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リンネとその使徒たち

「海岸の長さ」を決めるのは難しいらしい。満潮で測るのか干潮なのかってのもあるが、それより縮尺で長さが変わってしまうのだ。 
原寸に近い(縮尺が小さい)程、複雑な入江の曲線等を計測するから長くなる。大袈裟に言えばミリ単位で測れば長さは大変なことになるね。逆に大縮尺にすれば曲線は単純化され短くなる。 
木を見て森を見ずというが、逆も正解とは限らない、てことを「リンネとその使徒たち」の後書きを読んで思ったのよ。 
作者はこの本の後書きで「かつて縁があってこの世に生まれあわせた有名・無名の人間、そのひとりひとりがいかに懸命に生き、そして死んでいったか」を書きたかったと言う。その契機になる悲話はここには書かない。だが読了後この後書きを見て、改めてこの本の重さを、作者の想いを知った。 

「博物学の時代」「近代科学の幕開け」ー歴史を俯瞰し一括りの意味付けをするのはたやすい。しかし大きな地図には海岸線の隅々までも描き示すことができないように、過去を鳥瞰して全てを解った気持ちになるのならー僕らは入り江の小さな水溜りで遊ぶ色鮮やかなウミウシを見つけることはできないだろう。
神は細部に宿り給うのだから。(2013.2.9)