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『わたしの見ている世界が全て』ほぼ弛緩しない82分。弛緩した瞬間訪れるゆるい幸せ、またはその予感

遥風は価値観の合わない家族の元を離れベンチャー企業で活躍していたが、目標達成のためには手段を問わない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれてしまう。自ら事業を立ち上げて見返そうとする遥風だったが、資金の工面に苦戦する。そんな折、母の訃報を受けて実家に戻った彼女は、実家を売却して現金化することを家族に提案。姉は興味を持たず兄と弟は猛反対するが、遥風は彼らを実家から追い出すべく「家族自立化計画」に乗り出す。

映画.comより

 私とそれぞれ異なる人間の四兄弟だが、こんなにも自分の写し鏡になるのか、と正直戸惑いながら観ていた。少しずつ自分の立場や性格、歴史と近い点があって、正直観ていて苦しいときもあった。だが、この映画は安息を用意しない。弛緩しない時間がずっと続く。そこにゆらりと訪れる小さな幸せに笑い声が出る。ただ本当にそれが幸せだったのだろうか?でも、それを幸せと呼んで、私は人生を生きている。
 宇野維正さんが絶賛していたため、本作を観たため、彼には感謝したい。ただそんな事実を忘れてしまうほど自分の映画だった。森田想の怪演含め、役者たち一人一人が素晴らしかった。左近圭太郎の長編2作目にして、屹立した傑作。蝉の鳴き声がうるさいベッドルームでテレビに張り付いて観ていた。

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