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連結決算の一連作業①

本記事は、2021年5月10日にSuperstream様の『管理部の実務課題解決コラム』へ寄稿したものを、一部修正した上で再掲載しております。

連結決算の一連作業(その1)


(1) はじめに

株式会社アクリア、コンサルタントの成田です。

「連結決算の一連作業」について取り上げていきます。

・新規に子会社を設立したり、他の会社を買収したりして、初めて連結決算を行う会社の経理担当の方
・単体決算は何年も携わっていたが、ジョブローテーション等で初めて連結決算を担当することになった経理担当の方

を対象に説明させていただきます。

「連結決算って難しそう・・・。」と思われている方が多いと思いますが、連結決算の全体像を把握することで、連結決算に対する理解を深めていただき、皆様の業務の一助になれば幸いです。

連結決算の一連作業は、大まかなステップとして、

① 事前準備
② 連結パッケージ入手時の作業
③ 連結仕訳の入力
④ 事後検証

があり、今回は①事前準備、次回以降は②連結パッケージ入手時の作業、③連結仕訳の入力、④事後検証を説明します。

(2) 連結決算とは

連結決算とは、親会社を含む企業集団(企業グループ)を「一つの会社」とみなした財務諸表(連結財務諸表)を作成する決算業務であり、親会社の経理担当者が行う業務です。

連結財務諸表は、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結株主資本等変動計算書などがありますが、単体決算と同様に連結貸借対照表、連結損益計算書の2つが最も大事な書類です。

「連結決算では何をするか3行で説明して下さい」と言われた場合、

①「各社からデータや書類(連結パッケージ)を集め、」
②「各社の財務諸表を合算し、」
③「各社間の取引を消去する。」

というのが答えです。

(3) 事前準備

ここでは、決算前(3月決算の会社であれば、3月までに。)に行うべき作業を列挙します。

① 情報収集

経理業務全般に言えることですが、連結決算においても情報収集が非常に大事です。

例えば「当期からX社が子会社になった。」という事実がある場合、本来であれば、「X社を含む」連結財務諸表を作成しなければなりませんが、「当期からX社が子会社になった。」情報を連結決算担当者が持っていないと、「X社を含まない」連結財務諸表を作成してしまう虞があります。

このため、連結決算担当者は、他の経理担当者のみならず、役員などの上席者、子会社経理担当者、経営企画担当者などの方々と密にコミュニケーションを図ることで、常に企業グループの動向(特に組織再編等)に気を配る必要があります。

② 連結パッケージの作成及び送付

連結パッケージとは、連結決算を行うためのデータ収集用のフォーマットのことです。

親会社の連結決算担当者は、連結パッケージのフォーマットを作成した上で、親会社及び子会社の単体決算担当者に送付します。一方で、親会社及び子会社の単体決算担当者は、当該連結パッケージを受領したら、必要な情報を記入した上で、親会社の連結決算担当者に返信します。

なお、連結パッケージは、「個別財務諸表」「相手先別の取引明細」「勘定科目ごとの増減明細」などがありますが、その時々で取引内容や有価証券報告書等で開示する内容が異なりますので、用意する連結決算パッケージは随時、追加・削除・アップデートが必要です。

③スケジュールの作成

連結財務諸表は、開示書類(有価証券報告書、決算短信、計算書類)で使用するだけではなく、社内の定期的な会議体(取締役会、経営会議等)で使用することも多くあります。
このため、単体決算と同様に、連結決算でも決算関係者(企業グループの経理担当者だけではなく、経営企画担当者やIR担当者を含む)との共通認識としてのスケジュールが必要です。

具体的には、単体決算担当者向けには「連結パッケージの回収期限」、連結決算担当者向けには「連結精算表の作成期限」、開示担当者向けには「開示書類作成期限」が必要かと思います。なお、上場会社で監査法人による監査がある場合には、「監査法人の往査期間」や「監査法人の審査予定日」なども織り込むと良いかと思います。

④決算前説明会

私たちが連結決算を担当しているクライアントでは、子会社を含む経理担当者向けて「決算前説明会」を実施しているケースも多くあります。

この説明会では、「より正確に連結パッケージを入力してもらう」「より早く連結パッケージを提出してもらう」という目的で実施していまして、具体的には、決算スケジュールの周知、新規に追加した連結パッケージの入力方法の説明、連結パッケージの入力誤りの事例紹介、質疑応答等を行っています。

質疑応答では、「連結パッケージの○○が入力しづらい!」というご意見を頂くこともあり、連結決算の支援をさせていただいている私たちにとっても気付きのある有意義な会だと思っています。

(4) まとめ

上記で説明したとおり、実務においては「決算時に起こるであろう事象を見据えた準備及びその情報共有」「次回決算に向けた過去の振り返りと次回に向けた改善案の整理・合意・実行」といった専門的内容における親子会社間のコミュニケーションやルールの合意・実行が連結決算をスムーズに進めるために重要となります。 

専門家を利用するメリットとしては、準備段階で用意すべき内容を多くの事例から蓄積していること、各種システムの機能について熟知していること、外部専門家からの意見を通じて社内のコンセンサスが取りやすいことがあります。
アクリアでは、多数の連結支援実績があり各社様の組織文化や各種システムに応じて最適なソリューションをクライアントと協議しながら実務運用に結び付けていくことが可能です。
改善案はあるものの社内合意を取り実行するマンパワーが足りないケースが多いかと思いますが、課題を整理して見える化し、社内での協議を経てコンセンサスを得たうえで実際に手を動かしつつ実行面を適正規模でサポートできる点も特徴です。

次回以降は②連結パッケージ入手時の作業、③連結仕訳の入力、④事後検証を説明します。


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