、ほんとにみんなに刷り込まれてて、いろんな人に同じこと聞かれる。
まあ見た目がそう見えちゃうので、ちゃんと説明しないとですね。

まず、職員の立場として、
単にめくったり敷いたりすることが、税金の無駄遣いになることくらい常識やし、予算が余るくらいならほかに使うところいくらでもあるってことも常識です。なのでお金を使い切るという考え方は「今は」ないです。
「昔は」知らないですが・・・

でも、道路工事なんて誰でもが携わるわけではない。
なので見た目には確かに何度も何度も同じところのアスファルト舗装をめくって(撤去して)は、またアスファルト舗装を敷いて(敷設して)いるように見えますよね。

じゃあ、なぜそういうことが起こるのか。その原因は大きく3つあります。
①地下埋設物(道路の下に埋まっているもの)の種類が多いこと
②大きな影響がある事故をしないため
③交通渋滞を極力おこさないため
です。順番に簡単に解説していきます。

①地下埋設物(道路の下に埋まっているもの)の種類が多いこと

まずはこれ。道路は交通のためだけではなく、道路の下にいろんなインフラを配置する役目があるのです。
実際に道路下に埋まっているものとして、「水道」「下水(神戸は汚水と雨水に分かれている)」「ガス」、「電気」と「通信(NTT、ケーブルテレビ)」、さらに「信号機のケーブル」などがあります。

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↑↑参考「DUOMAP(地上・地下インフラ3Dマップ)」↑↑

そして、それぞれ所有する会社が違いますね。神戸の場合は水道・下水は市役所、ガスは大阪ガス、電気は関西電力、通信はNTTやJ:COMなど。

それぞれ配管を入れた時期も違いますし、老朽化して配管を入れ替えないといけない時期も違います。さらに新しい住宅や工場が建てば、そこにインフラを繋げるための工事も発生します。

つまり、いろんな配管がいろんなタイミングでバラバラに工事に入るということです。

②大きな影響がある事故をしないため

次はちょっと分かりにくいですが、「試掘(しくつ)」というものがあります。呼んで字のごとく「試しに掘ること」です。
例えば道路舗装の下にあるガス管に向かってバックホウでいきなり掘ったら、たぶんどこかのタイミングで配管にぶち当たってガス管が破裂し、ガスが漏れ、爆発する恐れがあります。

道路工事で地面を掘る際には、必ずデータでどこにどんな管が埋まっているかを確認します。しかし昔に埋められた管は実際にはデータと異なる場所に埋まっていたりしますので、安全のためには実際にそっと掘ってみるしかないのです。

「ここにあるはず」と言う場所を推測して、2m×2mとかの小さめの穴を掘るのが試掘なのです。

試掘

この作業を何か所かやって、ようやく工事を予定している場所の地下のどの場所にどんな深さでどの大きさのどの会社の管が入っているのかを確認して図面を作成するのです。

そして試掘をしたあとはとりあえず埋めます。埋めないと道路に穴が開いたままになって危険ですし、車も通れず渋滞が起こってしまいます。

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次に工事に入るときに分かるように配管の情報を道路表面に書いています。
そして注目は「仮ホソウ」の文字。
上の写真は分かりやすいですが、わざわざレンガブロック舗装(インターロッキング舗装といいますが)に戻さず、すぐにまた工事で掘るので簡易な舗装(道路によって厚さ3~5㎝)で済ますのです。

「何度も掘っているなあ」と思ったら舗装を除いてみてください。「仮ホソウ」とか「仮舗装」の文字が見えるかもしれません。

③交通渋滞を極力おこさないため

これは、説明できる図やイメージを探したけど、なかなか見つからない。
要するに、工事期間中ずっと道路閉鎖していても良いのなら、全部一気に舗装はがして、一気に掘って、一気に舗装すればいいんだけど、迂回路とか設定すると、迂回路に建ってる家から苦情が来たりとか、そもそも迂回路が設定できないとかもある。

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なので、今ある道路の空間をうまく使って、片側だけ工事して、反対の片側工事して、真ん中は夜中に通行止めしてやる。みたいなことをやっているわけです。ちなみに今の3手くらいで片付くなら超単純。だけど途中でガードレールやり直さないといけないとか、溝を作り直すとか、白線もかかないといけないとかで、何十手とかかる場合もある。

なので②でも話に出てきた仮舗装を使いながら何度も何度も舗装をはがしたり敷いたりするわけですよ。

まとめ

ということで、工事業者さんはほんとに苦労しながら、安全のための手続きを事細かく遂行して工事をしているわけです。
イベントや市役所の委託を受けた業者さんが「市の手続きは複雑でややこしいし、わけわからない」と言われます。確かにその通りで直していかないといけないと思っています。
でも、土木工事はそれの比ではない細かさです。道路の一部を通行止めするだけでも、道路切り替えの手順と工程表の提出、ガードマンの配置計画、ガードマンの資格チェック、案内表示の配置計画、道路封鎖時間の申請(警察や道路管理者、バス会社、タクシー会社など)、信号の調整、緊急連絡網など、めちゃくちゃ資料ありますね。

ホント大変ななかやってもらっているので、「いつまで工事やってるねん!」とか「税金無駄遣いするなや」という気持ちも少し抑えてほしいですね。

追加情報(工事が年末に集中する理由)

これは、割と単純で(でも問題です)、役所の予算は年度ごとに決まるということが原因です。
新年度スタートの4月から予算が使えるようになるので、そこからまず測量業務の発注を行います。この道路をどのように工事するのかとか、アスファルト舗装が〇〇㎡でガードレールが〇m必要、などの数量を計算する必要があります。早くても3~4カ月かかるイメージです。そもそも業務を発注する手続きも含めると1カ月プラスして、4~5カ月かかります。

そのあとは測量業者が出してきた数値をもとに、行政職員が工事費の計算をします。「積算(せきさん)」といいますが、見積り合わせとか入札のためですね。これを漏らすと談合とかで捕まります。この作業に1~2カ月。

さらに、入札し、契約して工事業者を決めたら、工事業者は現場を見て必要な資材や下請け会社やガードマンを確保していきます。これに例えば1か月かかるとすると、合計で6~8カ月かかってしまうのです。

ほら年末・・・

最近は前年度に測量をやっておいて4月に工事のための入札から始めるなど1年を通して分散して発注できるように努力もしています。でないと工事業者も年末だけ忙しいとかで大変になるのでね。

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