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『気狂いピエロ』刹那はどうあっても停滞を生んでしまうのか?

 恋人との再会は罪ありき逃避行へ。原色から自然色に変わるとともに、刹那は段々と停滞へ形を変えていく。このカップルに自分を重ねるなど、高校生の自分は頭がいかれていた。っていうか、破滅的な生き方に憧れるガキだったのだろう。
 ただこの映画は思想映画とは最も遠いところにあるのでは?ゴダールは詩的な台詞と奇跡的なカメラでもって、破滅へと向かう最美の表層を描きたかったのではないかと、私は推察する。そして、それは成功している。時折挿入される、適当なシーンも奏功している。
 また、劇伴もミステリアスで、映像をブーストさせる。ベルモンドとカリーナは表情で人格を体現し、彼らに今でも私はみとれる。
 原色に再びシーンが切り替わり、あっけなく幕は下りる。それは永遠などではなかった。

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