実務において管理部に求められる役割③ファイナンス・事業推進分野(事業開発/戦略投資)
(1) はじめに
株式会社アクリア代表取締役の平石です。
以下は第1回コラムに記載した内容となります。前提として再掲します。
今回は③ファイナンス・事業推進分野(事業開発/戦略投資)について記載します。
(2) ファイナンス・事業推進分野(事業開発/戦略投資)~課題:新事業計画策定/CVC投資/M&Aにつき自社内ではノウハウや経験が足りない、ファイナンスやDD、PMIの支援が必要である~
┃求められる役割の特徴
新事業実行のためのファイナンス戦略(エクイティ/デット)を策定します。前提として事業計画を事業仮説/ビジネスモデル→財務数値→プレゼン資料という順番で策定しますが、
経営戦略、財務経理、投資判断という幅広いノウハウと実務経験が必要となります。
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)投資を通じて、企業内部と外部のリソースを有機的に結合させ意図的に新たな価値を創造します(オープンイノベーション)。
ベンチャー投資のノウハウと実務経験が必要になるとともに、ソーシング能力も自社で備えるのか検討が必要となります。
M&Aを通じて、コア事業の発展につながる戦略的投資を実行します。経営陣の意思決定が必須であるうえに秘匿性も高く期間も一般的には6ヶ月~と長期にわたります。
全てを自社で賄うのは難しい領域であり外部専門家を有効に活用してM&A後を見据えた投資交渉及びPMI業務を遂行する事が重要です。
┃概要
経営戦略を実現するために必要な資金をどの主体からどのようなスキームで調達するか、全社戦略やビジネスモデルに整合するかたちでファイナンス戦略を策定します。
ファイナンス検討資料として事業計画が必要となりますが、
ここで言う事業計画には以下の3つのフェーズを順番に経て作成することが重要です。
第1フェーズ:事業仮説の深掘り及び仮説検証、ビジネスモデルの検証(特に経営資源、販売マーケティング戦略)を実施します。
第2フェーズ:磨き込まれた事業仮説を財務数値に落とし込みます。
ボトムアップアプローチ(ブレークダウンした要素毎に単価×数量等で積み上げる方式)を中心としつつも
中期経営計画としてどのくらいの市場を獲得するのかという意味でトップダウンアプローチ(市場規模×シェアで獲得マーケットを見据える方式)も併用します。第3フェーズ:ファイナンス先に提出するピッチデック(プレゼン資料)を作成します。
第1フェーズは経営戦略分野、第2フェーズは財務経理分野、第3フェーズは投資分野と幅広いノウハウと実務経験が必要となるため、それぞれの検討が甘くなっていないか確認する必要があります。
特にトラックレコードのない新規事業分野においては上流に行くほど重要であり、社外取締役や外部投資家に厳しく見られます。
エクイティファイナンス/デットファイナンスそれぞれに投資家サイドの目線が異なりますので調達先に応じた資料作成や準備も求められます。
また、資金調達は実行後にしっかりとIR活動を実施することで責任を果たすとともにその後のファイナンスを円滑にし、企業価値を高めることに繋がります。
管理会計体制構築とセットでIR活動の仕組みも一気通貫で構築し戦略的なファイナンスを可能にします。
CVC投資の場合には、新事業分野がコア事業を補完・強化する投資となりうるかの検討が投資委員会にて実行されます。
投資戦略に合致したソーシングやDD、プレゼン資料の策定等を投資先との交渉段階から意識して見極める事が重要です。
また魅力あるベンチャーといかに接点を持つかも重要で有り、最新のベンチャー事情やネットワーク構築、税制にも精通する仕組みが求められます。
M&Aはコア事業の発展とシナジーのある新規事業になりうるか(人材獲得含む)といった点が重要となります。
主にコストの削減・イノベーションの促進・余剰経営資源の有効活用がテーマになりますが、M&A戦略を明確にし、手段(M&A実行や予算消化)が目的化しないように常に意識する必要があります。
また、M&AのプロセスはM&Aの検討→初期交渉→DD→クロージング→経営統合と一般的には最低6ヶ月程度は要するとともにターゲット企業の選定、アドバイザリーの活用、ターゲット企業の初期分析、M&Aスキームの検討、基本合意までの交渉、DD、企業価値算定手法の習得、クロージング実務、PMI(統合準備、経営統合)と必要となるスキル・経験が他分野に渡り専門家を活用する必要があります。
また、PMIをしっかりと設計することがM&Aを成功に導く重要な要素として求められます。
と説明しましたが、
③ファイナンス・事業推進分野(事業開発/戦略投資)は中長期の企業戦略に基づいて、未来の事業ドメインを切り拓き、経営陣の掲げる5年後10年後のグループ経営を見据えた投資及び事業推進を実行する部署といえるのではないでしょうか。
投資という側面があるため多くの専門家とチームを組み情報の中心となるとともに、事業推進を担う部署でもあるので、現在の経営資源や事業ドメインを深く理解し、経営陣の将来戦略を見据えられる部署となることが求められます。
(3) 最後に
読者の皆さまの会社において管理部とはどのような位置づけでしょうか?
多くの上場企業において管理部の第一義的な位置づけは、やはり「決算を締める部署=制度会計分野」ではないでしょうか?
管理部は株式市場の発展に伴い、決算開示資料の作成、決算早期化や会計基準の改正に対応するという役割に変化してきました。
そして、環境変化のスピードが速くなった現在では、情報が集まる経理部に「決算を締める部署=制度会計分野」から
「戦略的な管理部=管理会計分野やファイナンス・事業推進分野」
としての役割が企業の発展のために必要となっています。
「戦略的管理部」とは全く新しい管理部ではなく、現状でも管理部のキーマンが行っている業務を組織的に行う管理部です。
すなわち、経営企画、予算管理、企業買収や子会社再編に積極的に関与し、
会計経理知識を基礎としたより付加価値の高い仕事を組織的かつ全社的に遂行できる管理部を「戦略的管理部」と定義しています。
今後、日本における市場は縮小し、新たな価値を生みださなければ市場から締め出されることは明らかです。
市場の進化や経営陣の意思決定により「決算を締める部署」から「戦略的管理部」へと役割が増えている管理部において、外から見ると管理部の仕事と一括りにされる専門分野のカバー領域は相当に広がっており、人材が不足しているのが現状です。
必要に応じてノウハウと実務経験が豊富なコンサルタントを活用しながら近代における管理部の役割をキャッチアップしてキーマンの時間を生み出すことが求められています。
自前主義の精神から管理部のカバー領域が近代急拡大しているにもかかわらず必要な投資や補強が行われず事業部が疲弊したり、人材が定着しないケースも見られます。
自前主義を基本としつつも、キーマンの時間を生み出し次世代の育成をするためにプロフェッショナルファームを活用する、ルーチン業務は一度手を動かすコンサルティングファームに依頼し見える化仕組み化し流動的に人材を動かせる体制を構築する、こういった中期的な取り組みが近代における管理部の役割を全うするには求められているのではないでしょうか。
Vision 意志ある人が輝く社会に
Recruit チームでやればもっとおもしろい
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