【SS】命乞いする蜘蛛・錦鯉釣る雲

「どうか命だけは助けてください」
蜘蛛がお釈迦様に命乞いをした。
すでに死んでいるにもかかわらず。

「お前の糸は、血の池で溺れるあの悪人を救うことはできなかったが、もう一度試してみるかい?」
「はは、なんなりと」
「誤って別の地獄に錦鯉として落とされてしまった者がいる。かの者を釣り上げて欲しい」

蜘蛛は地獄に降りた。
そして、雲の上から一本を糸を垂らした。
錦鯉は、お釈迦様の意図を知っていたかのように糸を咥えた。

蜘蛛は一生懸命に糸を引っ張る。
錦鯉は徐々に空に釣り上げられていく。
そこはたまたま滝の近くであった。

錦鯉の魂が地球の引力から解き放たれたとき、錦鯉は本当の姿に変身した。
それは、龍の姿であった。

龍は蜘蛛のいる雲を突き抜けて、蜘蛛をお釈迦様のところまで運んだ。

地獄の住人達は、錦鯉が滝を登り、龍の姿になって空に上がっていく姿を目撃した。
それが、鯉のぼりの伝説である。

ところで、地獄はどこかだって?
それは、書くまでもないだろう。

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