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『サムライ』犯罪映画史上最高の脚本とアラン・ドロン

 孤独な殺し屋ジェフは、仕事を終え立ち去る際ピアニストのヴァレリーに顔を見られてしまった。しかし警察の尋問を受けた彼女は、何故か犯人はジェフではないと断言する。警察と裏社会双方から追われることになったジェフは、己の美学を貫き通す道を選ぶのだった。
 有名な巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルの演出を過大に期待して観たが、少し期待外れだった。アラン・ドロンの移動の映画なのだが、マイケル・マンと比べると、彼を撮るカメラが風景や乗り物をマンほど活かせていない。というか、マイケル・マンってとんでもない監督なんだな、という確認でもあった。
 だが、物語が進むにつれてどんどん引き込まれる脚本がすさまじく面白い。メルヴィルは偉大な脚本家でもあるのだ。一人でテレビを観ながら、話し出すくらい、すごい展開。
 そして、小鳥がストーリーの大切な部分を担っており、小鳥の行方もめっちゃ気になるのだ。小鳥が映画に与える貢献度からして、最優秀動物演技賞である。
 また、アラン・ドロンは『太陽がいっぱい』や『冒険者たち』ほどまでは、演技が最大限には光っていないが、その美貌とカリスマ性が、警察の疑いの目のリアルさに大きく響いており、ストーリー全体をとても魅力的にしている。
 いやぁすごい映画を生きた。間違いなく歴史に名を残した映画であり、メルヴィルの他作に興味が沸いてやまない、濃密な時間だった。

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