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チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(23)


ナラボー10日目
 
 出発して直ぐに悪い予感が的中してしまった。なんと、後輪に使用している古いタイヤの脇からチューブが飛び出している。それは丁度、車に跳ねられたカンガルーの死体から腸が飛び出している状態を思い起こさせるグロテスクなものだった。古いタイヤとホイールがぴったりと合わずに多少のズレが出来ており、その隙間からチューブが歪な形で顔を出している。このまま走るのは無理だと判断し、昨日取り外した変形しているタイヤを再び取り付けて、だましだまし走ることに決めた。
 とにかく、大きな街まで辿り着いて質の良いタイヤを購入しなければならない。
 
 オーストラリア南部にはロードトレインが多く走っている。巨大なトラックの後ろに何台ものトレーラーを連結させて、全長30mを越えるような車両が車道を走っているのだから驚かされる。僕が走っているナラボーは東に向かう車道も西へ向かう車道も、それぞれ1車線しかない。その上、車道の直ぐ外側は未舗装で、自転車のバランスを崩しやすく危ない。そんな道をロードトレインがもの凄いスピードで轟音を響かせながら走っているのだ。後方から轟音が聞こえたら素早く自転車から降りて路肩の未舗装部分に止まって、ロードトレインをやり過ごすしかない。始めの頃は、自転車から降りずに走り続けていたが、ロードトレインに追い越される時にトレイン側に吸い寄せられるような感覚があったため止まることに決めていた。それに、全長30mともなると、追い越されるまでに時間が掛かり、対向車が来たら大事故になるような気がしてならなかったというのもある。
 とにかく、自転車にとってロードトレインは危険極まりないものでしかなかった。
 
 ナラボーロードハウスの7km手前で、右手にある林に隠れて3日連続となる野宿。リオンはロードハウスのキャンプ場にいると思うのだけれど、僕は我慢して新タイヤの購入費を蓄えることにした。
 


 この日見た夕焼けは、僕がこれまでに見た夕焼けの中で最も美しかった。

 この夜、嵐に巻き込まれるとは想像出来るはずも無く、静かに沈む太陽を眺めていた。

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