目蓋の淵のものもらい

気が付いたら、片目の目蓋が腫れていた。
腫れは、日に日にひどくなり、視野が狭く感じるほどに。

近所の眼科に駆け込んで、色々調べてもらったら、
目蓋の淵に炎症があって、いわゆる「ものもらい」だという。

12月の中旬、暇さえあれば両目に涙がたまり、
ハンカチやティッシュで拭き取ったり、手で拭っていたので、
目蓋の淵に傷がついてしまったのかもしれない。

一日三回、処方された目薬を点眼し、軟膏を塗りこんでいると、
何度か膿のようなものが出て、徐々に腫れも引いていった。
年末年始の出来事である。


年が明けてもうすぐ一週間が経つ。
ものもらいであったことも忘れかけてきたけど、
鏡を見ると、治っていないところがある。

片目だけ、ものもらいがあった側の目だけ、ぱっちり二重になっている。
よく見ると、炎症の後もはっきりと見え、
完全に元通りになっているわけではなさそうだ。

そういえば、眼科の先生は、切開が必要なこともあると言っていた。
もしかすると、切開すれば元通りになるのかもしれない。


それでも僕は、そのままでいようと思った。
目蓋の淵に腫れた痕、
片目だけぱっちり二重。

年末年始にものもらいを患ったことは、すぐに忘れてしまうだろう。
同じように、12月の中旬に目を擦ってしまったこともきっと忘れてしまう。
だけど鏡を見るたびに、目を擦った痕、さんざん泣いた形跡が見えれば、
その度に泣いた理由を思い出せるだろう。

この年末にあった出来事を、僕はきっと忘れない。



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