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『複製された男』いかがわしい恐怖

 ある大学講師が、映画の中に自分と瓜二つの男を見つける。その俳優の名を突き止めて対面すると、2人は外見だけでなくあらゆる点で合致していた。彼らは、各々のパートナーも巻き込み奇妙な運命と対峙していく。
 驚愕のラストだったが、このラストの正解に興味を向けず、複数のストーリーを思い浮かべながら、不穏な気分でいるのが心地良い。
 ラストだけでなく、途中の行方も素晴らしく、ジェイク・ギレンホールの一人二役での境界線をあえて設けない好演でじりじりと映画は進む。
 若きドゥニ・ヴィルヌーヴは都会を遠景でセピア色気味に恐ろしく映したかと思えば、女優2人に透明感を持たせ、とても美しく描いている。最後まで観ると口があんぐり開く好演出である。
 映画を観終わると、雨は止み心地良い風が、網戸から吹いてくる。電話すると、子どもたちは元気に遊んでいる。いくら映画の世界は悲惨でも、私の世界は穏やかに幸せだ。そんな極端な休日があってもいいじゃないか。

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