【SS】プールの紅トーナメント

今年もプールの紅トーナメントが開催された。
恐いもの知らずの参加者と、恐いもの見たさの観客が飛び込み台のあるプールに集まっている。

参加者は、一人ずつプールに飛び込む。
大抵の場合、バチーン!とか、ビターン!というひどい音が聞こえてくる。
観客は、その音が聞こえるたびに眉間にしわを寄せたり、手で顔を覆ったりしている。

最初の対決の結果が出たようだ。
プールからあがった参加者の背中をデジタルカメラで撮影し、RGBのうち赤の成分の最大値を算出する。
そして、その値の大きかった方が勝ち残る。

勝ち抜いた参加者の背中は、ますます赤みを増していく。
中には、もう飛び込めないと棄権する者も後を絶たなかった。

優勝者の背中は、紅を塗ったように赤かった。
腫れているのが遠目からでもわかるほどだ。
もはや内出血といってもいいだろう。

表彰式では、金一封とスポンサー企業が販売しているヒルドイドという薬が授与された。
ヒルドイドは、腫れや痛みを治す薬である。

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