チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(13)
カリーの森
パースを後にし東へ向かって走り始めてから2日目、雨が激しく降り始めた。前回雨が降ったのは砂漠の真ん中、アリス・スプリングを出発する日だった。バックの奥の方にしまい込んだカッパを取り出し久々に着る。ふと、前方に目を向けると、雨を弾くアスファルトの道を飲み込むように巨木の密生する森がどこまでも続いている。この辺りは地中海性気候で非常に雨が多いという。森の巨木はカリーと呼ばれる木で、高いものでは60mを超えるというから驚きだ。
(雨と森。オーストラリアにもこんな道があるのか。まるでカナダみたいだな。)
何処か懐かしい、昔走ったことがあるかの様に感じる道だ。
Manjimup(マンジマップ)から10km程度走ると、ダイヤモンドツリーと呼ばれている巨大なカリーの木があった。その木は幹に鉄の杭が打ち付けられており、登ることができるようになっている。丁度その頃、激しく降っていた雨がピタリと止んだ。
(登ってみるか……)
強風である上に、足場となる鉄の杭は先程までの雨で非常に滑りやすい。慎重に、ゆっくりと、落ち着いて、ダイヤモンドツリーを垂直に登った。足を滑らせてしまえば即死は間違いないだろうと思う。仮に生きていたとしても、辺りには誰1人いない。助けは来ないのだ。こんな危険なアトラクション(?)に自由に参加出来るというのは珍しい。
52m登った所にある展望台からみる風景は、360°の大パノラマで壮大であった。
と、言いたいところだが、実際には違っていた。この先僕を待ち受ける地獄のような自転車旅を暗示するかのように、曇天の空と霧のかかった薄気味悪い森がどこまでも続いていた……。
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