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『ディア・ハンター』瞬時に入れ変わる、青春の輝きと戦争の醜さ

 冒頭一時間の青春を謳歌する主人公たちの描写が何より素晴らしい。特にウォーケンの色気と躍動が美しい。そこから一つのカットのみで入れ替わる、ベトナムの悪夢。この編集は唐突過ぎるだろうと思っていたが、その落差は観る者には衝撃的で、落下させられる。
 戦地に行って以降は、デ・ニーロの精神の強さ、友情に胸を打たれる。何としてでも友達をアメリカへ連れて帰りたい、という強き思い。
 ストリープ演じるリンダとの綺麗な三角関係としても、観れる。マイケルとニックは同じ写真を持って、ずっとリンダを想っていた。
 マイヤーズの曲は、あまりに感動的で、ここが泣きのシーン、といった使われ方は、ちょっと抵抗があったが、結局泣かされてしまうのだ。
 これだけ戦争の醜さを描いているのに、ベトナム戦争賛美映画というような愚かな評があったようだが、ラストの“God Save America"の合唱は、この地に生きる最愛の仲間との癒し合う行為である。そのような捉え方を筆者が主張するのは、この映画を愛しているからであり、そんな評価は悔しいのでここで言いたい。
 数十年ぶりに観たが、癒しとアジテートになった。ありがとう、クリストファー、ロバート。

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