【SS】強すぎる数え歌

宇宙歴37564年、宇宙に上がった人類は戦争を続けていた。

多くの戦闘艇を搭載した宇宙空母は、一隻で航行する。これは、強力になりすぎたミサイルが、たった一発で艦隊を全滅させてしまうためである。

ミサイルは条約で禁止されているため、敵の宇宙空母に遭遇すると、機銃のみを備えた戦闘艇によるドッグファイトが繰り広げられる。

パイロットの間では、生存確認を兼ねて撃墜数を歌に乗せる文化が生まれた。一つ、二つ、と自らの個性を乗せた数え歌が無線で飛び交う。死に瀕しても、どこか喜劇的な雰囲気すらある。

戦闘が始まると、たくさんの小さな閃光が走る。時間とともにその数は減っていき、最後に二つの大きな閃光がほとばしり戦闘が終わりを告げる。

宇宙空母の両艦長は、人知れず強すぎる数え歌を口ずさんでいる。ただし、パイロットと異なりカウントダウン方式で。数えているのは、味方の戦闘艇の数である。0になったそのとき、条約を破ってミサイルを発射するために。

お読み頂いありがとうございます。記事が役に立てばうれしいです。このエリアまで読んで頂いた方が、これまでもこれからも幸せでありますように。