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数々の大手証券会社で働き続けた私が伝えたい #6証券営業員の時間の作り方②

本来、証券営業員の業務は意外とシンプルでした。総合証券会社の業務は、1.委託売買業務、2.引受業務、3.募集・売出業務、4.自己売買業務ですが、この内、証券営業員は1.委託売買業務即ち証券ブローカーとして個別株式銘柄や債券、投資信託等の金融商品を販売及び推奨する業務に限定されていて役割も明確でした。

また、お客さまが証券会社に支払う手数料は、一定の手数料率が決められていました。

(日本取引所グループHP)新立会場風景
1985年新立会場が開かれましたが、この頃から株式ブームが始まってきました。

30年前はリアルタイムの株価を見ることは証券会社の店頭の株価ボードを見る方法しかなく(さらにそれ以前は取引所で売買が成立した株価を電話で確認して黒板に手書きしていました(-_-;))更に、「株式を売買する」と言うことはとても大変な事でした。証券営業員はお客さまから受注した売買注文を東京証券取引所に発注して、取引所にいる「場立ち」(写真、新立会場風景にある人だかりの事)が力とスピードで如何に良い価格で取引を成立させるかが問われ、まさに委託売買業務に対する手数料にはこれらの労力が含まれていましたので、手数料の過多をお客さまから問われることは少なく証券営業員も同様の感覚でした。

この委託売買手数料には、各証券会社系列の経済研究所が発行する市場見通しや上場企業のアナリストレポートの提供による情報提供料がサービスとして含まれ、その内容の良し悪しについてもお客さまが証券会社を選ぶ理由となっていました。(このサービスによって「株屋」から、ある程度根拠のある売買をお客さまに説明できる「証券営業員」になったと、自負できる様になったと思います。)

一定の手数料率から、営業員の能力は如何に多くの手数料を上げるかが問われていました。この手数料率はどの証券会社でも同じでしたので、競合他社のお客さまを如何に獲得するかも能力として問われました。

お客さまから見れば、どの証券会社でもどの営業員を通じても同じ手数料ですので、営業員の老若男女や能力差はありませんでした。

見込みのお客さまの会社に飛び込み訪問をして、ドンと100枚入りの名刺ケースを受付に置いて、「これから毎日訪問しますので、この名刺がゼロになったらお取引してください。」などと言った馬鹿げた営業をしたこともあります。(結果は「変わった奴」と言う事で20枚目位で取引をして頂いたと記憶しています)

こんな昭和時代の根性営業をしてましたが、一方でずっと長い間、自分の付加価値はこの手数料の内どれ位の価値があるのかを自問自答していました。

時代が進み更に自問自答が増えました。ネット証券参入による価格破壊とインターネット普及による情報の氾濫です。

             従来の一定の手数料
                 ↓
売買取次業務の手数料  +  証券情報   + 営業員の助言能力
     ↓             ↓          ↓
 ネット証券参入     インターネット普及    ???
 による価格破壊      よる情報の氾濫


従来の一定の手数料が上図のように分解されてしまったことで、営業員の助言能力が問われるようになったと感じました。
前回では、証券営業員の仕事は、それぞれのお客さまに適した金融商品等を推奨・勧誘することとし、付随業務として「無償」の助言を行う仕事であることを説明しましたが、この浮き彫りになった営業員の助言能力については、定義や可視化されてはおらず、証券会社としても営業員の個々の能力に任せている状況が続くことになっています。決して「無償」≠「無価値」ではないと思いたいところです。

証券会社は、この20年間に様々な部署名や部門名を名刺に記載した戦略をとって来ましたが、どれも定着せず現在に至り、結果的にお客さまは「どこの誰に相談したら良いか。」、営業員は「自分は何を強みとしたら良いか。」が判りづらくさせてしまっている事が、営業員の余計な時間となっている気がしています。

次回は、現在これらの事を整理して成功している営業員の事例についてお話したいと思います。

https://www.accordandgo.com/

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